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「トランプ政権コロナ禍失政」が大統領選最大争点に浮上 - 斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

全国党大会でジョー・バイデン、カマラ・ハリス両氏を正式に正副大統領候補に指名した民主党は今後、11月3日の投票日に向け、アメリカをコロナ禍で「世界最悪事態」に至らしめたトランプ大統領の「個人的失政」を最大争点に有権者にアピールしていくことになった。


(Joaquin Corbalan/gettyimages)

過去1カ月、トランプ政権のコロナ禍対応についての国民評価は、急速に低下しつつある。

去る7月26日、AP通信-NORCリサーチセンターの合同世論調査結果によると、有権者10人中、実に8人が「トランプ大統領のコロナ政策は間違っている」と回答、逆に支持率は32%と最低水準になった。

また、同月31日、ABCテレビ-Ipsosが行ったコロナ対応調査でも、同大統領に対する支持率は36%にとどまった。共和党員の間でも、26%が大統領の「コロナ失政」を認めている。

最新の8月15日発表のワシントン・ポスト・ABCニュース調査でも、コロナ問題の大統領支持率は38%だった。

こうしたことから、民主党陣営では、11月大統領選挙に向け、「コロナ失政」が大統領再選を阻むための最大攻撃材料になるとみて、今後、バイデン、ハリス両候補の選挙演説、TV・ネット広告などを通じ、有権者に幅広く訴えていくことになった。

その先駆けとなった民主党全国大会では初日の17日、ミシェル・オバマ前大統領夫人が登壇、オンライン演説で「ドナルド・トランプはわが国にとって最も間違った大統領だ。コロナ危機収拾の仕事のために十分すぎる時間があるのに、明らかにさじを投げだしている。私たちが今必要とする人物ではない」と語気鋭く批判した。

続いてグレッチェン・ホイットマー・ミシガン州知事は「トランプは戦う相手を取り違えている。国民の命を奪い、私たちの経済を疲弊させているコロナウイルスではなく、私たち国民を攻撃対象にしている」と牙をむいた。

アンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事も、病気の「兆候 symptom」と「罹患 illness」との明確な違いに言及した上で「コロナウイルスそれ自体は隠喩的意味合いを持った存在metaphorに過ぎない。我々は体が弱っている時に防衛することができず罹患してしまう。トランプは国として戦う体制を弱体化させたことで、わが国を危機的状況に追い込んだ」などと、同州におけるコロナ感染拡大との戦いの経験を交えながらトランプ失政ぶりを巧みに攻撃して見せた。

党大会3日目には、カマラ・ハリス上院議員が副大統領正式指名受諾演説を行った中でコロナ禍失政問題に言及「互いに助け合い、チャレンジに立ち向かい、勝利をともに祝福し合うはずのわがアメリカは、はるかかなたにかすんだ存在になってしまっている。ドナルド・トランプのリーダーシップ破綻により、多くの国民の命と生活が奪われてしまった」などと非難した。

そして最終日の20日には、バイデン候補が正式に民主党大統領候補に指名された後、最大のハイライトとなる受諾演説を行い、コロナ禍とトランプ政権の関係について、次のように述べた:

「現大統領は国家に対する最も基本的義務を果たすのに失敗した。すなわち、私たちを守ることを怠り、わがアメリカを守ることに失敗した。これは、許しがたいことだ。日本、カナダなど世界を見渡しても、コロナ禍がアメリカほどひどい国はない。しかし、トランプ大統領は私たちに『ウイルスは消滅する』と言い続けている。彼に言っておきたい。いかなるミラクルもすぐにはやってこない……私が大統領として最初にやるべきことは、コロナウイルスを抑え込むことだ。そうしなければ、経済回復も、学校再開も、患者を生命の危険から救い出すこともできない」

こうした民主党による対トランプ攻撃作戦の背景には、世界でも突出した感染者、死者そして失業者を生み出すきっかけとなった「アメリカのコロナ惨事」(ニューヨーク・タイムズ紙)について、国民の大半がトランプ政権の責任を問題視していることが挙げられる。

この点で、民主党大会直前の8月6日、米下院特別調査委員会が公表した「指導力の破綻:コロナパンデミックに対するトランプ政権の惨憺たる対応」と題する報告書は、各方面に大きな話題を投げかけた。

同報告書は以下のように厳しく指弾した:

