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【読書感想】御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学

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御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学 (光文社新書)
作者:田所 雅之
発売日: 2020/02/18
メディア: 新書



Kindle版もあります。

御社の新規事業はなぜ失敗するのか?~企業発イノベーションの科学~ (光文社新書)
作者:田所 雅之
発売日: 2020/02/28
メディア: Kindle版

内容紹介

「3階建て組織」の実装で日本企業は生まれ変わる! ベストセラー『起業の科学』著者が大企業に舞台を移して、イノベーションを科学する。

外部環境が激しく変わり、プロダクトやサービスのライフサイクルがどんどん短命になる現代において、「うちの会社には新規事業は必要ない」と断言できる人は、よっぽど環境が恵まれているか、変化に非常に鈍感かのどちらかだ。

少なくとも、本書を見つけた人であれば、新たなビジネスを生み出すことの重要性は、すでに感じているのだろう。それなのに、なかなか一歩を踏み出せない。いざ踏み出すとなっても、及び腰になる――

なぜ新規事業には、ネガティブなイメージがつきまとっているのだろうか? そして、なぜ実際、たいていの新規事業はうまくいかないのだろうか。このような現状を変える方法を本書では明らかにしたい。

結論を先に言ってしまえば、「3階建て組織」を実装できるかだ。

 「イノベーション」という言葉はしばしば耳にするけれど、「そういうこと」ができるのは、スティーブ・ジョブズとかジェフ・ベゾスのような、ひとにぎりの天才みたいな人だけではなかろうか。

 にもかかわらず、世の中には「イノベーション」という言葉が溢れていて、意味もわからずに、これを連呼している人も多いのです。

 著者は、『起業の科学 スタートアップサイエンス』を上梓している、起業についてのスペシャリストなのですが、この本では「すでに安定した事業を持っている企業で、新規事業をうまく立ち上げていくにはどうすればいいのか?」を検討しています。

 僕自身は起業家でも会社員でもないのですが、組織のなかで、閉塞を感じている人、あるいは、将来への漠然とした危機感はあるのだけれど、その正体がわからない、という人にはおすすめです。

 著者は、冒頭で、安定期の企業において、「新規事業」に配属された人が、しばしば、「何をやっていいのかわからない」と困惑したり、社内の主力事業で稼いでいる人たちから白眼視されている現実を紹介しています。

 すでに大きな企業であれば、資金的にも人材的にも、新しいことをやる「余裕」はあるはずなのに、実際は、これまでの社内での技術や経験を活かして、新しい事業を起こそうとすると「それはわが社の『本業』と競合してしまうから」という理由で、却下されることもあるのです。

 成功体験や、すでにうまくいっているものを捨てる、あるいは、フラットに考えるというのは、本当に難しい。

 安定した事業やブランドを築いている企業ほど、新規事業にかけるリソースが相対的に低く見られる傾向がある。しかし、ここでいう「安定」もいつまで続くかは、保証されていない。新たな事業やサービスを生み出さなければいけないと感じている企業が増えている。

 ここで改めて強調したいことは、イノベーションとは「目的」ではなく、「手段」であるということだ。現状の世界があり、それを自分たちが思い描くあるべき姿(ビジョン)に変えていく。その手段として、「イノベーション」が存在する。 つまり、「あるべき姿」(=目的)が思い描けていないと、いつの間にか手段が目的化していしまい、結局、推進力のない活動に陥ってしまう。

 著者は、(写真の)フィルムメーカーのコダックと富士フィルムを例にあげています。
 長年、フィルムメーカーのトップブランドとして、圧倒的なシェアを誇っていたコダックは、フィルムカメラで優位だったがゆえに、デジタルカメラを過小評価してしまい、時代に乗り遅れてしまったのです。

 この本によると、コダックは、デジタルカメラを最初に開発していたにもかかわらず、デジタルカメラが普及するとフィルムが売れなくなるから、という理由で、デジタルカメラを製造することはありませんでした(のちに他メーカー製品をOEMで供給)。

 それに対して、富士フィルムは、長年、フィルムメーカーとしては、コダックに差をつけられた二番手だったのですが、デジタル化という時代の変化に対して、大きな決断をし、事業を変えていったのです。

「富士フィルムがコダックと熾烈な競争を繰り広げていた頃、デジタル化に伴う写真業界の急激な環境変化が起きた」

 同社会長の古森重隆氏は当時を回顧して、こう語っている。富士フィルムは写真フィルム市場では1位のコダックにシェアで離される「万年2番手」の位置にあった。デジカメ出現以前にも「写ルンです」などの使い捨てカメラで世間に大きなインパクトを与えていたものの、それでも市場シェアは11%程度。いかに当時のコダックが強かったかがわかる。

 しかし、彼らはデジタル化の波を等閑視したりはしなかった。2004年、古森氏は写真フィルム事業から撤退し、フィルム技術を応用した各種事業への「多角化ピボット」を決断する。この転換は「写真フィルムが売れなくなったので、ちょっと違うマーケットにも手を広げよう」というような生半可なものではなかった。同社のロゴ変更にもその覚悟が見て取れる。彼らは写真フィルムの箱をモチーフにしたお馴染みのマークを削除し、自分たちの過去を築いてきたアイデンティティを脱ぎ捨てたのである。

 無謀とも言われかねないこの決断をなしえたのは、古森氏に「Future Market」をつくる覚悟があったからだろう。彼の言葉を借りるなら、「自分たちがイノベーションをやらなければ、いずれ他社がやる。ならば、やるしかない」というわけだ。当時起きていたフィルム市場の変化は、トヨタにとっての自動車がなくなるとか、新日鐵にとっての鉄がなくなるようなインパクトを持っていた。

だからこそ、古森氏は過去の延長線上にはない「まったく別のロードマップ」を構想してみせた。化粧品・食品・医薬品など、まったく別の分野にフィルム技術を転用し、「予防~診断~治療のトータル・ヘルスケア・カンパニーを目指す」と宣言したのである。こうして、富士フィルムは事業の多角化によって右肩上がりで業績を伸ばし、2000年から2007年のあいだで見ると、連結売上はほぼ倍増している。

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