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「総理大臣と健康」―メディアの役割―

安倍内閣総理大臣が健康を理由に7年8カ月の長期政権にピリオドを打たれることになった。地球儀俯瞰外交を提唱して世界を飛び廻り、アベノミクスは勿論のこと、何度も災害被災地を激励に訪れ、まさに寝食を忘れての活動であった。

ハンセン病制圧などのため一年の4割近くを海外活動に当ててきた体験からも、旅先で耳にする安倍政権に対する信頼感はすこぶる高かった。それ以前は外交官や一部専門家を除くと、毎年のごとく変わる日本の総理大臣の名前を知る人はほとんどいなかった。

トランプ、マクロン、メルケル、その他各国の首脳との語り継がれる説話も数多く、内政はともかく、外交での実績は高く評価されていた。グロ−バリゼーションの時代、日本あっての世界ではなく、世界あっての日本にどう対処するか、安倍総理の功績は歴代総理の中でも突出した評価を受けていた。

それを思うと、日頃、国民の人権・人道問題に敏感な国内メディアの安倍総理辞意表明に対する報道は、誠に空虚な感じが否めない。

かつて鈴木善幸総理は毎週末、リフレッシュのため習志野カントリーでゴルフをされたが、メディアの批判は余りなかったように思う。小渕恵三総理が亡くなった折には総理の健康管理についてメディアも問題にしたが、次の森喜朗総理は神奈川県でゴルフプレー中、ハワイで訓練中の宇和島水産高校の練習船がアメリカ海軍の原子力潜水艦浮上に伴い大事故に遭遇。16番ホールからクラブハウスに戻る道筋だったため少しプレーを続けたところ、強いパッシング報道に見舞われた。

一国の総理として、大事を成し遂げる人に肉体的は勿論、精神的健康が大切なことは言うまでもない。二年前、安倍総理が夏休みを含めて「1年間に12回もゴルフをした」と報じた新聞もあった。

身心ともにベストコンディションを維持することは、国家の最高責任者の当然の義務でもある。しかし、日本のメディアは何故かそれを許さない。聞くところによると、トランプ大統領は年間50回〜100回はプレーされているようだが、誰からも批判を受けることはなく、議会への出席も一回だけである。

安倍総理は今年、150日以上も好きなゴルフも夏休みもなく過ごされた。海外での強行日程の翌日に予算委員会で6時間以上拘束されることもあった。各国の総理の中で、国会で拘束される時間は日本が圧倒的に長い。民主党政権時代、国会開催中の総理や大臣の海外活動を活発化させようと副大臣制を設けたが、今や大臣の国会開催中の海外活動は原則禁止である。

何かと言うと「出席不可は国会軽視である」と非難し、よほど大切な質問かとテレビで見ていると、週刊誌ネタを基にした自己アピール、選挙活動に利用するだけの話で、答弁に立つ総理や大臣に対する尊敬の態度は微塵も見られない。

大事の前の省事である。通信機能は勿論のこと、何処にいようと総理の指示は迅速かつ的確に出せる。総理自ら官邸内にいなければ仕事が出来ないような風潮は、今回を限りに是非、是正してもらいたい。

かつて、日露戦争に向かって緊迫していた頃、政府の要人の一人は、芸者置屋の物干し台の上で夜空を見上げながら酒を飲んで沈思黙考したという。ロッキード事件で田中角栄元首相の失脚後、「椎名裁定」を行った椎名悦三郎氏は「省事」を座右の銘にされていたという。

一国の最高指導者の休暇は、大事の前に余分なことをしない「省事」として、国民も寛容の心を持つべきであろう。勿論、メディアとりわけ新聞には、そうした矜持を持ってもらいたく思う。

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