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ポスト安倍は「安倍」 ~ 安倍政権の歴史的貢献と日本政局 ~

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安倍無くしてデフレ脱却は無かった

2013年に安倍政権が誕生し、このデフレ政策体系がはじめて根本転換されたのである。大半の学者、エコノミスト、メディアが反対する中で、浜田宏一氏を内閣参与に迎え入れ、高級官僚中で唯一デフレ政策を批判していたアジア開銀総裁であった黒田氏を日銀総裁に迎え入れ、大胆な金融緩和、財政出動、改革を3本の矢とするアベノミクスを打ち出したのである。

後半安倍氏の意に反して、デフレ派の反撃により2度にわたる消費税増税、財政均衡路線回帰(プライマリー財政収支黒字目標)により経済と株価は息切れしたが、経済政策軸の大転換をたった一人で成し遂げたことに、驚愕した。2009年以降武者リサーチは積極的マクロ政策と円高阻止の金融政策を強く訴え続けたが、孤軍奮闘の感が強かった。

2013年以降、株高、雇用拡大、名目GDP上昇と経済パフォーマンスは大きく改善した。アベノミクスがなくても、世界経済拡大という循環環境の下で景気は良くなっていたはずだという論者がいるが、それは間違いである。図表2に見るように、2009年以降2012年まで、欧米株価がボトム比2倍前後の上昇を遂げていた時、日本株はリーマン後の最安値近辺で低迷していた。民主党政権と白川日銀体制の下での円高デフレ政策が主因である。例えば、東日本大震災の直後に日本支援のためのG7為替協調介入がなされ、為替水準是正の絶好の環境が整ったが、この好機を生かせなかった。

図表3は円レートとG7協調介入の推移であるが、過去6回の協調介入のうち5回は為替トレンドの大転換をもたらしたのに、2011年3月の震災直後の協調介入はトレンドを転換できないばかりか、さらなる円高がその後2年にわたって継続した。QEによりバランスシートを大膨張させてリフレ政策を加速した米国FRB、ECBに対して、日銀が全くの無策であったためである。この結果2011~2012の2年間にさらなる超円高により、エルピーダメモリの破綻、シャープ、パナソニック、ソニーの液晶やテレビの衰弱、等、ハイテク産業競争力に最後の一撃が与えられた。

このツンドラのように日本に蔓延し、日本人のアニマルスピリットを奪っていたデフレマインドを払しょくさせたのは安倍氏の功績である。安倍政権の7年半の間に、2%のインフレ目標には届かないもののデフレは終焉し、株価は2.24倍となり、コロナ危機のさなかですら6月失業率2.8%と大幅な雇用増加を実現した。

財政健全化路線で成長とん挫は悔恨である

後半経済成長率が息切れしたのは、2度にわたる消費税増税と、財政再建路線、プライマリー財政バランスの改善の影響が圧倒的に大きい。プライマリーバランスはアベノミクススタート時点の2013年から2019年にかけて-9%から-2%まで、7%改善したが、それは財政が毎年GDPの1%の需要を奪い続けたことを意味する。アベノミクスの第二の矢である財政は大きく逆走したと言える。消費税増税は三党合意の縛りによるもので安倍氏の本意ではなかったが、それに足をすくわれたのは、悔恨の極みと言えよう。

アベノミクス第三の矢である。諸改革も着実に進展した。①働き方改革、女性参画、教育無償化、②タテ割り行政の是正、内閣人事局、官邸主導、内閣の指導力発揮、③コーポレートガバナンス改革、GPIF、郵貯改革、④法人税減税、⑤TPP参加 等いずれも首相の指導力で実現したものである。

(3) ポスト安倍は「安倍」

圧倒的安倍氏の存在感、求心力は高まろう、再登場は必至

これほどまでに成果を上げた不世出の政治家ともいえる安倍氏は依然として議員であり続ける。安倍退陣の結果、メディアによる批判のための安倍批判は消滅し、実績と政策が検証され、安倍氏の評価は大きく高まるだろう。

安倍氏の健康治療次第であるが、完全治癒すれば第三次安倍政権、不安が残れば、最高顧問・副総理格で始動、キングメーカーになる可能性が高い。年齢65歳とまだ引退する年でない、つまりポスト安倍は安倍なのであり、次期首相は安倍政権との継続性と、安倍氏再起のためのつなぎの役割を果たす政治家が望ましいということになる。トランプ再選となれば安倍再登場を望む声が高まるだろう。安倍氏は米国史上唯一大統領を4期務めたFDR(フランクリン・セオドア・ルーズベルト)のような存在になるかもしれない。

安倍政治の継続性が確信されれば市場は高評価を

新内閣は暫定政権、自民党両院議員総会で選出、カギを握っている二階自民党幹事長は安倍4選論者であったことを考えれば、菅官房長官が短期リリーフの任を務める可能性が高い。

次期政権に期待される政策、①対コロナ対策(純粋な行政的項目)、②リフレ政策と改革、③デジタル化の推進である。各種改革の旗振り役でもあった菅氏は、改革とデジタル化推進者としては最適任といえる。短期暫定政権である故、憲法改正など長期課題は封印されるだろうが、それを外人投資家は好感する、であれば株価は新首相の誕生をポジティブにとらえるのではないか。

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