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河井前法相初公判全解説~「安倍首相の体調」との関係は?

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昨日(8月25日)、河井克行(前法相)衆院議員(以下、「克行氏」)と、妻の河井案里参院議員(以下、「案里氏」)の公職選挙法違反事件の第1回公判が東京地裁で開かれた。両氏は、検察の起訴事実の現金供与の外形的事実を概ね認めた上、「投票又は票の取りまとめ等の選挙運動を依頼する趣旨で渡したものではない」と述べて起訴事実を否認し、無罪を主張した。

この事件については、広島での検察捜査が克行氏に向けて本格化していることが明らかになった今年4月に【河井前法相“本格捜査”で、安倍政権「倒壊」か】で最初に取り上げ、河井夫妻が逮捕された時点では【検察は“ルビコン川”を渡った~河井夫妻と自民党本部は一蓮托生】、起訴された時点では【河井夫妻事件、“現金受領者「不処分」”は絶対にあり得ない】と、その都度、私の見解を交えて解説してきた。

今回、第一回公判で行われた両氏の罪状認否、検察の冒頭陳述、克行氏の弁護人冒頭陳述に基づき、今後の公判のポイントを、克行氏関係に焦点を当てて解説することとしたい。

検察冒頭陳述の内容

検察冒陳では、「第1」で克行氏、案里氏の両被告人の身上、経歴について述べた上、「第2」で、本件選挙(2019年参議院選挙)の選挙情勢、選挙状況、案里氏の立候補に至る経緯について、「第3」では、克行氏が案里氏の選挙活動を取り仕切り、選挙の総括主宰者の立場にあったことと、選挙の組織体制について述べている。

そして、「第4 犯行状況」では、「1」で、「県議会議員・市町議会議員・首長らへの現金供与」(44名に、合計62回、現金合計2140万円)、「2」で、「三矢会メンバーへの現金供与」(50名に対し、50回にわたり、現金合計385万円)、「3」で、「選挙事務所のスタッフへの現金供与」(6名に対し、前後16回にわたり、合計約377万円)について、個別の現金供与の状況と、それを受けて行われた「選挙運動」の状況について記述している。

このうち、「3」については、選挙運動に直接関わっていた者らへの現金供与であり、一般的な買収事案と大きな差異はなく、買収罪の成立にさしたる問題はない。また、「2」についても、克行氏との関係や、案里氏の選挙での支援を行っていることが概ね明らかで、「案里氏に当選を得させる目的」や、「選挙運動」を依頼して現金を供与したことの立証は比較的容易だと思われる。

最大の問題は、供与金額の3分の2以上を占める「1」の「県議会議員・市町議会議員・首長らへの現金供与」だ。

この点について検察冒陳では、

被告人克行は、広島県第三選挙区外の行政区域内選出の県議・市町議・首長らについては、そのうち以前から自身と付き合いがあった者や被告人案里がその県議時代に親交のあった者等に対し、さらには、それまで自身とほとんど接点のなかった者や近時疎遠になっていた者に対してもなりふり構わず、被告人案里への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動を依頼するとともに、その報酬として現金を供与することとした。

と述べているが、個別の現金授受の状況についての記述は、大部分が

本件選挙における案里への支持を依頼した上で、本件選挙における投票及び票の取りまとめの報酬として現金~万円を供与した

というもので、現金授受の状況についての具体的な記述がない。そして、供与の時期も、多くが、7月4日の公示の1か月以上前で、3か月以上前のものもあり、参議院選挙での「投票」「票の取りまとめ」との関係が相当希薄であることは否定できない。

この場合、克行氏から現金の供与を受ける際にどのような「選挙運動」を依頼されたと認識したのかが問題となる。

検察冒陳では、

受供与者(現金受領者)の一部は、被告人克行から現金の供与を受けた前後の時期に、被告人案里の出陣式や街頭演説会で応援弁士として演説を行って被告人案里への投票を呼びかけたり、被告人案里による選挙カーでの遊説の際に別車両で先導して被告人案里への投票を呼びかけたりするなどの選挙運動を行った

としているが、このような「選挙運動」を行ったのは「現金受領者の一部」であり、それ以外の現金受領者については、「選挙運動」を実際に行った事実がないようだ。そうなると、公判での証人尋問で、現金供与を受けた際に、その趣旨についてどのように認識したかについての証言内容がカギとなる。

ここまでの、個別の現金授受の状況や、それを受けての「選挙運動」に関する記述だけだと、「1」については、検察官の主張は相当弱いという印象を受ける。

しかし、それ以降の記述で、「1」についての検察主張が、かなり強力に補強されている。

議員・首長への現金供与に関する検察の「3つの主張」

検察冒陳の第4の「1」の末尾の(4)(5)で、弁護側主張に対する反論として、(a)現金供与に関して、領収書のやり取りの話がなく、収支報告書等への記載がないこと、(b)現金供与の際のやり取りに、自民党党勢拡大など、案里氏の選挙での当選以外の目的を窺わせるものがないこと、という主張が行われており、さらに、「第5 本件犯行後の状況」では、(c)克行氏自身が、供与対象者及び供与金額を記載したリストを消去して隠蔽しようとしたこと、という弁護側主張への「強烈な反対主張」が述べられている。

合法的な「政治活動のための寄附」であれば、領収書のやり取りが行われ、関連団体の政治資金収支報告書に記載されているはずだ。(a)の主張は、それらが行われていないので、「政治活動のための寄附」であることは否定されるというものだ。

(b)は、克行氏が、現金供与の際に、「政治活動の支援を依頼したり、自民党の政策を広めるよう依頼したり、自民党員を集めるよう依頼したりすることはなく、被告人克行の政治活動の支援を依頼したり、被告人克行の政策を広めるよう依頼したり、被告人克行の支持基盤拡大を依頼したりすることもなかった。」と述べ、「党勢拡大・地盤培養のための寄附」との克行氏の主張に反論するものだ。

これら2点の検察の主張は、弁護側の「合法的な政治活動に関する寄附」だとする主張に対して、有効な反論となるものと言える。

そして、(c)は、克行氏が、2019年10月に、本件選挙における選挙違反(車上運動員買収)の報道があったことから、同年11月3日に、インターネット関連業者に、克行氏の議員会館事務所や自宅のパソコンデータを復元不可能な状況に消去するよう依頼したこと、供与対象者及び供与金額を記載したリストを含むフォルダー「あんり参議院議員選挙‘19」のデータを復元不可能な状態に消去したが、議員会館のパソコン内には、消去されたフォルダーとは別に、業者の消去作業により消去されなかった同名のフォルダーが保存されていたというものだ(これが、検察の強制捜査で押収され、本件現金供与が発覚したということだろう)。

克行氏が、案里氏の陣営の選挙違反の問題が表面化した後に、本件現金供与に関するリストを含むパソコンデータを、「消去不可能な状態」に消去しようとしていたことは、克行氏が、本件の現金供与を隠蔽しようとする強い意図を持っていたことを示すもので、現金供与が、合法的な「政治活動のための寄附」という主張に対する強烈な反対主張だと言える。

また、それ自体が「露骨な罪証隠滅行為」だと言える。克行氏が、何回保釈請求を行っても保釈が認められないことの最大の原因は、このような露骨なパソコンデータの消去を行っていることが、「罪証隠滅の恐れ」を強く示唆していると認められるからであろう。

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