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女の子が“モテ”を連呼した2000年代 「エビちゃんブーム」には何が託されていたのか 『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど』著者・高橋幸氏インタビュー #1 - 「文春オンライン」編集部

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『CanCam』専属モデルの蛯原友里と押切もえが大ブレイクした2000年代は、雑誌に「モテ」という言葉を刷れば刷るほど売れる時代でもあったーー。 

 若い女性たちは『CanCam』に何を見ていたのか。当時「モテ」に込められた意味はなんだったのか。そして、2010年代半ばに「フェミニズム・ブーム」が起きたのはなぜか? 

 著書『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど』を上梓した社会学者の高橋幸氏に話を聞いた。 (前後編の前編/後編はこちら)


高橋幸氏

◆ ◆ ◆ 

2000年代の『CanCam』に恋愛指南はなかった

ーーご著書『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど』に登場する、2000年代の「めちゃ❤モテ」ブームの分析がとてもおもしろかったです。「めちゃ❤モテ」ブームは何だったのか、改めて教えてください。 

高橋幸氏(以下、高橋)「めちゃ❤モテ」ブームは2003年から2008年にかけておきた、『CanCam』発の「モテ」ファッションの流行……と一般には理解されていますが、実際は、「モテ」という言葉を当時の女の子が強く支持した現象、と理解するのが正確だと思います。 

「モテ」というキャッチコピーを雑誌の表紙に刷れば刷るほど売れるというくらい、「モテ」という言葉が社会現象になりました。 

ーーその一方で、実は当時の『CanCam』内には恋愛指南のような内容はまったくなかった、という指摘が意外でした。 

高橋 そうなんですよ。具体的な恋愛アドバイスのようなものは何もなし。蓋を開けてみると、「めちゃ❤モテ」ブームは異性にアピールしたいというより、「モテたい、モテたい」って女同士で言ってキャッキャやるのが楽しい、っていう文化でした。   

 それが顕著に表れているのが、当時『Cancam』専属モデルとして絶大な人気を誇った“エビちゃん”こと蛯原友里さんが主人公を務める着まわし連載「エビちゃんシアター DOUBLE FANTASY」です。 

ーーどういった内容だったのでしょう。 

高橋 簡単に言えば、蛯原さんが演じる都内在住OL「ユリ」が友人たちと、会社員的な青春をワイワイ楽しむ、というストーリーです。けっこう真剣に結婚相手を探す一世一代の大勝負、「後期・青春」みたいなことをやっている。   

 ただ、おもしろいのが、ユリたちは異性を意識した「モテ」を目指していたはずなのに、「女の子にしかわからない『かわいさ』」が大きな意味を持ってくるんです。 

ーー「女の子にしかわからない『かわいさ』」? 

高橋 たとえば、ユリがある商品に感じた「かわいさ」を、恋人のケンに理解してもらえないシーン。その後、ユリは女友達にそのことを相談し、慰めてもらいます。 

 ここには、「女の子であれば、私が言う『かわいい』を理解してくれるはず!」という奇妙で強烈な信頼感があり、それに対して「男なら分からなくてもしかたない……」という世界観があるんですね。

 異性を意識した「モテ」を追求すると、女同士の競争が起こったり女の友情にひびが入ったりするわけなのですが、かわいいものを通じた「女同士の絆」によって亀裂は修復される。 

ーーなるほど、「モテ」と「女同士の絆」が「かわいい」によって両立できるようになる。 

高橋 もっと言えば、赤文字系ファッション誌界では「モテ」は本来タブーだったんですよ。赤文字系は「お嬢さま」「上品」を掲げるので、ちょっとガツガツした印象をもたらす「モテ」とは対立する。 

『CanCam』は、そこを「『モテたい』は『かわいい存在になりたい』という意味だ」という独自の論理で乗り越えた。それが支持されて、業界一番手だった『JJ』を追い越す“モンスター雑誌”に成長しました。 

 振り返れば、「めちゃ❤モテ」ブームとは、『JJ』文化が作り上げてきた女らしさの価値観を、『CanCam』が壊した、という構図でもあったんです。

『JJ』は、「上品で育ちがよさそうで、恋愛においては受け身なのに男性から言い寄られまくっている女の子というのが最も価値がある」という女の序列を作ってきたのですが、『Can Cam』は、それをぶち壊した。「女がモテたいと言って何が悪い!」というわけですね。  

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