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政治主導でリニア新幹線のAルートへの変更と首都移転の実現を目指せ

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JR東海によるリニア中央新幹線建設工事が静岡県の反対により頓挫している。リニア中央新幹線の東京(品川)―名古屋間の建設ルートは、静岡県の最北部にある南アルプスの真下をトンネルで抜ける予定になっている。これに対し静岡県の川勝知事は、トンネル工事により真上に上流がある大井川の水量が減少する危険性がありこれが解消されない限り工事の着工は認めないとして、2027年の開業を目指すJR東海と対立している。

私は、以下に述べるように静岡県がJR東海に対して敵意を持つのは仕方がないと考えている。両社の溝は簡単に埋まるものではないので、この際、(リニア)中央新幹線のルートをJR東海が予定しているCルートからAルートへ変更することを提案したい。合わせて、Aルートを採用した場合に新幹線が停車すると想定されている長野県塩尻市に首都を移転することを長期的計画として提案したい。東京と名古屋をできるだけ直線で結ぶことしか頭になく沿線地域の発展を無視する計画にはもはや妥当性が無く、沿線の経済を発展させることで収益性を上げる計画に切り替えるべきだというのが私の主張である。

同じ政令市でもこんなに停車本数が違う静岡・浜松と岡山

静岡県が工事着工許可を出さない表向きの理由は水問題だが、実際は県内の二つの政令指定都市である静岡市と浜松市にのぞみを停車させることと、富士山静岡空港の真下を通る東海道新幹線に停車駅を作ってほしいという静岡県の長年にわたる二つの要望にJR東海が全く答えないことに対する報復措置だという見方が強い。静岡県にしてみれば、JR東海のせいで県の経済発展が阻害されている気持ちが強いのに、そのうえ水源地帯にトンネルだけ掘られて大井川に悪影響がもたらされるかもしれないならば怒るのも無理はない。

ここで、単体営業収益の約9割を東海道新幹線からの収入が占めるなどJR東海の収益は東海道新幹線に決定的に依存しており、しかも東海道新幹線のダイヤは最速達列車であるのぞみ中心のものとなっている。のぞみの運転本数は日中一時間に5-6本であるのに、ひかりは一時間1本、こだまは2本にとどまる。

のぞみは、東京―新大阪間は品川駅、新横浜駅、名古屋駅、京都駅しか途中停車しないので、静岡・浜松両駅はほとんどの時間帯でひかりが一時間1本、こだまが2本の一時間合計3本しか停車しない。同じ政令市で市域人口も同レベル(約70万)の岡山市の中心駅である岡山駅(JR西日本)は日中一時間5-6本(東京行のぞみが一時間に3-4本、東京行のひかりが1本、新大阪行きのさくらが一時間1-2本)と約2倍の停車本数で、朝夕にはさらに停車本数が増えるので静岡・浜松両駅との差がもっと広がる。

のぞみが停車しないことは明らかに静岡・浜松両市の経済発展を妨げているにもかかわらず、JR東海は東京―名古屋―大阪間を最短時間で結ぶことこそが自社の収益の最大化につながると考えており、のぞみの静岡・浜松停車に応じる気配はない。

私は、そもそもリニアモーターカー方式での中央新幹線建設に異議を述べてきたし、沿線地域の経済発展を無視して巨大ターミナル間を最短で結ぶことで利益を最大化させようというJR東海の企業姿勢に大いに疑問を感じている。JR東海の企業姿勢は国鉄民営化の副産物といえる。東海道新幹線という金の生る木が与えられたことにより、JR東海にはこれまで黙っていても莫大な営業利益が舞い込んできた一方、JR北海道は所有路線の多くが赤字ローカル線でさらに除雪作業に多大な費用が掛かるという大変なハンディを背負わされきた。

それゆえ、私はそもそもの国鉄分割の方法は間違っていたと考え、地域分割は再編成されるべきで、中央政府がそれに対してイニシアチブを発揮すべきだと思っている(そもそも公共性が高い交通サービスの独占的供給者が上場していること自体問題がある)。

代替ルートとして最適なのはAルート

しかし、今回はそういったJRの本質的な問題点は別に置いて、リニアは最低限ルート変更が必要であり、中央リニア新幹線は今からでも間に合うならば既存のフル規格の新幹線で建設を行う方が合理的だと提案したい。

リニアのルートに関しては、山梨県の甲府市近辺(中央市)から岐阜県の中津川市近辺の部分まで3つのルート案が存在し、長野県塩尻市を通り中央本線を並行して走るAルート案、Aルートの途中の長野県の茅野市近辺から南下し飯田線に並行して長野県飯田市を通ったのちに岐阜県中津川市に行きつくBルート案、甲府市近辺から南アルプスの真下を直進し長野県飯田市の到着した後Bルートと同じルートをたどるCルート案がある。

