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松任谷由実に「早く死んだ方がいい」と中傷投稿 大学専任講師が削除し謝罪

8月30日、朝日新聞社の言論サイト「論座」で「【1】安倍政権の7年余りとは、日本史上の汚点である」と題し、安倍政権を激しく批判する記事が公開された。この記事はSNS上でも話題となり、Twitterでは一時「日本史上の汚点」がトレンドに上がった。

一方で、記事の筆者である京都精華大学専任講師の白井聡氏が29日に自身のFacebookに投稿した内容が物議を醸した。白井氏は9月1日に当該投稿を削除し、新たな投稿で謝罪している(批判を浴びた内容は本来紹介することも憚られる内容だが、本文の都合上以下に引用した)。

BLOGOS編集部

白井氏は、歌手の松任谷由実が自身のラジオ番組で、安倍首相辞任会見を受けて「泣いちゃった」「辞任されたから言えるけど、ご夫妻は仲良しです」と語ったことを紹介する記事を引用する形で、以下のように綴った。

荒井由実のまま夭折すべきだったね。本当に、醜態をさらすより、早く死んだほうがいいと思いますよ。ご本人の名誉のために。

Twitterでは多くが白井氏の投稿を問題視しているが、この投稿のコメント欄では「ユーミンのイメージが崩壊した」「体制側ですね」などと賛同するものも多くみられた。

白井氏は謝罪の投稿で、「荒井由実時代の音楽」は好きだとしたうえで、だからこそがっかりしたとして「つい乱暴なことを口走ってしまいました。反省いたします」と説明している。

繰り返されるインターネット上の誹謗中傷問題

誹謗中傷を含むインターネット上の人権侵害は、「表現の自由」に関わる問題として長きにわたり議論されてきた。被害者の人権を保護する必要がある一方、行き過ぎた規制は表現の自由の侵害や委縮効果を生むこととなりかねない。

2020年に入ってからは、中傷が原因とみられるテラスハウス出演者・木村花さんの急死事件などインターネット上の誹謗中傷が社会問題化していた。自民党内でも厳罰化を進める動きがみられ、岸田政調会長は6月に自身のTwitterで「木村花さんの痛ましい事案や、新型コロナ対策の中における医療関係者への誹謗中傷など、あってはならない事態に心を痛めています」と具体的な事案に触れ、速やかに議論を進める考えを示している。

インターネット上で誹謗中傷を繰り返す人によく見られるのは、「表現の自由」や「言論の自由」を根拠に、発言するのは自由だとする主張だ。確かに表現・言論の自由は最大限に尊重されるべきで、その制限は慎重であるべきだ。

しかし基本的人権は相互に矛盾や衝突が生じうるもので、それを調整する「公共の福祉」という考え方はすべての人権に「論理必然的に内在」するといわれている。つまり他者の人権を傷つける恐れのある場合は、自由も制約されうるということだ。

過去に無関係の殺人事件の実行犯であるとネット上でデマを書かれ、裁判で争った経験をもつお笑いタレントのスマイリーキクチさんはSNSやメディアで、「誹謗中傷と表現の自由は別物」「表現の責任を明確にしないと」などと発信を続けている。しかし現状については、「ネットのデマや中傷、自分の身に降りかかるかもしれません。加害者は“表現の自由”で守られる」ともどかしい思いを投稿している。

「完全なヘイトスピーチ」著名人らも批判

写真AC

冒頭のFacebook投稿をめぐっては、Twitter上で著名人からも批判の声が上がった。

元大阪市長の橋下徹氏は、「大学は、さすがにこんな教授を雇い続けるのはまずいだろ」と投稿。日本維新の会の音喜多駿参院議員は「特定個人に名指しで『死んだ方がいい』と書き込むとは、完全なヘイトスピーチ」とし、驚きを禁じ得ないと綴っている。

被害者や犠牲者が出るたびに対策に向けた機運が高まるが、有効な対策が打たれないまま繰り返され続けてきた誹謗中傷問題。まもなく新たに誕生する新総理のもとで、現在の大きなトピックのひとつとして改革を進めてほしい。

Facebook投稿には、“ユーミン”の代表曲のひとつ「ノーサイド」を引用して「ユーミン、もうノーサイドですね、残念、」と揶揄するようなコメントがついていた。
ノーサイドは、ラグビーの“試合終了”の意味で使われる言葉だが、もともとは「試合が終われば両軍の“サイド”がなくなってみんな仲間」だという精神を意味する。インターネット上の議論も、昨年のラグビーワールドカップで魅せられたように、たとえ意見の異なる相手に対しても敬意を払い、品位を保ち、規律を守ったものになる日はくるだろうか。

【追記】京都精華大学が「本学教員のフェイスブック上の発言について」とする声明を発表した。

このたび、本学教員によるフェイスブック上での不適切な発言がありました。
「人間尊重」「自由自治」を理念に掲げ、ダイバーシティの推進により多様性を大切にする本学では、個人の主義主張、思想、信条の表現や発言に寛容でありますが、今回の発言は、人間の命を軽んじた内容であり、人間尊重の立場をとるべき本学教職員として不適切な行為であったため、厳重な注意を行いました。
本件におきまして、不快な思いをされた方々、ご心配をおかけした方々に、深くお詫び申し上げます。

理事長 石田 涼

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