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自宅にいながらママと乾杯!未経験者も呼び込む「オンラインスナック横丁」の魅力【止まり木の盛り場学 第8回】

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「アイマイさ」がカギ? オンラインでも感じられた心地よさ

久しぶりに取材後の総括ミーティングを行うチーム・40男。ミーティングなのに嬉しそう。

渡辺 泥酔した翌朝、おにぎりを持たせてくれたママさんのエピソードが印象に残りました。最近の私たちって、どこまで他人に優しくしていいものか、迷いますよね。優しさの距離感。押しつけになる怖さ。だからゼロ距離で接してきてくれるママさんの優しさが身に沁みる。これまでは、地域・会社・家族・夫婦・同性異性との関係の中で、慰め合ったり励まし合ったりしてきたけど、現代はこれらがめまぐるしく変化しているから戸惑いますよね。心と心の距離が「近い」こと、あるいは「遠い」ことではなく、「距離の変化」そのものに疲れている。

横田 なるほど。私は、200以上も申請が来る中で、出店者をどう決めるか。ルール化して機械的に決めるのではなく、最終的には五十嵐さんがオンラインで「面接」して決めている、というのが印象的でした。ふと思い出したことがあります。

戦後以来の、小料理屋やスナックばかりの飲み屋横丁で、責任者のママに話を聞いたときのことです。駅近なので出店希望者は多く、やはりそこでもママ達が「人相を見る」というか、人物を見て決めていると言っていました。

スナックと言っても料理で勝負するのか、話芸やママのキャラでいくのか、お色気を前に出すのか、希望者に実際に会ってみなければ分からないからと。

入ってみないとどんな店かわからないというのも、スナックの面白さ。

「スナック」は厳密に業態や法の枠組みで定義づけるのは難しい。風営法の中でやる店もあるし、深夜酒類営業だけとってやるところもあるし幅が広いものです。悪く言えばアイマイ、よく言えばものすごく広い業態やスタンスを包含している。

飲み屋街は、いったん方向の合わない店を入れると、すぐに雰囲気が変わってしまう、一店舗空いたからと適当に店を入れると客層が替わったり減ってしまうと、半世紀以上飲み屋横丁を守っていたママは言っていました。

空き物件も不動産市場に出ないことがあるんですね。ママたちが出さない。紹介などでないと一般人は物件情報にアクセスすることすらできない。

つまり、あまりいい言い方ではありませんが、結構、「閉鎖的でムラ的」なんです。でも悪い意味でもありません。このことで個人経営店が並んでいるだけにすぎないはずの飲食店通りが、「横丁」となり、我々が喜ぶ「昭和情緒」みたいな一定の景観や気分が醸され、守られてきたんですから。

オンライン横丁でも同じ選別を五十嵐さんがしている。ときには、極めてキャバクラに近いスタンスのスナックが応募してくることもあるようですね。ニーズもあるし、世にそのスタンスがあってもちろんいいと思いますが、「オンラインスナック横丁」の場合は、ママのキャラクターでしっとり飲める店を選んでいることに特徴がありますね。

ITを駆使しながら、昭和の横丁のシステムも組み合わせている面白さ。スナック横丁を謳いながら「女性客の方が多くなった」のは、そのあたりに理由があると思います。スナックの未来を感じました。

渡辺 「アイマイさ」について、私も考えていました。スナックに通いたての頃は、メニューがないことに最初は戸惑いを覚えましたが、かえって今は気持ちいい。任せておいて安心して飲める。「ワンセットいくら」がベースにあっても、実際はこちらの財布事情にもあわせてくれたり。スナックは常に同質・同量の飲食、関係性を期待する場所ではないというか。でも、オンライン化するためには、どうしても時間やサービスなど明朗化しなければならない。その点、オンラインスナック横丁さんもメニュー化されていました。だからこそ敷居が下がって、未経験の人や、女性の利用者を惹きつけている。他の飲食店にはない、定量化できないスナックの魅力を、今後どのように伝えていくのか楽しみです。

横田 システムのアイマイさ、五十嵐さんの言う「トビラを開けてみないと分からないミステリアスな魅力」、業態の多様さ、通底しているものがありますね。

渡辺 こんなスナック話ばかりしてると、行って歌いたくなりますね。そういえば五十嵐さんもスナックではカラオケやるって行ってましたね。ちあきなおみとかお好きだと。

横田 言ってましたねー。近々、私の歌う「喝采」もぜひお聞きください。

渡辺 後日、オンラインでまずは私に申請してください。

こうして40男2人は微妙な距離を保ちつつ、夜のとばりに消えていった。

◇取材協力
日本茶屋ハトハ 日本橋
https://tea-hatoha.com/pages/real-store

プロフィール
渡辺豪(わたなべ ごう):「カストリ出版」代表、「カストリ書房」店主、遊廓家。IT企業でデザイナーなどを務めた後、2015年に遊廓に関する書籍を発行する「カストリ出版」を設立。2016年には遊廓、色町、盛り場等の出版物を中心に扱う書店「カストリ書房」をオープン。
カストリ書房 東京都台東区千束4-39-3
・Twitter:@yuukakubu

フリート横田(ふりーと よこた):文筆家、路地徘徊家。編集集団「株式会社フリート」代表取締役。戦後~高度成長期の路地、酒場、古老の昔話を求めて徘徊。昭和や酒場にまつわるコラムや連載記事を執筆。テレビ朝日「モーニングショー」にて昭和の魅力を伝えるコーナーに出演中。著書に『東京ノスタルジック百景』『東京ヤミ市酒場』『昭和トワイライト百景』など。今年、新刊上梓予定。
・YouTubeチャンネル:路地裏の泥酔者
・Twitter:@fleetyokota

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