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中国、アルゼンチンに急接近

アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領(2020年7月8日) 出典:アルゼンチン大統領府 facebook

山崎真二(時事通信社元外信部長)

【まとめ】

・コロナ禍で“親中”路線加速。中国と通貨スワップ更新で合意。

・対IMF交渉で米国の支援必須も、亡命事件で対米関係はギクシャク。

・対中緊密関係と対米配慮。“綱渡り外交”余儀なくされる政権。

中国が新型コロナウイルスの直撃を受けている南米の大国アルゼンチンに急接近している。

■ “ウィン・ウィン”のスワップ協定更新

アルゼンチンで中国の存在感が急速に増大したのは、左派のクリスティーナ・フェルナンデス元大統領の時代(2011-2015年)だ。この時期、両国は約20の協力協定を締結するなど中国の経済支援が本格化した。この後、2015年末から4年間政権を担当したマクリ前大統領は対中関係より、むしろ対米関係重視路線に傾いた。

昨年末就任したアルベルト・フェルナンデス現大統領(クリスチーナ・フェルナンデス元大統領とは血縁関係はない)は左派色の強いポピュリズム(大衆迎合主義)的公約を掲げていたこともあり、早くから対中関係強化に進むのではないかとの観測が流れていたが、ここに来て親中姿勢が一気に表面化した。

この直接のきっかけがアルゼンチンでの新型コロナ感染拡大とみる向きが多い。同国では3月初めに感染者が確認されて以来、感染拡大が収まらず、今月下旬には感染者数は約30万人に達している。

アルゼンチンの主要メディアの報道によれば、中国政府は3月半ばごろからアルゼンチン側と頻繁に連絡を取り、大規模なコロナ対策支援を実施した。

中国の支援に関し習近平国家主席とフェルナンデス大統領はたびたび書簡を交換。7月初めには同大統領から習主席あてに謝意を表明する書簡が公表された。これらの書簡を通じ両国はコロナ対策だけでなく、両国間の「包括的な戦略関係」を発展させるため、二国間協力を深化させる方針が明らかにされたという。

▲写真 中国の習近平国家主席 出典:中国外交部ホームページ

最近、両国間では宇宙探査分野に関する複数のプロジェクトで合意したのに加え、他の分野でも協力強化の話し合いが進んでいるもようだ。宇宙分野の協力は、マクリ前政権下で事実上ストップしていたが、今回の合意により協力が再開される見通し。

中国がアルゼンチンに対し「一帯一路」への参加を強く求めているほか、第5世代(5G)移動通信システムに関してもファーウェイがアルゼンチン当局への働きかけを強めているとの情報もある。

最近の両国関係を象徴するのが、先ごろ発表された通貨スワップ協定の更新合意。両国政府は7月末期限切れのスワップ協定について総額を180億ドル相当に引き上げ、更新することで合意した。これにより、アルゼンチンは対外債務危機に備えることができる一方、中国は人民元によるアルゼンチン産農産物の購入が可能になる「“ ウィン・ウィン ”の関係が成立する」(中国紙「環球時報」)という。

■ 対IMF交渉には米国の支援が必須

その一方、「新型コロナで直撃を受けたアルゼンチンの窮状に中国がつけ込もうとしている」(ブエノスアイレス在住の米国人経済アナリスト)との厳しい見方もある。

「フェルナンデス政権が親中路線に突っ走り、米国との関係が悪化することは今後のアルゼンチンにとって大きなマイナス」(在ブエノスアイレス外交筋)との声も強い。

アルゼンチンは今月初め、約650億ドルに上る外貨建て国債の債務再編交渉について債権者側と合意に達したばかり。次の重大課題は国際通貨基金(IMF)との交渉だ。

アルゼンチンは2018年の通貨危機の際、IMFから580億ドル規模の金融支援を受けているが、来年から返済が始まる予定で債務返済の猶予を要請せざるを得ない状況。新型コロナの影響で同国の今年の経済成長率はマイナス10%あるいはそれ以上のマイナスが見込まれる上、インフレ高騰、失業増大、財政赤字急増など経済悪化要因が山積しているからだ。

「フェルナンデス政権はIMFに対し返済猶予だけでなく、追加支援を求める必要があるが、そのためには同基金に大きな影響力を持つ米国の支援が得られるか否かがカギ」(アルゼンチン有力経済「アンビト・フィナンシエロ」)というのが大方の意見。だが、アルゼンチンの対米関係はギクシャクしている。アルゼンチンに亡命した反米左翼のモラレス前ボリビア大統領をフェルナンデス政権が支援していることなどが大きな理由である。

米国は、中国がアルゼンチンで影響力を増すことに強い警戒感を示す。米中対立が一段とエスカレートする中、アルゼンチンは「中国と緊密な協力関係を維持しつつ、対米関係にも配慮せねばならないという“ 綱渡り外交 ”」(前述の外交筋)を余儀なくされそうだ。

(了)

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