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コロナが招く相互不信

松本清張の名作の一つ、「砂の器」は映画やドラマでご覧になった方も多いでしょう。特にドラマは7度もリメークされているのですが、近年の同作品は原作とはある部分が違います。村を追われた父子が山中をさまよったその理由です。最近の作品では父親が放火殺人犯に仕立てられていますが原作ではハンセン病で村にいられなくなったことに起因しています。

ハンセン病はらい菌が皮膚や神経を侵す感染症です。「感染経路はまだはっきりとはわかっておらず、治療を受けていない患者との頻繁な接触により、鼻や口からの飛沫を介し感染するものと考えられています」(日本財団ホームページ)でありますが、感染力が弱く、現代では完治する病気です。

ただ、治療法が確立される前はハンセン病がひどく人々に忌み嫌われ、また皮膚などにその症状が出ることから噂が噂を呼ぶという悲劇が世界の歴史の中で繰り返されてきました。日本でも長くそれは伝えられており、松本清張の原作はハンセン病から村八分にされるという閉鎖社会における人間行動を鋭く突いた作品なのであります。

現代のコロナをハンセン病と比べることはタブーかもしれません。しかし、日本では感染者が特定され、その人が差別を受け、場合によってはひどい仕打ちでそこに住めず、一家で引っ越したという話もあるようです。これでは現代版「砂の器」そのものではないでしょうか?

ワクチンがまだない今、感染するかもしれないという受け止め方は全ての人が見事に違い、それが判明した時、あまりにも厳しい仕打ちと社会的隔離が待っているといってよいでしょう。

最近参加した会議でのやり取りなどからは必ずしも自分への感染リスクだけではなく、自らが感染を招く原因になるかもしれないことによるクレームリスクに異様に敏感になっているようです。特に企業関係者は極めてセンシティブになっています。人によっては動かないことが美徳というスタンスすら感じます。

会社の事務所のエレベーターは乗る際、規定では2人までOKなのですが、ほとんどのケースが1人ずつ乗る現状から一応、その順番待ちをして乗っています。ただし、私の順番で次の人に「ライドシェア」する気があるなら「どうぞ」と迎え入れています。正直、寛容性のある人と頑なで拒絶型の人はかなり明白に分かれており、どういう人がどういう傾向かという判断がつきにくい状態です。感覚的には半々ぐらいではないかと思います。

東日本大震災の際の東電原発の放射能問題についてもその問題が落ち着くのに何年かかかりました。関西や九州方面のみならず、海外にまで引っ越した方もいらっしゃいます。私もそのような方々と接したのですが、それらの方の話しぶりが「believer(信者)」そのものでありました。

ヒトは恐れを感じ、それに対する防御心という生まれ持ったものを備えていますが、その強さは千差万別です。感性の強い人にとっては何処まで逃げ続けても満足せず、一定の落ち着きを取り戻すには非常に時間がかかるのであります。

バンクーバーの公共交通機関はつい先日まではマスクについて強要されていませんでした。カナダの他都市ではバス電車に乗る際、マスクは強制であったことから強い批判があり、9月から人の動きが変わる可能性もあることを踏まえ、8月24日からマスクが強制となりました。その初日、私はバスに乗ったのですが、3割ぐらいの人はマスクなしです。バスも多分、運転手の判断に任せられている感もあり、乗車拒否しません。

ショッピングモールの店舗ではマスクを強要しているところも多く、入り口では店員が試着や歩くルートについて細かく指示している店もあるのですが、マスク越しにぐずぐず言われても聞き取れないこともあり、途中で買う気がなくなってしまったこともあります。

この「コロナ不信感」について私は一切触れないことにしています。私は許容範囲が広い方ですが、それを主張もしないし、極めてセンシティブな人にはそうですね、と同調しています。なぜならbelieverはその信念の根本部分が氷解しない限り、誰が何を言っても変わらないからであります。それはワクチンなのかもしれないし、感染が数字上収まることかもしれないし、人々がその話題をしなくなった時かもしれません。それは全くわかりませんがすっかり収まるまでには数年かかるかもしれません。

もしかするとワクチンが今年末から来年にかけて出回ったとしてもそれを一定人数に処置されるまで半年や1年はかかるでしょう。その間、仮にコロナが収束していても人々の「コロナアレルギー」は完治しないように思います。

私は映画館がなぜダメなのか、わからないのです。マスクして全員が一定方向を向き、お互いがしゃべらないという環境ならば換気がしっかりしてさえしていれば大丈夫な気がするのです。でもこれすらなかなか乗り越えられない壁なのです。ならば来年の東京オリンピックをどのように開催するのか、相当知恵を出さねばならないところでしょう。

コロナが招いたものは疾患そのもの以上に人々の不信感なのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

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