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安倍首相の退陣表明を見て思ったこと ~労いの言葉を強要するのは論外、閣僚の国会出席は軽減されるべき~

安倍首相が昨日、ついに辞任を表明した。7月下旬に入ってから首相の官邸での執務時間が徐々に短くなり、8月からは公に健康問題が取り沙汰されるようになった。心労が重なり、それが持病の潰瘍性胃大腸炎を悪化させたとのことで、しっかりと治療され一日も早く回復をされること願う。政治家は健康状態が万全でないといけないというマッチョイズムは時代遅れで、首相の体調が悪化し職務遂行が不可能になったこと自体は責められるべきではない。たとえ持病があったとしても世の中を良くするために果たせることはいくらでもあるし、私は、リーダーに関しては、自分の健康状態に問題がある場合、あらかじめそのことを公表してそのことが出来るだけ組織としての意思決定を遅らせないような体制を作っておけば良いと考える。

しかしながら、特に右派系の論者から首相を労うことを強要する言動が噴出しているのは憂慮すべき事態である。彼らは安倍首相が強引に安保法制を制定して違憲な解釈改憲を行ったこともモリカケ問題や桜を見る会で公的文章が改竄されたり名簿が不自然な形で破棄されたりしたことも何とも思わないかもしれないが、安倍首相を批判する立場からすれば、彼がやってきたことは民主主義の破壊に他ならない。アメリカの故リチャード・ニクソン大統領はウォーターゲート事件で辞任に追い込まれたが、仮に彼が辞任表明時に記者会見を行っていたら、労いの言葉をかける記者はいなかっただろう。それに、トランプ大統領が大統領選で敗北して来年1月で退任したとしても、これまでのマスコミとの激しい対立を見る限り、最後の記者会見で多くの記者が彼に労いの言葉をかける光景は想像しがたい。それでも、彼らは「サヨクのマスコミ」は礼儀がないとか言い出すのであろうか?

そもそも、首相退任時の記者会見で記者が労いの言葉をかけないのはむしろ普通のことであり、民主党政権時の菅直人首相の辞任表明記者会見野田佳彦首相の総選挙での敗北を受けて党代表の辞任を表明した記者会見でも、映像を見る限りそのような言葉をかけた記者はいない。彼らは当時、記者が労いの言葉をかけなかったことを批判しただろうか?民主党だから必要ないなどと言い出すのだろうか?バカを言うなと言いたい。マスコミは権力と距離を置き権力の不正を暴くべき存在である。権力者への敬意を示すことは求められるべきでない。

さて、私は安倍首相のリーダーとしてのアカウンタビリティ(説明責任)と新型コロナウイルスへの対応を全く評価していないが、日本の政治システムは首相に必要以上に心労がたまりやすい構造になっているので、それは見直されるべきだと指摘したい。首相や閣僚が委員会への出席を求められている結果、国会出席が他国と比べて突出して多いことがしばしば指摘されている。さらに、全大臣の出席が義務付けられている予算委員会は、本来は予算を審議する場であるにもかかわらず、予算以外のことに審議がさかれるケースが多く、実際には政府追及の場になっている。これは自民党が野党だった時も全く同じで、野党である限り予算委員会を政権追及の場として活用することが合理的な構造になっているということである。政権のスキャンダルを追及する場は必要だし、それは確保されなければならない。しかし、それは別の場所でよい。閣僚の国会拘束時間を減らすこと、予算委員会での審議対象を減らすこと、さらに政権の不正追及の場を別に設けることはセットで導入されなければならない。

最後に、安倍総裁の後継者を選ぶ自民党総裁選が9月中旬をめどに行われることになっている。現在の国会での議席から新総裁は内閣総理大臣となるが、新首相には一刻も早く臨時国会を開き、特措法の改正を含む新型コロナウイルス対策をしっかりやっていただきたい。「新政権になったのでその妥当性について国民に信を問う」という名目で解散総選挙を行い、秋以降、新型コロナウイルスへの感染が爆発的に増加する可能性があるにもかかわらず、1か月以上にもわたる政治空白期間を作るようなことはすべきでない。そもそも、首相が恣意的な衆議院解散を行えると憲法解釈されていること自体問題であり、イギリスのように首相の解散権に制限が設けられるべきである。さらに言えば、アメリカや台湾の様に、大統領(総統)選挙の際に大統領と副大統領が同時に選出される政治システムの下では、大統領が欠けた場合に副大統領が自動的に大統領に昇格するので権力の空白は生まれない。大統領制の利点については機会を設けて説明したい。

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