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リクルート業者が学生の就活をダメにする(上)〜その収益構造の古さ

新卒学生の3年以内の離職率が四割近くに達していることが報告されたのは二年前。だが、現状においてもその状況は改善されていない。この原因については雇用情勢の不安定化、つまり受け入れ側が新卒社員を抱えきれないという脆弱性を備えていることや、新卒社員が豊かな環境で育ったために忍耐力がないことなどがあげられてきた。まあ、いずれもそれなりにその指摘は当てはまるのかもしれない。だが、これらとはちょっと別の側面から原因の一因を考えてみたい。それは就職活動を仲介するするリクルート業者(”リクルート””マイナビ”など)の存在だ。実は、かなり罪作りな存在ではないかと僕は考えている。では、これら業者はどんな罪を学生たち、そして日本社会に対して犯しているのだろう。実は、僕はこの手の業者でかつてライターとして仕事をしていた。それゆえ、今回は自戒の念をこめて考えてみたい。

就職仲介システムの合理化

リクルート業者の役割は就活において企業と学生の橋渡し役をすることにある。大学3年の後半ともなると学生たちは就活講座に出席し、そこでリクナビ、マイナビなどの就活サイトの利用方法についてのレクチャーを受ける。これらサイトを閲覧することで、学生は企業情報の詳細を閲覧収集可能となっているばかりでなく、就職のためのエントリーシート、そして就職面接対策などの周辺情報、さらには内定を受けた学生のための就職準備サイトまで用意されている。まさに至れり尽くせりといった感じなのだけれど。こうして学生たちは就活のためにインターネットに首っ引きという状態になっていく(実際、就職活動時期になって就職の必要に駆られて初めてパソコンやネットを本格的にいじるようになるといった学生は、信じられないかもしれないが、かなり多いのだ)。

リクルート業者はその活動の舞台をネットに移す以前(つまり僕がこの業界で仕事をやっていた90年代以前)、企業情報を紙媒体に印刷、つまり冊子で就活に該当する学生たちに配布していた。その中には履歴書やエントリーのためのはがきもバンドルされていた(おかげで学生たちは下宿に、ある日電話帳を数冊束ねたような数キロもある小包を受け取ることになったのだけれど)。 ネットの出現はこんな古典的なやり方を一掃し、膨大な就職情報を迅速かつ軽快に入手することを可能にした。合理化という点では長足の進歩を遂げたのだ。

旧態依然とした収益構造

だが、その一方で収益構造は全く変わっていない。リクルート業者の役割は前述したように企業と就活学生の媒介的な役割だが、その収益構造ゆえ、結局のところ「企業=クライアント重視の事業展開」を行っている点については変わりがない。

リクルート業者は企業=クライアントに対して、その企業の紹介を学生側に仲介することを提案する。契約が成立すれば、企業の広報から情報提供(事業の概要であるとか、社員のインタビューなど)を受け、これをリクルート業者が用意したライターと編集者が記事を作成し「就職ガイド」として学生に配布する。そして、こういった情報仲介をすることで企業から掲載料を徴収。これがリクルート業者側の取り分となる。

だが、あくまでも顧客=クライアントは企業。要するにリクルート業者は学生をダシにして企業から金を巻き上げているわけで、そこで展開される企業情報は必然的に企業=クライアントに阿った「提灯記事」とならざるを得ない。つまり絶対に企業に都合の悪いことを掲載することができない仕組みになっている。

情報に振り回される学生たち~リクルート業者は火事場泥棒?

当然ながら、これが就活学生たちの情報検索に困難を与えることになる。真に優良な企業であろうとブラック企業であろうと、同じような”美辞麗句”で飾られた記事=情報が羅列されるからだ。たとえば、コンテンツの中には「企業評論」と銘を打ち、しかもその記事のおしまいには「記者の目」といったコラムまで設けて、あたかも客観報道のような体裁を装うものもあるが、その実、曖昧模糊としてつかみどころのない情報となる。しかしながら学生たちにしてみればそれでも入手可能な唯一の情報源なので、結局これに頼らざるを得ない。

こういった買い手市場(買い手=企業、売り手=学生)的な立ち位置に基づいた情報が展開される中で、結局、学生たちは情報に振り回され、全くわけがわからず職に就く、あるいは職に就けない、あるいは職に就いたけれどもマッチしなかったという状況に陥っていく。新卒社員の四割近くが3年以内に離職する原因の一因として、こういった「リクルート業者が現状の収益構造で事業を展開するがゆえに、学生たちを混乱に陥れる」といった側面がないとはいえないだろう。言い換えれば、リクルート業者が行っている情報仲介の事業は「火事場泥棒」「ハイエナ」的な不健全なやり方といえないこともない。

実はリクルート業者も墓穴を掘っている?

こうやって若者を窮地に追いやっているリクルート業者の収益構造。だが、インターネット時代の「情報選択の多様化」、つまり「容易に広範囲な検索が可能で、そこから個人のニーズにあった情報を適切に取り出すことが可能となるインフラ整備の進行」といった情報化社会の進展からすれば、この構造はきわめて古いものではないだろうか。というのも事業展開の戦術的側面=事業の電子化こそ情報化最先端だが、その一方で戦略的側面=収益システムは旧態依然としたままなのだからだ。むしろ(というか、あたりまえだが)、こういった社会の流れの中で望まれるのは、真にベストな就活学生と企業のマッチングであり、それを仲介するのがリクルート業者の使命だろう。

リクルート業者がこういった企業=クライアント重視の収益構造を今後も続けていけば、その将来は暗い。学生たちを混乱に陥れ続けるだけでなく、いずれ業者自体が情報化の波の中にのまれてしまう可能性が高い。でも、なぜ?また、そうであるとするならばリクルート業者は今後どうあるべきなのだろうか?

後半ではこれらについてメディア論的側面から考えてみたい(続く)

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