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【読書感想】御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学

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 「その後」を知っている後世の人間からすれば、「いつまでもフィルムカメラにこだわっていたコダックは、先見の明がなかった」と言い切ってしまえるのですが、デジカメが普及しはじめた当時は、画素が荒く、パソコンがないと写真を管理しづらいなど、便利ではあるけれど、ここまで普及するかどうかは不透明だったのです。

 そのデジカメも、いまや、写真や動画しか録れない専用機は、スマートフォンの高機能カメラに駆逐されつつあります。

 思えば、いまから25年前、四半世紀前は、フィルムカメラで写真を撮るのが当たり前だったんですよね。

 富士フィルムも、中途半端にデジカメに移行するだけだったら、今まで生き残ってこられなかったかもしれません。

 こういうのは、後世からみたら、「正解・不正解」は明白なのだけれど、リアルタイムでは「変えてはいけないものを変えてしまう」とか、「変えたのは良いのだけれど、方向性が間違っていた」なんてこともよくあるのです。

 運の要素も多々あるのではないか、とは思うのですが、ひとつ言えることは、「自分たちが『こうであってほしい』という願望が、未来への判断を狂わせる」ということなのです。

 著者は、多くの新規事業を始めようとする企業が「1階建て組織」であることを指摘しています。
 そして、新規事業をうまくすすめていくには、コアビジネスと新規事業、そしてイノベーションを分離した「3階建て組織」にすることが必要だと述べているのです。

 詳細に関しては、この本をぜひ読んでいただきたいのですが、新規事業と既存の「いまの米櫃」である事業を同じ基準で評価すると、新規事業は評価されづらく、やりがいを失ってしまう、ということだと僕は読みました。

「イノベーションの仕事を既存の事業と分離して組織しなければならない」

 経営学の父P・F・ドラッカーは、1964年に書かれた『イノベーションと企業家精神(ダイヤモンド社)のなかでこのように語っている。イノベーションの仕事と既存事業とをしっかりと分けないと、つまり、「1階建て組織」のまま新規事業をやろうとすると、組織内にハレーションが生まれる──そのことをドラッカーは50年以上前に見抜いていたのである。

 では、「組織を分離する」とはどういうことだろうか?「1階建て組織」においては、新規事業はどこかの事業部内の片隅につくられることが多かった。他方で、3階建て組織では新しいビジネスを生み出す機能を完全に独立させ、既存事業部からは切り離してしまう。

 しかし、部署を分けるだけでは、組織の分離は十分ではない。「1階建て組織」のもう1つの問題は、PL(損益計算書)しか評価基準がないことだった。この点を改めない限り、いくら部署を分離したとおろで、新しいビジネス担当者には「あいつはおれたちよりも稼いでいない」というお馴染みの評価が下されることになるだろう。

 したがって、部署を分けること以上に重要なのは、KPI(重要業績評価指標)を分けることである。それぞれの「階」に独自のKPIを設け、それに応じて人・組織を評価するようにするのだ。

 僕は漠然と、わざわざ「分離」するよりも、新規事業部と既存の事業部がコミュニケーションをとりながら協力してやっていったほうが良いのではないか、と思っていました。
 でも、人間というのは、なにかと比較したがるものであり、目標が違うのであれば、評価の基準をそれぞれ別にしないと、どうしても軋轢が生じるみたいです。

 新事業を立ち上げている人にとっては、既存の部署から、「あいつらは稼いでいない」と言われるのは苦痛ですよね。もともと「そう簡単には稼げない環境」に置かれているのだから。

 起業とか新規事業に関わっている人、あるいは、自分の会社に新規事業部がある人などは、一度は読んでみることをおすすめします。
 大きな組織や企業だから活かせるはずの人材や技術を、大きな組織であるがゆえにうまく利用できないのは、あまりにも勿体ないので。

起業の科学
作者:田所 雅之
発売日: 2017/11/07
メディア: Kindle版



図解・最新 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!
作者:山崎元,大橋弘祐
発売日: 2017/11/29
メディア: Kindle版



しょぼい起業で生きていく
作者:えらいてんちょう
発売日: 2019/01/11
メディア: Kindle版

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