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去った男の残したものは - 鈴木耕

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安倍晋三首相、辞任

 安倍晋三首相が、8月28日(金)、ついに辞任を表明した。体調悪化が原因であることを疑うつもりはない。しかし……。

 安倍氏は6月には綿密な健康チェック(人間ドック)を受けていた。記者会見でも、はっきりと「6月の検査で持病再発の兆候が見られると告げられた」と述べていた。そして、8月に入ってから2度にわたって再検査のため慶応病院へ行っている。もはや公務を続けるのは無理と、その時点で判断していたのだと思う。

 ならば、なぜもっと早く辞任表明してラクにならなかったのか?

 麻生太郎氏は例によって口をひん曲げながら、記者に対して「あんたは147日連続で働いたことがある? ないだろ。安倍総理はそれをやってたんだから疲れるのは当然だろう」と記者に対し恫喝的に述べていた。だが実際には、安倍首相は土日には休んでいたし、平日でも午前中は私邸にいて、午後に1~2時間ほど官邸に“出勤”という日が続いていたことは、新聞の「首相動静」を見れば明らかだった。

 それが悪いというのではない。しかし、それほど病状に変調をきたしていたのなら、なぜ8月28日まで辞任発表を遅らせていたのか。

 “首相在任記録”がキーワードだったとぼくは思うのだ。安倍首相は8月24日に連続在職2,799日に達し、第1位だった大叔父の佐藤栄作氏の2,798日を抜いて、ついに歴代第1位の座を獲得した。安倍氏はこれを達成するのが夢だった。石(医師?)にかじりついても夢の実現を果たしたかったのだ。

 望みが叶ったからこそ、その週末の金曜日に、ついに辞任に踏み切ったのではないか。それは、ゲスの勘繰りではないだろう。人はそれぞれ、自分なりの目標を持つ。安倍氏は、目標達成を待って身を処したのだ。

 ではなぜ、それが安倍氏の「目標」だったのか?

 安倍氏には、なんら後世に誇れるような政治的レガシー(遺産、業績)がなかったからなのだ。安倍氏が生涯を賭けた目標だと言い続けた「改憲」だって、結局は成し遂げられなかった。「安保法制でなし崩し的な改憲はできた」という言う人もいるけれど、安倍支持のコアな右派層からさえ「それでは足りない。明文化した改憲を」と突き上げられていた。靖国参拝にしたって、玉串奉納でうやむやに終わらせてきた。

 「戦後レジームからの脱却」を謳った安倍氏だったが、いずれも中途半端なままで投げ出さざるを得なかった。そんな安倍氏にとっての最後のレガシーは「首相在任期間歴代第1位」という数字だけだったのだ。

去った男の残したものは……

 谷川俊太郎さんに『死んだ男の残したものは』という詩がある。武満徹さんが曲をつけて小室等さん他が歌っている名曲である。ぼくの大好きな歌のひとつだ。

 そのひそみに倣っていえば、「去った男が残したものは」いったい何だったろうか。それを考えてみた。

 ぼくは毎日、新聞や週刊誌、検索のプリントアウトなどから、重要だと思われるものを切り抜いてファイルしている。「3.11」以降に始めた習慣だ。

 そのファイルをめくって目についた「安倍首相の“業績”」をピックアップし、書き出してFBに上げてみた。けっこうな数の方たちが「いいね」を押してくれていた。これらを“素晴らしい成果”だと称賛する人たちもいるだろうけれど、人間、見方や考え方はいろいろある。

 アトランダムな抜粋だから、時期が前後するけれど、参考までに見てほしい。FBに上げたものを、多少手直しした。

 最初は「安倍政権7年8カ月の功罪」とのタイトルにしていたが、考えてみると、ぼくにとっては「罪」ばっかりで「功」はちっとも浮かばない。だから「安倍政権7年8カ月の罪と罰」とタイトルを変更した。

 そんなタイトルはお前が偏っているからだ、と言われるかもしれないが、それは仕方ない。甘んじて受ける。

 でもね、これも実はスッキリしないのだ。だって「罪」はいくらでも出てくるが、結局、ぼくらは安倍氏にはなんの「罰」も課すことはできなかったのだもの。それが残念だが、これからきちんと検証して、見合った罰を与えたいものだ。

 安倍氏は何か批判されると、必ず枕詞のように「責任は痛感しております」と言い続けた。だが痛感はしたかもしれないが、具体的に「責任を取った」姿など見たこともない。首相の座を降りるのだから、この際、きっちりと「責任」は取ってもらおうじゃないか。だから「罰」はタイトルに残しておくことにする。

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