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橋下の方が現政権よりマシなことを言ったと思いきや

玄葉外相、台湾にラブコール 「理性的振る舞いに感銘」(朝日新聞)

 「台湾社会の成熟ぶりを示すもの」――。玄葉光一郎外相は5日、中国同様、尖閣諸島の領有権を主張する台湾の日本側窓口である交流協会のホームページにこうしたメッセージを載せた。中国で邦人被害や日系企業への襲撃が相次いだのに対し、台湾で目立った被害がないことへの謝意を示すことで、中台の連携を牽制(けんせい)する狙いもありそうだ。

 玄葉氏は「邦人の安全は外相の最大の関心事」とし、「台湾の人々の理性的かつ友好的な振る舞いに強い感銘を受ける」と強調。一方で、9月末に尖閣沖領海に台湾の漁船や巡視船約50隻が侵入したことを念頭に「緊張を高める事態が再発しないことを強く期待する」とした。外交関係のない台湾への呼びかけは異例だ。

 

 「台湾の人々の理性的かつ友好的な振る舞いに強い感銘を受ける」などと玄葉は語ったそうですが、それを言うなら韓国とかはどうだったのでしょうか? 韓国で邦人被害や日系企業への襲撃が相次いだという話は聞きません。韓国で目立った被害がないことにも、玄葉は謝意を表した方が良さそうですね。「韓国社会の成熟ぶりを示すもの」――と。ちなみに日本では小規模ながら、中国系企業や中国料理店への襲撃が発生していました。ことによると、中国の中でも台湾出身の人が主だって経営している会社/店舗も含まれていたかも知れません。ともあれ、この時期に中国政府を通さず、ダイレクトに台湾への呼びかけを政府与党の、それも外相ともあろう人間が行うことは適切ではないと言えます。

 

橋下外交発言、身内から「的外れ」「問題提起」(読売新聞)

 新党・日本維新の会代表に就任した橋下徹大阪市長が外交・防衛に関する発信を続けている。

 しかし、従来の政府見解とぶつかる内容が多く、維新内部にも戸惑いが広がる。次期衆院選をにらみ、橋下氏はこうした分野でどのような方針を示そうとしているのか――。

 ◆大量発信

 橋下氏には、大阪の地域政党を母体とする維新の会にとって、外交や防衛が弱点との意識があった。3月中旬、こう発言している。

 「外交防衛について(自分たちが)知ったかぶっていくら言っても、付け焼き刃的でうまくいかない」

 それでも夏以降、次期衆院選に向け、外交問題に踏み込んだ。

 8月下旬には、韓国大統領の竹島上陸への感想を記者に問われ、「従軍慰安婦という日韓の課題が根っこにある。慰安婦については強制連行の確たる証拠はないという日本の見解に立っている」と発言。9月に入ると、竹島や尖閣諸島、北方領土を日本固有の領土としながらも、「(周辺国と)共同管理すべきだ」「(争いの解決に)国際司法裁判所を使うべきだ」などの持論を展開した。

 

 その他の問題はさておき、領土問題に関しては橋下の方がまだしも民主党や自民党より柔軟な姿勢を取っているというのが何とも皮肉です。まぁ、石原だって震災ガレキの受け入れに関しては良いところを見せましたし、誰にだって一つくらいは評価できるところがある、そういうものなのでしょう。ところが、この領土問題がらみでは珍しく橋下が現実的な態度を取っている一方で、世間の評判は必ずしも芳しくない、むしろ維新の会という橋下翼賛サークルの内部からの反対論が強いわけです。橋下が橋下なら、それを伸長させてしまう世間も、そこから選出された議員も決してそれに劣るものではないようです。

 むしろ「詳しい」「専門家」とされている人の方が、実は無茶苦茶なことを言っているケースも多いように思います。経済や雇用問題のエキスパートとの触れ込みで出てくる人が本当に実態に精通しているかと言えば、ただただ経済誌の「お約束」に忠実なだけで全く現実に符合しないことを繰り返すばかりというのが常です。外交や防衛も然り、外交に強いとされながらも日本政府の建前にしがみつくだけ、防衛に強いとされながらもフィクションの中の戦争ロマンに酔いしれているだけ、そんな連中ばかりです。原発/放射線がらみでも、次から次へとトンデモや偏見を仕入れてくる人がいますよね。たぶん、橋下の奇妙な柔軟姿勢は領土問題に「疎い」からこそ可能だったものなのでしょう。いずれ橋下が「勉強」して行くにつれ、領土問題でも隣国の悪口を言うだけしかできなくなる、みたいなこともありそうです。

 

 大量発信の陰で、橋下氏は知識の吸収に躍起だ。9月に購入した関連書籍は、『日本の領土問題』『東大のディープな日本史』など10冊近く。親交のある石原慎太郎東京都知事のほか、ジャーナリストの櫻井よしこさんには昨年、自宅に出向いて意見交換して以来、推薦された本をほぼ読破するほど影響を受ける。

 

 ともあれ民主党政権も領土問題に関しては色々と動いている「フリ」を見せていますが、それでどうにかなるとでも思っているのでしょうか。変わることがない日本政府の建前を、あたかも普遍の真実のごとく言い張り続けたところで相手国の政府がそれを鵜呑みにしてくれるはずがないことは、流石に民主党政権だって理解できていると考えたいです。日本政府の一方的な申し出が受け入れられることは未来永劫あり得ない、では日本側の意見が突っぱねられた後でどう行動するのか、着地点を見据えた戦略が求められるところですけれど、そのビジョンが微塵も感じられないのが我が国の政治でもあります。

 まぁ、「ほとぼりが冷めるのを待つ」というのも戦略の一つなのかも知れません。実際、竹島/独島の騒動も政府の努力などなくとも徐々に下火となっているようですし。むしろ政治家にとって大事なのは国内の支持、隣国に対して一歩も引かない「強い姿勢」を国内の有権者にアピールすることの方が大事なのでしょう。その結果として隣国との関係が悪化したとしても、悪いのは相手国であって問題解決能力の低い現政権のせいではないと、そう仕向けることさえできれば政治家的には成功なのです。だから選挙目当てで維新の会に参加した議員などはとりわけ、少なくとも民主党政権よりは建設的な橋下の領土問題観には頷けないところがあるのだと思います。

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