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GO TO トラベル:東京除外を解除すべし~ 感染原因は移動にあらず、リスク低減策の甘さにあり~

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 "リスクの伝道師"SFSSの山崎です。毎回、本ブログではリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方を議論しておりますが、今月も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがいまだ収束しないなか、7月下旬より実施された「GO TOトラベル・キャンペーン」の東京除外を解除するかどうかが争点となっているようですので、その点を考察したいと思います。なお、世界中でCOVID-19により亡くなられた方々に、謹んでお悔やみ申し上げます。

 この新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、通常の風邪を引き起こすコロナウイルスと同様、感染したヒトが軽症の風邪症状ですむ場合も多いものの、肺炎などが重篤化して亡くなる方も一定割合で発生する厄介な感染症とわかってきたが、人類がその予防対策にもたついているうちに、あっという間に感染爆発/パンデミックが世界を襲い、多数の犠牲者を出してしまった。これは世界だけの問題ではなく、国内でも千人以上の尊い生命が失われていることを重く受け止めるべきだ。

 重篤な健康被害を起こし、死亡例も少なくない感染症なのだから、そのリスクを綿密に評価したうえで、感染リスクを如何にして低減していくか(リスクマネジメント)について、世界中の保健行政が専門家を結集して、いち早く公衆衛生リスク低減策を打ち出すべきだったが、決してうまくいったとは言えない状況だ。

・WHOテドロス事務局長のTwitter:(WHOが開始した「WearAMask challenge!」について)
  https://twitter.com/DrTedros/status/1291056191569887233?s=20

 中国武漢で新型コロナウイルスによる感染爆発が起こり、日本でもダイアモンドプリンセス号における集団感染が起こったのは今年2月のことだが、それから半年もたってから、やっとすべての市民に外出時のマスク着用(ユニバーサル・マスク)を推奨し始めたWHOは、世界の保健行政として適切なリスコミができていたとは、とても思えない。なぜテドロスさんがWHO事務局長に居座っていることを世界が許すのか、まったく理解できないところだ。

 COVID-19について、日々世界中の研究者から論文発表され、新たな知見が伝わってくることで、専門家たちの見解も少しずつ変わってきたが、われわれの見解はぶれていない。SFSSでは2月中旬から国立医薬品食品衛生研究所客員研究員の野田衛先生にご助言をいただきながら、市民むけのリスコミを以下の通り続けてきた:

◎「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防法について」
 BLOGOS 山崎 毅(食の安全と安心) 2020年02月19日

  https://blogos.com/article/437209/

 野田衛先生が提唱された「集団予防」のポイントは以下の3つだ:
   ① 飛沫をあびないこと(飛沫感染防止;マスクも有効)
   ② 手洗いまでは顔をさわらないこと(接触感染防止)
   ③ 消毒薬をうまく使う(アルコール以外も有効利用)

 いまでこそ世界各国の健康行政がすべての市民に外出時や公共機関利用時にマスク着用を義務付けているが、今年2月の時点で我々は健常者も外出時はマスク着用すべき(ユニバーサル・マスク)と主張していたわけだ。また、世界の国々の中でも全国民にマスクが支給され、感染者をほぼ完全に抑え込んだ国がある。それはお隣の台湾だ。

 日本も「アベノマスク」をすべての国民に無料配布すると提案した厚労省担当者は偉かったと思うが、ユニバーサルマスクの重要性が理解できない政治家/偽専門家/マスコミ関係者たちの邪魔が入ったことで、スムーズな運用ができなかったことは大変残念だ(いまだにTVで「アベノマスク」を馬鹿にするコメンテータがいるのには呆れるしかない)。もし日本でも台湾と同様のユニバーサルマスクが達成できていれば、もっと感染者数/死者数を抑え込めた可能性が高いと考える。

 日本で「アベノマスク」が全国民に支給されるのは運用がうまくいかなかったが、志村けんさんが新型コロナ感染症で亡くなったことの衝撃により、日本人の外出時マスク着用率は80%強に跳ね上がったことで、新型コロナ第一波は収束していった。ただ、残念なことに国民の新型コロナ感染症に関するリスクリテラシーが不完全なまま推移したため、第2波が到来することとなった。

 すなわち、外出自粛すること=「Stay Home」、移動/旅行しないこと、お店が営業しないことなど、「フィジカルディスタンス」=感染者から距離をとることのみが感染症リスク低減策であるかのようなリスコミがされたことで、市民はウイズコロナ時代のリスク低減策を誤って理解したということだ。

その証拠に、小池都知事が「Stay Home週間」をうったえた東京都では、緊急事態宣言解除後に感染が再び拡大し始めたが、これは都民(とくに若者たち)が経済活動をまわしながらの感染症リスク低減策において、マスク・手洗い・消毒が重要ということを理解していないからだ。