  1. トランプ大統領はパンデミックのあらゆる側面において国民をミスリードしてきた。

  2. 大統領はコロナウイルス感染がアメリカに拡大しつつあったいくつもの兆候を無視し、その後も何か月にわたり危機を軽視し続けてきた。

  3. 大統領による(コロナ感染拡大に関する)恐るべき否定、曲解、遅延こそが、国家危機に対する史上最悪の連邦政府対応につながった。

  4. 何万人もの死者、何千万人もの失業者、国家的対応上の大規模な混乱は、大統領のこのような行動に責任がある。

  5. 大統領は「国防生産法」を運用し、全米50州間の統合されたコロナ禍対応を陣頭指揮すべきだったが、深刻な事態に目をそむき続け、全国的感染者検査体制の整備、学校再開のための安全基準策定などを怠った。

  6. 米国民はコロナ危機収拾のために大統領と政権のリーダーシップを祈る気持ちで求めていたが、大統領は今なお、事態悪化を放置し、国民の生命をギャンブルの対象とし、国家的大混乱を引き起こしている。

これに対し、ホワイトハウスは去る10日、報告書内容に反論する「ファクト・シート」を早速発表、①大統領は中国からの旅行制限をいち早く打ち出した②世界でも有数のコロナウイルス検査システムを構築した③感染クラスター発生地域にはその都度、必要な医療器具を提供した④国民の職場復帰の道を切り開いた―などの点を列記した。しかし、いずれの点も、具体的裏付けを欠いていることは明らかであり、マスメディアの多くも冷ややかに受け止めている。

いずれにしても、11月3日の投票日が刻々と迫る中、ホワイトハウスが下院報告書に「トランプ大統領名」でいち早く反論したこと自体、コロナ危機をきっかけに有権者の離反がこれ以上、広がることにいかに神経をとがらせているかを示したものだ。

TVコマーシャルをめぐる論争

一方、コロナ対応についての両陣営の攻防は、TVコマーシャルをめぐる論争にまで発展している。

民主党側の大口政治献金団体で知られる「Priorities USA Action」はこのほど、トランプ大統領とバイデン候補のコロナ対応の違いを浮き彫りにしたTVコマーシャルを発注、前回に続き今回大統領選でも勝敗を決するカギとなるペンシルバニア、ミシガン、ウイスコンシン、フロリダの4つの接戦州で流し始めた。

コンテンツは2パーツからなり、前半ではトランプ氏が「コロナパンデミックはでっち上げ」「中国人1人が細菌を持ち込んだが、われわれはすべてをコントロール下に置いている」「感染者が15人出ているが、数日間でゼロになる」などと実際に語った時の画像とともに、同一画面上で、猛烈な勢いで増え続ける感染者の数字を連続的に示したもので、最後は「自分は何ら責任をとらない」と大統領が記者団の質問に答えたシーンで終わっている。

そして後半部分では、バイデン候補が登場「これだけは皆さんにお約束する:私が大統領になったら、より良い準備とより良い対応策をとり、しかも科学に基づいた善後策を講じる」などとする発言シーンをちりばめており、両者のコントラストぶりを浮き立たせる効果的なものとなっている。

これに対し、トランプ再選委員会側はただちに、「内容は事実を歪曲しており、虚偽、欺瞞に満ちている」として、当該4州の各地方TV局に「放映一時差し止め」請求を行った。

しかし結果的に、同コマーシャルはその後も、引き続き放映された。

このほか、民主党全国委員会(DNC)ウイスコンシン支部では、本来、コロナ感染の全国的拡大がなければ、今年の民主党全国大会は同州ミルウォーキーで5万人以上の代議員、報道陣を全米から集めて大々的に開催され、州経済の景気浮揚にも大きな効果をもたらしたはずだとして、「結果的にオンラインによるバーチャル集会に終わり、多大な経済的損失につながった最終的責任は無為無策に終始したトランプ政権にある」との主張を展開している。同支部では今後、こうした庶民受けするわかりやすいメッセージを州全体の有権者向けにアピールしていくことにしているという。

なお、ニューヨーク・タイムズ紙集計によると、8月21日現在のアメリカにおけるコロナウイルス感染者総数は563万3400人以上、死者最低17万5000人超に達しており、8月20日1日だけの感染者も4万9000人超となった。「世界最悪状態」は依然続いており、早期収束のめどは立っていない。

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