巨大ターミナル間を最短で結ぶことしか頭にないJR東海は当然Cルートを選択したのだが、この実現が静岡県の反対で実現しにくくなっていることから、他のルートでの建設がささやかれ始めている

私は本稿冒頭で述べた通りAルートへの変更を強く提案する。現行のCルートでの建設が無理だとすると考えられるのは、①Cルートにできるだけ近い形にして静岡県を通らないように北岳周辺にトンネル建設場所を移して、山梨県駅(同県中央市周辺)と長野県飯田市周辺の(JR東海が現状仮称している)長野県駅を結ぶ新たなルート、②Bルート、③Aルートの3つが考えられよう。

①に関しては、山梨県駅と長野県駅を、長野県を通らずに結ぶとなるとこの間の路線のカーブを相当きついものにしなければならない。それを避けるためには長野県駅をさらに北部に移す必要があるが、それではこの地域の中心駅である飯田駅からあまりに遠くなり、(ただでさえCルートに反対していた)長野県および飯田市からの強い反発が予想される。

次に当初長野県が要望していたBルートだが、これを採用するとなると長野県茅野市付近と長野県飯田市において、合計2回急なカーブを採用することが必要になる。しかしながら、茅野市の人口が5万強、飯田市の人口が10万弱と少なく、さらに茅野駅から県南部最大都市の松本市(人口25万弱)の中心駅である松本駅から各駅で45分前後、特急でも30分かかる。駅建設が想定される地域の人口規模を考えると、ABC3つの案の中で最も時間と建設費がかかるこの案が経済的合理性を有するかは疑問が持たれるところである。

さて、最後にAルート案である。この案は建設費用・所要時間共にBルートとCルートの中間的存在となっている。私は長野県南部の交通の要衝である塩尻駅に新幹線を停車させるべきだと考えているが、この駅が素晴らしいのは松本駅まではノンストップだと9分、各駅停車でも16分、茅野駅までも各駅停車で30分以内という利便の良さである。さらに塩尻駅から高山・白川郷へバスを走らせれば東京からこの地域への日帰り旅行も十分可能になる。

長野県塩尻市への首都移転で中央新幹線は東海道新幹線をしのぐ大動脈になる

これだけでも十分Aルートがベストであるという根拠があるが、私には上述のように塩尻市への首都移転という大きな提案がある。これは将来的な話であり、実際の首都移転は(リニア)中央新幹線の開業時期や財源を考えると2050年代以降が妥当かもしれない。私は、かつて長野県の諏訪湖近辺に国会を移転することが何回か提案されたことを記憶しているが、これを一歩推し進め近隣の塩尻市に行政府首都機能を移すのである(国会に関しては諏訪湖周辺に移すことも選択肢である)。

なぜ塩尻市かというと、塩尻市は松本盆地の南部に位置しており平地が多く塩尻駅が上述のように交通の要所であるにもかかわらず、駅からそう多くない場所にまとまった田畑が多数存在し用地買収が比較的容易だと思われるからである。首都移転に関しては、韓国の世宗市にようにまず行政官庁だけを移転するというのも一つの方法で、次に国会、さらに皇居の移転と順番に進めることが合理的かもしれない(なお、皇居に関しては必ずしも行政首都と同じ場所にある必要はないだろう)。首都空港に関しては至近距離にある松本空港の機能が貧弱なことが最大のネックだが、解消策として①同空港の拡張、②近隣への移設、③(リニア)新幹線の分岐支線を作るとして羽田空港や中部国際空港を利用する方法がある。

以上のように、Aルートにして合わせて塩尻市への首都移転を進め、東京、新首都、名古屋、大阪が中央新幹線を通して結ばれれば、中央新幹線は東海道新幹線をしのぐ日本の新たな大動脈になるだろう。新首都建設費用を考えずに中央新幹線だけの収益を考えれば、Aルートが最も高くなるのは当然であり、さらにリニアで作ってもフル規格新幹線で作っても、Cルートとの時間差が10分以内であればAルートの優位性は明らかだ。なお、私は首都移転と同時に連邦制をイメージした道州制の導入を提案したく、その場合、アメリカのワシントンDC、ブラジルのブラジリア、オーストラリアのキャンベラのように、新首都は中央(連邦)政府の直轄区となるのが妥当である。これまで東京にある中央政府に集中していた権限を州政府に大胆に移管することやオンライン手続きを推進することと、スリムな行政首都を建設することで東京への一極集中を終焉させる効果があるだろう。

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