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EUで高まる中国への警戒 日本への影響は?

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米国が中国に対する強硬姿勢を強めている。今年11月の米大統領選を目前に、ドナルド・トランプ大統領は対中強硬路線を選挙キャンペーンの柱としていることが大きな理由だ。

一方、欧州でもEU(欧州連合)域内で高まる中国の影響力や、新型コロナ危機でみられた同国の一連の対応を受け、中国への警戒心が高まっている。欧州は今後、対中戦略をどのように展開するのか。また、今後の中国・EU関係は、日本にどのような影響を及ぼすのか。欧州で東アジア政治を研究する識者に、話を伺った。



欧州にとって脅威となった中国

中国にとって、EUは最大の貿易相手だ。一方のEUにおいても、中国は米国に次ぐ第二の貿易相手国である。例えばドイツとフランスの輸出をみると、欧州の国々を除くと、中国は米国に次ぐ第二の輸出先だ。さらに、中国の国有企業や民間企業はこれまでも、欧州諸国への投資も活発に行ってきた。

中国の投資の影響は、どれほど欧州にとって大きいのか。キングス・カレッジ・ロンドンで教鞭を執るラモン・パチェコ・パルド博士は、中国の欧州への投資の現状についてこう述べる。

「代表的な例は、2016年の中国家電大手の美的集団による、ドイツの産業用ロボット世界大手クーカの買収などです。南欧や中東欧へのインフラへの投資(筆者注)や、欧州のバイオテクノロジー企業などへの投資も挙げられます」

筆者注:例えば、中国海運大手の中国遠洋運輸は16年、ギリシャ最大の港、ピラウス港の株式の51%を取得している。

ラモン・パチェコ・パルド博士=本人提供

一方、中国の対EU投資が招きうる、中国の影響力拡大や、技術流出のリスクなどに対し、EUは警戒感を増している。さらに欧州企業の中国市場への投資がその逆よりも難しいことも、EUのスタンスを強める原因となった。これらを踏まえ、ドイツは外国企業による買収の審査基準を厳しくし、EUレベルでも投資規制を強化する新提案が今年6月に発表された。

「中国はEUや日本から反感を買うことができない」

では、今後中国・EU関係はどのような方向に進んでいくのだろうか。パチェコ・パルド博士はこう述べる。

「中国はすでに欧州、日本、その他の発展国との緊張を緩和しようとしています。中国は、IT、AI、バイオテクノロジーなどの分野の製品を輸出することに課題があり、欧州、日本などの発展国を理想の市場としています。そのため、これらの国々から反感を買うことができません。この点が、中国が高まる緊張から出口を探そうとしている理由だと思います」

一方で、EUは今後、中国にどのようなスタンスを取るのだろうか。

「19年には、欧州委員会は中国を“体制的ライバル”と位置づけています。EUは共通の関心がある限り中国と連携します。その一方で、必要な時には競合相手ともみなすでしょう。連携分野としては、気候変動や未来のパンデミックの予防など。競合分野は、市場へのアクセス、人権、民主主義の促進などです。こうした分野においては、EUは今後、さらに中国に対し断固とした態度を取るでしょう」

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こうした中国・EU関係は、日本に何らかの影響を及ぼすのだろうか――。フランスの主要シンクタンク、仏国際関係研究所(IFRI)の研究員で、日本政治・防衛を専門とするセリーヌ・パジョン氏にお話を伺った。

セリーヌ・パジョン氏

セリーヌ・パジョン:仏国際関係研究所(IFRI)で研究員、キヤノングローバル戦略研究所で国際研究員を務める。主な研究テーマは日本の外交政策、防衛、インド太平洋の戦略地政学など。スイス、国際・開発研究大学院で修士を取得後、大阪大学で研究生として研究活動に励む。

――中国・EU間の緊張は、日本・EU間関係に影響をもたらしますか。

「中国・EU関係」において、新型コロナ危機は決定的な出来事となりました。EU、そして各加盟国の国内においても多様な視点が共存しています。しかし、中国が非常時に医療支援を通じて地政学的影響力を高めようとした「マスク外交」や、好戦的な「戦狼外交」は、EUの中国に対するスタンスを、多かれ少なかれ強硬にしました。例えば、これを受け、今年5月、EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は、「中国に対し、より強固な戦略が必要だ。そして、それには他の民主主義のアジアの国々とのより良い関係の構築が不可欠だ」と言及しました。

こうした点を踏まえると、日・EU関係は、さらに勢いを増して発展するでしょう。二者間の関係は近年、様々な枠組み(18年に結んだ、政治的な関係を強化する「日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)」や「日EU経済連携協定(EPA)」、2019年に両首脳が署名した「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」)の結果として、関係は深化し、非常に良好な方向性にありました。

新型コロナ危機と、現在の緊迫したEUと中国関係により、EUと日本が共有する“価値観や関心、優先事項”が顕在化しました。それは、米中関係が悪化する中での、ルールに基づく国際社会の秩序の支持、多国間主義の再生、世界規模での共通善の実現への貢献、データ・ガバナンスの枠組みに取り組む重要性、偽ニュース拡散などのハイブリッド脅威に緊急に取り組む必要性です。

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