 新型コロナの感染形態は空気感染ではない。飛沫感染と接触感染がメインであることがわかっている。だからこそ、経済活動を制限する「フィジカルディスタンス」のみが感染症リスク低減策ではない。

リスク低減策の基本として、マスク・手洗い・消毒の3つをしっかりやれば、感染リスクは無視できるまで下げられるわけだが、移動しなければ感染するはずがないと勘違いして、マスク・手洗い・消毒の基本対策が甘いヒトは、残念ながら危ない橋を渡っていることになる。だから都内に市中感染者がそれなりにいれば、新規感染者も毎日数百人レベルで起こるのも避けられないのだ。

 新型コロナに感染してしまった方で、「ずっと在宅勤務で外出時はマスクをしていたのに・・」と言われる方も、本当に外出時に一切マスクを外さなかったのか、会食時にマスクを外して誰かと会話しなかったのか、買い物に出たときに公共施設の何か物体に手が触れた後で、手洗い・消毒を怠ったのではないか・・など、飛沫感染/接触感染経路の可能性を思い出してほしい。リスク低減策の基本として、外出時のマスク着用・頻繁な手洗い/消毒の3つをしっかりやれば、ほぼ感染することはないレベルまでリスクを抑えることができるのは間違いない。

 先日開催された高校野球の甲子園交流大会において、全国から代表校の選手・部員・保護者たちが集まって16試合を敢行したが、クラスター感染が発生したとは聞いていない。おそらく徹底的な感染リスク低減策を施したうえで、大会開催にこぎつけたものと思うが、これもまさに全国各地から関西への移動自体が大きなリスクと考えるのは誤りだ。

これまで「GO TO トラベルキャンペーン」を利用した420万人で、クラスター感染が発生したという事故もいまのところ聞かない(感染者の報告が1名?)が、移動/旅行すること自体が大きな感染リスクとは言えないように思う。

 「いやいや、東京から沖縄や札幌への旅行者たちが感染を広げたじゃないか」というご意見もあるだろうが、それは移動/旅行が原因ではなく、その感染者たちや受け入れた店舗側が感染症予防対策をしていなかったことが原因だ。接待を伴う飲食の席で、マスクを外して会話していた人たちが感染してしまったのは、移動/旅行が原因でなく、やらかした特定の個人や事業者が原因なのは明らかだ。

 除外するなら、そのような感染対策ができない特定の個人や事業者(固有名詞)であるべきで、「GO TO トラベルキャンペーン」から東京を除外することも、感染予防対策ができている方々にとっては全く問題ないと考える。国民の税金で実施される国のキャンペーンであるにもかかわらず、なぜ感染症対策がきっちりできている東京の観光業者さんたちや、東京の旅行者が除外されるのか、不公平としか言いようがない。

 どうしても「GO TO トラベルキャンペーン」を非難したいメディアの姿勢にも、本当に困ったものだ。ワイドショーの出演者/芸能人も、「東京から地方へは行きたくないよねぇ。感染が怖くて、そんな目でみられるのもイヤだし・・」などと無責任なコメントをするし、「飛行機や新幹線は使わずにマイカーで移動する方が安全?!」などと、全く根拠のないリスク感覚を視聴者に押し付けるのにはガッカリだ。

飛行機や鉄道での移動の際にクラスター感染が発生したという証拠がどこにあるのか?むしろクラスター感染を発生させているのは、近場のマイカー移動で友人たちとマスクなしでバーベキューをした人々ではないか。遠距離移動は危なくて、近距離移動ならリスクが小さい、という印象操作はやめてほしい。

 筆者自身も、7月初旬に首都圏から北海道に旅行した(当然、航空便を利用した)のだが、どこへ行っても感染予防対策がしっかりされており、首都圏からの旅行者だからといって歓迎されない、などという不愉快な体験は全くなかった。観光業の皆さんにそんな失礼な方々はいないし、旅行する側も迎える観光業者さんたちも、しっかり感染症リスク低減策ができていれば、移動/旅行自体は何の問題もないのは明らかだ。

 繰り返すが「GO TO トラベルキャンペーン」から東京を除外するのは、まったく意味がない。感染症リスクが高いのは東京という特定の地域だからではなく、感染症予防対策ができていない個人であり事業者なので、もしキャンペーンから除外するなら、そちらが適当だろう。日本国内で1日1000人前後の新規感染者が発生している現状で、東京以外の地域(大阪・愛知・福岡・神奈川など)なら感染者がいないと考えるのも矛盾しており、世界中どこにいても感染予防対策は必要なのだ。

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