記事

新型コロナの陽性者への誹謗中傷を防ぐ条例 そもそもで考える

 新型コロナの感染者は逮捕しろ。そんなメッセージをいただいたことがある。今や誰もが感染リスクがある。感染者は悪者ではなく人権の配慮が必要だ。那須塩原市の条例が注目される。

■誹謗中傷の被害から条例へ

 那須塩原市は、8月20日の定例記者会見で「那須塩原市新型コロナウイルス感染症患者等の人権の保護に関する条例の制定について」を公表し、9月議会で制定を目指している。

 条例の目的は、『新型コロナウイルス感染症にり患した患者やその家族などが、誹謗中傷や差別的取り扱いを受ける被害が報告されていることから、人権侵害を防ぎ、被害を受けている方を支援する』ことだ。(記者会見資料より)

 条文は公表されていないので詳細は現段階で分からないが、記者会見資料には、市、市民、事業者のそれぞれに責務について下記の内容が示されている。

・市の責務等
広報活動を通じて新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識の普及啓発及び発信に努めると規定。また、市は人権侵害を受けた患者等への相談に応じ、必要な情報の提供や助言等の支援を行う。

・市民の責務
新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識を持ち、新型コロナウイルス感染症にり患した患者やその家族などの人権侵害をすることのないよう配慮する。

・事業者の責務
新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識を持ち、自己の経営等をする事業において、新型コロナウイルス感染症にり患した患者やその家族などの人権侵害をすることのないよう配慮する。

 記者会見で、渡辺那須塩原市長は『患者やその家族が残念ながら中傷や差別的な取り扱いを受ける被害があることを聞いている」とし「誰にも感染するリスクがある。人道と感染拡大防止の面から条例を制定する」などと述べた』という。※1

 また、『県外ナンバーの乗用車に乗る市民が「罵声を浴びた」』などの事例もあるそうだ。 ※2

■誰にでもリスクのある社会

 PCR検査の感度(感染者を陽性と判断する割合)は7割とされ、約3割は陽性であっても陰性と判断されてしまうように、PCR検査だけでは陽性者が確実に分かるわけではない。今や感染経路不明の人が増えていることもあり、誰にでも「陽性」になるリスクはあり、陽性者が悪いとは言えない。

 また、陽性だからといって重篤な症状になっているのではない。

 注意すべきは感染を広げないよう各自が注意すること。そして、不安な気持ちはわかるが誰かを悪者にしたり、根拠のない不安を広げたりすることがさらに不安を広げないことだ。何よりも大切なのは医療体制を、財政面も含めて医療従事者の負担がないように拡充することだろう。

 冒頭に書いた「逮捕しろ」も中傷や差別と同じだ。批判している人もいつ陽性になるかわからないのだから、同じことが自分に戻ってくることも考えるべきだ。さらに言えば、陽性と分かっても報告や公表をしなくなり、かえって不透明になることも懸念される。

 那須塩原市の条例は、本来は必要ないことかもしれないが、現実を考えれば必要になってしまったのだろう。必要となった社会が問題かもしれない。

※1 下野新聞 中傷防止で条例制定へ 那須塩原市、コロナ感染者への配慮求める より

※2 産経新聞 感染者や家族の人権保護 那須塩原市が条例制定へ より

【参考】
那須塩原市新型コロナウイルス感染症患者等の人権の保護に関する条例の制定について(記者会見資料)

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

議論福島第一原発処理水の海洋放出は許容できるリスクか?

ランキング

  1. 1

    毎日の誤報「公正」は口だけか

    青山まさゆき

  2. 2

    NHK「しれっと」報道訂正に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  3. 3

    JALの旅行前検査 医師が「ムダ」

    中村ゆきつぐ

  4. 4

    橋下徹氏 毎日新聞は訂正すべき

    橋下徹

  5. 5

    鬼滅旋風で頭抱える映画配給会社

    文春オンライン

  6. 6

    都構想リーク記事に陰謀の匂い

    青山まさゆき

  7. 7

    タワマン強盗の恐怖を被害者激白

    NEWSポストセブン

  8. 8

    杉田議員が差別発言繰り返す背景

    文春オンライン

  9. 9

    若者の提案に上司「立場を失う」

    文春オンライン

  10. 10

    精子提供を年間100回 男性の葛藤

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。