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なぜ多重チェックをしてもテレビ番組はネットで“炎上”してしまうのか 『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』より #2 - 白武 ときお

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SNSに最適化した番組が勝つ?

 NetflixやAmazonプライム・ビデオといった動画配信サービスが普及したことにより、TSUTAYAにDVDを借りにいかなくても、大量のアーカイブをいつでも簡単に見られる時代になりました。僕はなんでも見るコンテンツオタクなので嬉しい限りですが、普通に暇つぶしのためになにかを見たいという人にとってはキリがないというか、選択肢が広がりすぎている側面もあると思います。

 そこでなにを視聴するかの指標になるのが、“口コミ”です。Netflixの『全裸監督』や『ストレンジャー・シングス』、2020年上半期で言えば『梨泰院クラス』『愛の不時着』といった話題作が生まれると、友達と共有するために、それぞれがビンジ・ウォッチング(イッキ見)しますよね。

 TVerのランキングを見ても、『相席食堂』や『恋はつづくよどこまでも』のように、盛り上がっているものが、さらに輪をかけて盛り上がるようになっている。いまはコンテンツがものすごく瞬間的に消費されていますが、今後もその傾向は顕著になっていくでしょう。

YouTubeの特性を生かした話題づくり

 見逃し配信やデジタルデバイスでの繰り返し視聴などになじみのない高齢世代からすれば、テレビ朝日系の『科捜研の女』や『ドクターX~外科医・大門未知子~』といった、水戸黄門のような一話完結のシリーズドラマは安心して見られるので、いまだに高い人気を誇っています。

 一方、若者の間で『テセウスの船』や『あなたの番です』のような謎解きミステリードラマが人気になったのは、犯人探しをさせることで話題化に成功したからです。

『あなたの番です』は、Huluでオリジナルストーリー『扉の向こう』を流して考察を過熱させたこともブームの一因になったと思います。また、同様に『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』も、スピンオフとして3年A組の生徒たちの日常を追いかける映像をYouTubeに公開し、100万回再生を連発していました。

ネットスキルは今後のテレビマンに必要な資質

『ワンピース』や『新世紀エヴァンゲリオン』など、謎や伏線が散りばめられた作品は、ネットで議論の的になり、好きな人はとことんのめり込みます。SNSやスピンオフ動画をうまく連動させて、視聴者の熱を高めていくコンテンツの作り方は、これからも増えていくはずです。

 バラエティでも『有吉の壁』がネタごとに動画を切り分けて、短尺で面白い動画を量産しています。日本テレビは、そういったネットを巻き込んだ番組作りに成功しているといえますね。

 他の局に目を移すと、『家事ヤロウ!!!』というバラエティ番組は、番組内で紹介したレシピなどを投稿するインスタグラムの公式アカウントで人気を集めています。2020年7月現在でフォロワー数が94万人。テレビ番組の公式アカウントは多々ありますが、この数値は凄まじいものです。

 もちろん予告編など、従来の公式アカウントらしい投稿もありますが、ほとんどがインスタに最適化されたレシピ紹介や、番組と連動したインスタライブの配信など。番組への視聴者の誘導をSNSから作ったり、SNSでより番組のファンにさせていったりする能力が圧倒的に高いと思い知らされます。

 こういったネットの使い方は、今後のテレビマンに求められる、新たな資質のひとつになっていくことでしょう。

なぜテレビは炎上してしまうのか

 テレビ番組での芸能人の発言やVTRの演出がネットで拡散され、“炎上”することが少なくありません。すべてが生放送というわけでもないのに、なぜテレビは炎上してしまうのでしょうか。

 先ほども書いたように、テレビの制作現場にはチェック工程がたくさんあります。ディレクターが作ってきた映像を演出がチェックして、それをさらにプロデューサーがチェック。危なそうであれば、さらに局の法務部などの考査にも確認をするという多重チェックを通しています。

 それにもかかわらず時代錯誤な炎上発言があとを絶たないのは、ひとえに、チェックする側の価値観が更新されていないから。もちろん、それは僕も含めて危険なところがあると思っています。

 日々更新されていく世の中の新常識や、価値観の変化をつかむためには、SNSやネットニュースが不可欠。僕の場合はTwitterとYahoo!ニュースが生命線です。最近は、殺伐としたネットリンチのようなものが多く、見ていてつらくなることも多々ありますが、なるべくチェックするようにしています。

 ちなみに、「100日後に死ぬワニ」も1日目からチェックしていましたが、もしTwitterをやってなかったら99日目の死ぬ間際にニュースで知って、一気見していたことでしょう。

SNSを使いこなして感性をアップデートする

 差別問題やスキャンダルなど、SNSを使っていなければ届いてこない領域の問題はたくさんあります。もしSNSをやらずにNetflixとゲームだけの生活を続けていたら、「#Metoo」や「#Kutoo」という運動の存在すら知らなかったかもしれません。テレビにおいて「出演者の名前の隣に年齢を書くのは失礼だ」という声も、まったく知らずに生活していたと思います。

 一方でSNSには、自分がフォローした、いわば偏った側の意見しか目にしにくい側面もあります。自分が好む論調や、波長が合う意見ばかりがタイムラインに現れてくる。だから、それらを鵜呑みにするのではなく、反対側の意見にも触れて自分で考えて、感性を磨いてアップデートしていく必要があります。

 いま自分が関わっている番組で「これはよくない表現なんじゃないか?」「傷つく人がいるんじゃないか?」と思うようなことに気がつけたときは、きちんと発言して、止められる時は止めるようにしています。

「差別意識」を根本から変えていく

 でも、偉い人が「これで行く」と決めたら、正直、そのまま進んでしまうことも。結局は最終決定権をもつ偉い人の価値観で決まるので、その人がアップデートされていなければそのまま流れて、時には炎上してしまう。

 僕も、過去には容姿をいじって笑いをとってみたり、パワハラ的な構図の企画を実行したことがあります。ルックスの美しさに基づくランキングや、「〇〇女子」という企画も考えました。でも、やってはいけないことでした。

「ずっとそうだったから」「深夜の番組だから」「劇場ライブだから」ということではありません。「炎上するから控える」のではなく、根本から自分の意識を変えていかないといけないのだと痛感しています。

 もちろん差別やハラスメントは社会に生活するすべての人々に関わることですが、特にクリエイターにとっては、多様性を認めて様々な人に気配りができるか、旧来の価値観から更新した状態で仕事ができるかどうかが、今後のキャリアを決めると思っています。

 これはNG、これはOKと、誰かが明確にルールを制定しなければ理解できない、受け身ではダメなんです。

(白武 ときお)

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