記事

連合が合流新党の生みの親なのに党勢拡大への最大の障害となる理由

立憲民主党、国民民主党、そしてこの2党を支援する連合は8月27日、ポストコロナ時代の日本の将来ビジョン・目指す社会像に関する「共有理念」を発表し、それを合流新党に引き継ぐことも併せて確認した。

合流新党の脱原発を骨抜きになる「共有理念」

この「共有理念」を見ると政党の綱領のような内容になっているが、「左右の全体主義を排し、多様な価値観を否定せず熟議を尽くす中道の精神を重んじ」 、「低廉で安定かつ低炭素なエネルギーシステムを確立する。その際には二項対立的思考に陥ることなく、科学的知見に依拠するとともに、雇用の公正な移行を維持する」という2つ文言が注目されている。

「中道」という言葉をあえて用いて左派色(リベラル色)を薄めており、エネルギー政策に関しては「二項対立的思考に陥ることなく、(中略)雇用の公正な移行を維持する」という文言を盛り込むことで、早急な脱原発実現にブレーキをかける内容となっている。さらに、「命とくらしを中心に据えた新しい資本主義」というキャッチフレーズが盛り込まれているが、「市場経済」または「市場メカニズム」でなく、あえて「資本主義」という文言を使っているのも特筆すべきで、合流新党の左派色をできるだけ薄めようという意図が見て取れる。

この「共通理念」の作成は、新党の綱領の上にもう一つ綱領を作るようなものである。何故このような「綱領」が作られたかといえば、立民と国民が合意した合流新党の綱領案の中に「私たちは、地域ごとの特性を生かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、あらゆる政策資源を投入して、原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します」という脱原発を明記した文言がある一方で、国民の党是である「中道」という言葉が盛り込まれていなかったからだ。

国民を支援する民間労組は脱原発に拒絶反応を示し左派色が強い理念にも抵抗感を感じており、国民に所属する組織内国会議員が合流新党への参加に難色を示していたので、合流新党の規模を拡大するために立民の枝野代表が連合の民間労組に妥協したともいえる。

合流新党で引き続き代表を務める可能性が高い枝野氏が今後も民間労組の要望を受け入れるのならば、基本政策と野党共闘で方向性が定まらない旧民主党がそのまま復活するだけになることは間違いない。しかしながら、国民がそんな政党の復活を望んでいるわけがない。連合は旧民主党系の最大の応援団であるはずが、最も同勢力の足を引っ張る存在であり、むしろ連合に依存しない中道左派政党をつくることこそが日本の二大政党制を再建するために欠かせないと言いたい。

水と油の旧総評系と旧同盟系

事実上、労働組合のナショナルセンターとなっている連合(日本労働組合総連合会)は、1987年に日本社会党を支持していた総評(日本労働組合総評議会)、民社党を支持していた同盟(全日本労働総同盟)、さらに中間派の中立労連(中立労働組合連絡会議)、新産別(全国産業別労働組合連合)の労働4団体が合併して結成された。旧総評は官公庁労組が中心で、旧同盟は製造業などの民間企業の労組が中心であった。旧総評系労組と旧同盟系労組は現在でも水と油の関係で、旧総評系の労組は脱原発・共産党の共闘に理解を示し立民を支援する一方で、旧同盟系は脱原発・共産党との共闘に後ろ向きであり国民を支援してきた。

以前私が指摘した通り、55年体制を担っていた政党だった日本社会党と民社党がそれぞれ立憲民主党+社会民主党と国民民主党と名前を変えて復活したのである。旧民社党(当初は民主社会党)は日本社会党の右派が分裂してできた政党である。それゆえ、旧日本社会党系政党は名前を変えながらも安全保障、原発や日本共産党との(共闘)関係をどうするかなどで対立し、離合集散を繰り返してきたことが分かる。共産党も含めた今の4野党共闘は、旧日本社会党、日本共産党、旧自民党竹下派(田中派)の分派の反自民統一戦線と言える。

右側から合流新党の政策を縛る旧同盟系

ここで、連合内部の力関係に関しては、結成前は旧総評の方が旧同盟より組合加入者数で優っていたが、現在では旧同盟系など民間労組の方が優勢になっている。連合の現在の会長である神津里季生氏は基幹労連(日本基幹産業労働組合連合会)出身で、次期会長と目されている相原康伸事務局長は自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)出身である。これまで、神津会長は脱原発と共産党との連携に繰り返し否定的な姿勢を取り続けてきた。

