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新型コロナウイルス感染症のワクチンについて

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 7月以降、新型コロナウイルスの感染が全国各地で続いています。その中で、やはり新型コロナウイルスワクチンについての期待をあちこちで伺います。現時点で、内閣官房および厚生労働省による資料(令和2年8月21日、新型コロナウイルス感染症対策分科会(第6回)資料3)を基に、新型コロナウイルスワクチンに関する現状について、橋本の私見として整理して記します。ぜひご参考にしてください。なお分科会がまとめられた「新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種に関する分科会の現時点での考え方」もぜひあわせてご参照ください。

1.ワクチンの開発状況について

 現時点(2020年8月下旬)において、主なもので、国内で5つのグループ、海外で6つのグループで開発が進められています。種類も不活性ワクチン、組み換えタンパク・ペプチドワクチン、DNAワクチン、mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチン等があり、それぞれに開発のスピードや実績等に差があります。

 進捗については、最も早いアストラゼネカ社とオックスフォード大で開発中のウイルスベクターワクチンで、イギリスにて第2/3相試験が開始しており、今夏にアメリカにて3万人規模で第3相試験を開始予定とされています。また国内においても、アンジェス社と阪大、タカラバイオ社で開発中のDNAワクチンが、既に第1/2相試験を開始しています。いずれのグループも2020年中から2021年までには臨床試験を開始することを目指しています。また供給についても、海外のグループを中心に2021年から数億人~10億人規模で開始されることを目指しています。

2.ワクチンの有効性と安全性、接種の判断について

 新たに開発されるワクチンの効果に関しては、臨床試験(治験)等で評価を行います。したがってその結果が判明するまでは確たることは言えません。また臨床試験等で評価できるのは、発症者を減少される「発症予防」と、重症患者(死亡・入院などを含む)を減少させる「重症化予防」の二つの効果です。これらは治験において、接種者と非接種者の経過を比較することで、効果を測定することができます。

一方、接触した人の感染を防ぐ「感染予防」の効果については、もともと実証しにくいところ、そもそも感染しても発症しない人が多いこのウイルスに関しては、効果があるともないとも判断が困難であり、実証はほぼ不可能と思われます。また、大勢に接種することで集団免疫をつくる効果(=摂取していない人まで波及する予防効果)も考えられますが、少なくとも大規模接種前に実証することはできません。

 ちなみにインフルエンザワクチンでは、一定の発症予防効果(研究により20~60%)や、重症化を予防する効果が示されていますが、集団免疫効果はこれまで実証されていません。

 現時点で、先行する4つのワクチンの論文では、まだ症例数が少ないため確定的なことは言えませんが、有効性については、一定の液性免疫(抗体)、細胞性免疫が誘導されていることは示されています。しかし誘導された免疫による発症予防効果や重症化予防効果の有無、免疫の持続期間についてはまだ評価されていません。また安全性については、接種後の局所部位反応の出現頻度が高いこと、重篤でない全身性の有害事象(倦怠感、不快感、筋肉痛、頭痛等)が高頻度(数十%以上)で発現することが報告されています。なおいずれも小児・妊婦・高齢者のデータが少なく、不明な点が多いです。

 一般的に、ワクチンの接種後には副反応が生じることはあり、これをなくすことは困難です。副反応には、比較的軽度だが頻度が高い副反応や、重篤だが極めてまれな副反応など、さまざまなものが含まれます。したがって、ワクチンの接種により得られる利益(有効性)と副反応などのリスク(安全性)の比較衡量により、接種の是非を判断する必要があります。

同じワクチンであっても、重症化や死亡リスクが高い人は、副反応リスクが多少あっても接種することが望ましいという判断が可能ですし、重症化や死亡リスクが極めて低ければ、接種しない方が望ましい場合もあります。したがって新型コロナウイルスワクチンの接種にあたっては、ワクチンの特性に加え、接種対象者の年齢や医学的背景などを踏まえた新型コロナウイルス感染によるリスクを勘案し、総合的に判断することが必要でしょう。

3.ワクチンの確保について

 現在厚生労働省をはじめ政府では、国内での新型コロナウイルスワクチン開発の基礎研究、薬事承認、生産、接種体制のすべての過程について迅速化の取り組みや支援を行いつつ、海外のワクチンの確保にも取り組み、できるだけ早くワクチンが多くの国民のみなさまに接種可能な状況をつくるよう、努めています。ただそうした努力をもってしても、大量のワクチンを供給するには生産開始後半年~1年程度かかり得ますし、順次の供給となります。

 海外のワクチン確保については、米国のファイザー社と、ワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに6000万人分のワクチンの供給を受けることで、7月31日に基本合意しました。また、イギリスのアストラゼネカ社とは、ワクチン開発に成功した場合、来年初頭から1億2000万回分の供給を受けることで合意しました。またアメリカのノババックス社および武田薬品工業が提携して日本国内でワクチン生産を予定していることが公表されています。さらに国内開発のワクチンもありますので、日本の人口と比しても相当な量のワクチン確保が期待できる状況ではあります。もちろん、ワクチン開発そのものが不首尾に終わる可能性も、依然頭に置いておかなければなりません。

 また、新型インフルエンザ予防接種については、「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」を平成21年に成立させました。今回の新型コロナウイルスワクチンに関しても救済措置が検討される必要があるものと思われます。

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