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郊外への転居が急増する米国と、テレワークも地方移転も進みきらない日本の決定的違いとは

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日本では若者の意識は変化したものの……

内閣府が6月に公表した調査結果によると、コロナ禍を踏まえ、若い世代ほど地方移住への「関心が高くなった」と回答。とりわけ、東京23区に住む20代では、35.4%に上った。この質問の調査対象は、首都圏と大阪圏、名古屋圏の1都2府7県の人たちで、全世代では15.0%にとどまっている。年齢別では、20代の22.1%を筆頭に、30代の20.0%、40代は15.2%、50歳以上が10.2%となっている。

若者は柔軟に考えている反面、家族や子どもがいて、住宅ローンを抱えているような世代には、日々の生活が現実そのものであり、なかなか移住には及び腰どころか、発想すら頭の片隅にもない、といったところだろうか。都市圏から地方ではなく、都内から埼玉、大阪から奈良など都市圏内の移住となれば、もう少し割合は高まるのかもしれない。もっとも、テレワークがそれほど浸透していないため、むしろ通勤時間が長くなってしまうのが難点か。

テレワークも地方移転も進まない日本の政府機関

政府が進める地方創生の一環として、7月に閣議決定した基本方針では、内閣府調査も踏まえて、地方移住への関心が高まっていると分析し、東京一極集中の是正策が盛り込まれている。東京ではなく地方でも在宅勤務ができるような環境整備を支援、東京に本社を置く企業に対し、サテライトオフィスを誘致する地方自治体の取り組みにも援助し、地方への移住を促進しようとする取り組みと位置付けられた。

地方創生の柱のひとつとして安倍政権が掲げている政府機関の移転を巡り、徳島県への全面移転を計画していた消費者庁は、国会議員による質問対応を含めた国会対策全般や危機管理に支障が出かねないと判断し、完全に頓挫した。文化庁は2021年度中に京都に移転する予定だったものの、庁舎の整備が間に合わないため、2022年度中に先送りされた。言うまでもないが、これらは政府機関のほんの一部に過ぎない。ほとんどの中央省庁は地方への移転に乗り気でないのが実情だ。

思わぬ形で、郊外への人の流れが進み始めた米国。かたや、地方への移住に対する機運がそれほど高まることなく、率先する形の政府機関移転も不十分な日本。大都市の郊外への移動と、地方への移動という違いはあるが、あまりにも対照的だ。背景にはコロナ禍の中、オフィスに通わざるを得ないか否かという問題があり、在宅勤務が完全に日常風景となった米国の方が、「クオリティ・オブ・ライフ」を追求する傾向にあると言えるかもしれない。

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小西 一禎(こにし・かずよし)
米国在住・駐夫 元コロンビア大学大学院東アジア研究所客員研究員 共同通信社政治部記者
1972年生まれ。7歳の長女、5歳の長男の父。埼玉県出身。2017年12月、妻の転勤に伴い、家族全員で米国・ニュージャージー州に転居。96年慶應義塾大学商学部卒業後、共同通信社入社。3カ所の地方勤務を経て、05年より東京本社政治部記者。小泉純一郎元首相の番記者を皮切りに、首相官邸や自民党、外務省、国会などを担当。15年、米国政府が招聘する「インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム」(IVLP)に参加。会社の「配偶者海外転勤同行休職制度」を男子として初めて活用し休職、現在主夫。2019年1月~9月、米・コロンビア大学大学院東アジア研究所客員研究員。研究テーマは「米国におけるキャリア形成の多様性」。ブログでは、駐妻をもじって、駐夫(ちゅうおっと)と名乗る。世界中の日本人駐夫約60人でつくるフェイスブックグループを主宰。
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(米国在住・駐夫 元コロンビア大学大学院東アジア研究所客員研究員 共同通信社政治部記者 小西 一禎 写真=iStock.com)

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