さらに、神津会長は国民民主党の結党を主導してきたが、同党の低迷が続いたことから旧民主党が立民と国民に分かれていたままでは次期総選挙は戦えないと考え、国民を支持する民間労組の懸念をよそに、両党の合併(旧民主党の復活)を支援してきたわけである。ところが、両党間で合意した綱領案を見るとかなり立民寄りの内容となっており、国民を支持する民間労組とそれらの組織内国会議員10人が合流新党への参加に難色を示したために、慌てた連合が立民に圧力をかけたというのが今回の共有理念発表の真相だろう。

現在、自民党と野党の間で最も明確な政策的対立軸となるのは、原発と安保法制をどうするのかである。この二つに関して態度を明確にしないのであれば、野党としての存在以外はない。そして、脱原発の推進と安保法制の廃止(違憲部分の削除)を進めるならば、同じ方向性にある共産党と共闘しない理由はない。つまり、脱原発と共産党を含む野党共闘の推進をどうするかは野党の中での最重要課題だ。しかしながら、それを合流新党が明確にできないのであれば、何を目指す政権なのか、自民党との違いは何かを国民が明確に理解することは不可能だ。それは、連合が合流新党の手足を縛り、方向性の明確化にブレーキをかけているからに他ならない。

左側から合流新党の政策を縛る旧総評系

ここまで、連合内右派の民間労組の問題点について述べたが、一方で連合内左派の官公庁系労組も反対の方向から合流新党の政策にブレーキをかける存在になると指摘したい。安保法制に関しては解釈改憲が違法に行われたので元に戻す必要性があると私は考えているし、一般的な野党支持者もそう思うだろう。一方で、立憲主義を掲げながら首相の解散権制限や同性間の結婚を認める立場を取ったとしたら、これらを憲法上で明規することを目指すべきである。次期総選挙で勝利し政権交代を成し遂げるためには、改憲に反対する共産党と社民党との連携が不可欠だ。

それゆえ、改憲は優先課題とされるべきではない。しかし、党として立憲主義を守り時代の要請に応えるならば、改憲自体はタブー視されるべきでない。立憲民主党の枝野代表が、官公労系労組や旧社会党系議員の反発を懸念し、同党に所属していた山尾志桜里議員が提唱した憲法論議を早々に封じたことを見ればわかる通り、残念ながら、合流新党でも同じことが起きるか将来的な改憲をめぐって党内で対立が起きる可能性が高い。

現状維持志向への強い求心力

連合を支持母体とする政党は、連合内での政治的意見相違が党内の意見対立にダイレクトに反映されるため、政策に明確な方向性を打ち出すことは難しくなり、現状維持志向への求心力が働くのである。これが、私が連合依存からの脱却が必要だと考える理由である。

では、上記の様に連合に頼らない中道左派政党が必要だということになるが、私はれいわ新選組ではなく、かねてから訴えたようにリベラル政党であることがわかる政党名を掲げ、立憲主義的改憲や統治機構改革を党是とする政党をつくることが必要だと考える。政党名だけが重要ではないが、日本だけではなく諸外国を見ても、その政党の政策志向が理解できないような名前を付けた政党の寿命は短い傾向にあると思う。「名は体を表す」である。

あわせて読みたい

「連合」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    入店拒否めぐる堀江氏SNSに疑問

    かさこ

  2. 2

    感染増も医師「安心材料増えた」

    中村ゆきつぐ

  3. 3

    児嶋一哉 台本通り演技で大人気

    女性自身

  4. 4

    中曽根氏葬儀に約1億円は違和感

    早川忠孝

  5. 5

    いつか撮られる…瀬戸大也の評価

    文春オンライン

  6. 6

    中国から日系企業1700社が移転へ

    NEWSポストセブン

  7. 7

    音に無頓着な人とWeb会議は苦痛

    佐々木康彦 / ITmedia オルタナティブ・ブログ

  8. 8

    「TENET」は観客に不親切な映画

    fujipon

  9. 9

    Amazonの防犯用ドローンは問題作

    後藤文俊

  10. 10

    よしのり氏 マスク巡る矛盾指摘

    小林よしのり

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。