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あおり運転しか生きがいがない56歳男性の怒りのトリガー

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「俺は邪魔するやつに注意をしてやってるだけ」

50歳を目前にして何度目かの退院後、久しぶりの職場で「ヒモの旦那」という陰口を聞いてしまった。そんな日に限って、空は青く澄み渡っている。見通しのいい交差点で、対向車と林さんが接触事故を起こしたのは、その1時間後のことだった。

「前の軽自動車が車線変更を繰り返しながら走っていて、イラついていたのは確かです。しかも、運転していたのは女を連れた若い兄ちゃん。調子に乗って運転しているとわかり、右折時に追い詰めたら対向車と事故ってしまったんですよ」

運よく大事故に至らなかったとはいえ、林さんはこの事故以降、怒りに身を任せると破壊的な行動をとってしまうようになる。妻から精神科に行くことを勧められ、医師からは「冷静さを取り戻すための習慣を見つけるべき」とアドバイスを受けるも、本人には感情に振り回されているという自覚がない。この頃から、粗暴な運転を周囲から指摘されるようになったという。

「危ないことなんてしていないのに、運転中に助手席の妻が『危ない!』と叫ぶんです。アイツはわかっていないんですよ。俺は邪魔するやつに注意をしてやってるだけ」

孤独の毎日でハンドルを握ることだけが生きがい

55歳を過ぎ、妻のおかげで住宅ローンも完済した。林さんは自身の給与をそのまま小遣いとして使える生活を送っており、何ら問題はないように見える。しかし、不本意ながら主夫めいた生活を送る林さんのプライドは、傷ついていた。

「ストレス発散のため、ずっと狙っていたSUVを買いました。といっても、名義は妻ですが。それでも、ハンドルを握っている間はすべて自分でコントロールできる。これが唯一の癒やしです」

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馬力の高い新車を手に入れた林さんは、運転技術で圧倒的優位に立てる道路の上で傍若無人な態度をとり続ける。相手が弱いとみるや威圧的な態度をとる林さんだが、高級車や黒塗りの車にはおとなしく道を譲り、決してちょっかいを出さないという。

「前に、あおり運転をやり返されて、車を停めたら、中からチンピラ風の男が出てきた。『ジジイ、てめぇ殺すぞ』と凄まれて、土下座して許しを得たこともありました」

自分より弱いとみれば攻撃的になり、強いものには屈する。そんな林さんの左側に座る者はいない。

「入院先で出会った病室仲間の最後の生き残りが、先週亡くなりました。独立した2人の子どもは家に寄りつかず、妻からは無視されています。孤独だけど、ハンドルを握っているときだけは、まだこの世にいるんだと実感できるんです」

深い悲しみと孤独感は同情に値するが、身勝手で危険なあおり運転は許される行為ではない。これも心の貧困からくるものなのか。

(週刊SPA!取材班)

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