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IMFの矛盾だらけの主張~大スポンサー日本によって歪められるIMFの主張

「IMFは世界各国の財政状況の見通しについて報告をまとめ、日本の財政については消費税率を今の5%から10%に引き上げるだけでは不十分で、さらなる税制と社会保障の改革などを通じて財政の健全化を加速させるよう求めました」

世界188カ国の財務大臣らが参加するIMFと世界銀行の総会が、9日、東京オリンピックが開催された1964年以来48年ぶりに東京で開幕した。IMF総会開幕に呼応する形で、「消費増税原理主義者」である日本のメディアは、一斉にIMFが日本に財政再建を求めていること、消費増税を支持していることを強調する報道を行っている。

日本のメディアは、日本が米国に次ぐIMFの大スポンサーであり、4つある副専務理事のうち1つが財務省財務官退職者の指定ポストとなっているうえ、財務省からの出向者が理事ポストを確保しており、IMFが日本にとっては「利害関係者」であることには殆ど触れず、IMFを「中立的な立場にいる世界の権威」であるかのように取り扱っている。

日本の財務省が強い影響力を持っているIMFを、消費増税正当化に利用するところが「消費増税原理主義者」の姑息なところ。

日本メディアは、IMFのブランシャール経済顧問兼調査局長の「日本の財政政策と金融政策について、非常な低金利であるために財政再建を急いで進める必要はそれほどない」「すでにゼロ金利状態が続き、金融政策の効果が薄いことや、低金利による利払い負担は小さいことなどから、急激な財政再建はかえって好ましくない」といった、「消費増税原理主義者」に都合の悪い発言は殆ど報じていない。

日本経済については、米国に次ぐ大口スポンサーである日本の財務省の意向を反映させる必要があるせいか、IMFの指摘は、全体として矛盾に満ちたものとなっている。

IMFは「世界経済の回復力は弱まっている」として、ことしの世界経済全体の成長率の見通しを7月の時点より0.2ポイント引き下げて3.3%とした。また、来年の世界経済については、今年を上回る3.6%の成長を予測しているが、信用不安の解決に向けたヨーロッパの対応が不十分な場合や、アメリカで「財政の崖」と呼ばれる急激な財政の引き締めが、議会の与野党の対立が解消されないまま強行された場合は世界経済に深刻な影響を及ぼすと警告している。

また、IMFは2013年時点のギリシャ政府の債務残高が、GDP比で181.8%に達するとの見通しを示し、今年4月時点の見通しから20.9ポイント引き上げた。その要因として挙げているのは「緊縮財政で景気が落ち込んだこと」。

一方、日本については、地方も含む公的債務のGDPに対する比率が、来年は、今年より8.4ポイント悪化してGDPの2.45倍に達するとしており、先の国会で法案が成立した消費税率の10%への引き上げだけでは財政健全化には不十分だと指摘している。

このようにしてみると、IMFの主張は、米国が急激な緊縮財政に陥る「財政の崖」を世界経済のリスク要因として挙げ、ギリシャの公的債務残高が膨らむ要因を「緊縮財政で景気が落ち込んだこと」とし、「緊縮財政の危険性」を強く打ち出しているにも拘らず、日本の「消費増税による緊縮財政」だけにはお墨付きを与えるという、矛盾したものになっている。そして、IMFは、欧米では世界経済に対するリスク要因とされている「緊縮財政」が、日本についてだけは正当化される理由については全く触れていない。

IMFの矛盾した主張を、整合性を持った主張にするためには、ブランシャール経済顧問兼調査局長の「日本の財政政策と金融政策について、非常な低金利であるために財政再建を急いで進める必要はそれほどない」「低金利による利払い負担は小さいことなどから、急激な財政再建はかえって好ましくない」という指摘を公式見解として捉えることである。

48年前、東京で開催されたIMF総会で、「戦後の復興」を世界に印象付けた日本。今のように、IMFを「消費増税原理主義」の広報部門の如く利用し続ければ、「震災からの復興」は印象付けられたとしても、「失われた20年からの復興」を印象付けられるまで、さらに48年という時間が必要になってしまうかもしれない。

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