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スト2とサカモトとダウンタウンと TKブームとは何だったのか

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CDを買うための情報が求められていた時代


ここで、「恋しさと せつなさと 心強さと」が発売される94年7月の音楽雑誌の表紙をご覧いただこう。「7月号」なので発売は6月下旬から7月頭。話題としては5月~6月の音楽シーンと7月発売のシングル・アルバムの情報が中心になっている。


前述の「CDでーた」は表紙がリンドバーグで、裏表紙が「キューン・ソニーです。」のコピーとともに聖飢魔Ⅱ・デーモン閣下とモダンチョキチョキズの濱田マリ。キューンとは「大胆な、勇敢な」というドイツ語の形容詞に由来している。まさにその名の通りの裏表紙だ。



「月刊カドカワ」と「ROCKIN'ON JAPAN」の表紙はオリジナル・ラヴ。「JAPAN」には、コンサートツアーを終えた小沢健二のインタビューが載っていて、ニューアルバムについても少し話しているが、これが90年代の名盤「LIFE」。8月31日に発売された。「今夜はブギー・バック」で世間の注目を集めつつあった小沢だが、まだ一部の音楽ファンにのみ熱烈に支持されている段階で、広く知られるようになったのは「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」でそのキャラクターを知られるようになってからだ。


「季刊渋谷陽一」という文言が添えられた「BRIDGE」では、浜田省吾が表紙。そして「坂本龍一/忌野清志郎/佐野元春/デーモン小暮」の文字が並ぶ。80年代の若者たちを熱狂させたミュージシャンたちが、今、何を思い新作に取り組んでいるのか、事細かに載っている。


歌詞とギターコードが載っていて、弾き語りができる雑誌、いわゆる「歌本」の代表「月刊歌謡曲」の表紙はaccess。この年のはじめ「上・京・物・語」で注目を集めたシャ乱Qが、その次のシングルで取り上げられている。「シングルベッド」でブレイクするのはこの年の10月だ。


布袋寅泰が表紙の「パチ・パチ・ロックンロール」には黒夢、L'Arc-en-Ciel 、The Yellow Monkey、JUDY AND MARYなど、のちに大ヒット曲を連発させるバンドの名が連なっている。



そして、84年創刊(2013年休刊)の「PATiPATi」、88年創刊(2014年休刊)の「WHAT’S IN?」の表紙は福山雅治。「PATiPATi」にはTMNのプロジェクトが終了した東京ドーム2DAYSのリポート、「WHAT’S IN?」にはTMN最終総括インタビューとともに「小室哲哉のスーパープロデュース論」が載っている。さらにTMNが表紙の「GB」。94年7月はまさに「TMNの小室哲哉」のイメージから「プロデューサー小室哲哉」に代わっていく境目だ。


94年10月31日放送の「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」の中で小室は自身のプロデュースについて「trfと篠原涼子で手一杯」と話していた。しかし、1年後の95年10月9日付けのオリコン週間シングルチャートでglobeのセカンドシングル「Joy to the love(globe)」が1位を獲得、10月11日には華原朋美がセカンドシングル「I BELIEVE」を発売。さらに10月25日には、安室奈美恵の「Body Feels EXIT」が発売されている。これは安室にとって初の小室プロデュース作品だ。

また、同じ日にtrfの11枚目のシングル「BRAND NEW TOMORROW」が発売されている。「2組で手一杯」と言っていたちょうど1年後、4組のシングルを手掛けている。たった1年で大きく景色は変わった。大ヒット曲を生み出した「作詞家」「作曲家」「編曲家」はどの時代にも存在するが、小室はこれらミリオンセラー作品の「作詞・作曲・編曲」すべてを手掛けていた。また、積極的にメディアに出演した。H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント」を発売した翌月、95年4月にはフジテレビで、自らが司会をつとめる「TK MUSIC CLAMP」というトーク番組を始めている。

私は、この一連のヒット曲をリアルタイム(発売日近辺)で買っていない。しかし、TKプロデュース作品の代表作はフルで歌えるし、その魅力をいつでも語ることができる。今は「月に定額を払えば聴き放題」のサブスクリプションが流行っているが、ブーム時の小室作品は言ってみれば「テレビ・ラジオをつければ聴き放題」の「サブスクのようなもの」だった。

90年代に入り「歌番組」は少なくなったが、93年4月にはじまった「COUNT DOWN TV」で、オリコンをもとにした「ランキング番組」が人気を集めたこともTKブームを上昇気流にのせたひとつだろう。前述の通り、人々はCDを買うための情報をテレビに求めていた。ファンの熱烈な投票・リクエストを除き「売れているもの」をわかりやすく提示してくれる「COUNT DOWN TV」から「カラオケで歌いたい曲」を見つけだした。その結果、カラオケで「友人の声」で何度も聴いた曲として、小室作品が耳に残る。「テレビ・ラジオをつければ聴き放題」であり「カラオケに行けば聴き放題」でもあったのだ。

今回は「TKブーム前夜」の94年7月を軸に、95年のTKブームについても少し書いたが、本当の意味でTKファミリーが全軍躍動し、タイアップ・CM・ファッションなど「あらゆる場所にTKが...」となったのは「1996年」だ。「Route 246」を新鮮に感じた世代に「TKブーム」を伝えるには、96年を避けて通れない。曲で言うならば今回の記事はまだ、イントロに過ぎない。

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