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【読書感想】大分断 教育がもたらす新たな階級化社会

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大分断 教育がもたらす新たな階級化社会 (PHP新書)

大分断 教育がもたらす新たな階級化社会 (PHP新書)

  • 作者:エマニュエル・トッド
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: 新書


Kindle版もあります。

大分断 教育がもたらす新たな階級化社会 (PHP新書)

大分断 教育がもたらす新たな階級化社会 (PHP新書)

  • 作者:エマニュエル・トッド
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: Kindle版

現代における教育はもはや、社会的階級を再生産し、格差を拡大させるものになってしまった。高等教育の階層化がエリートと大衆の分断・対立を招き、ポピュリズムを生んでいる―これまで、ソ連崩壊、トランプ大統領の誕生など数多くの「予言」を的中させてきた著者は、こう断言する。民主主義が危機に瀕する先進各国で起きている分断の本質を、家族構造が能力主義・民主主義に及ぼす影響や地政学的要素を鑑みながら、鮮やかに読み解いていく。日本の未来、そして変質する世界の行方は。欧州最大の知性が日本の読者のために語り下ろした、これからの世界情勢を知るために必読の1冊。

 「ソ連の崩壊」や「トランプ大統領の誕生」を予測した歴史家・文化人類学者・人口学者のエマニュエル・トッドさん。新書界ではベストセラーを連発している、注目度の高い書き手である一方、「売れる」ということで、似たような内容の著書がたくさん出版されすぎている印象もあります。
 この本は、そんなトッドさんが「教育がもたらす分断」を主題に語った(あるいは、雑誌に発表した)内容が収録されています。

 私は学ぶという行為自体が目的になるべきだと信じています。学ぶことでより良い人間になれます。そして、知るということ、それ自体が良いことだと思うのです。
 ところが、次第に社会が複雑化し、ますますその深刻さが増している現代社会では、教育は経済的、社会的な成功を収めるためのツールとなってしまいました。人々は社会の中で、経済的に生き延びるために教育を受けるようになったのです。どの国でも親たちは自分の子供の学校での成績に一喜一憂します。それは子供に幸せでより良い人間、より完全な人間になって欲しいというよりも、むしろ良い仕事に就いて欲しいという願望の表れです。こういう意味で、中等・高等教育は歪んだ結果を生み出すと思うのです。
 高等教育を受けるためには最低限の能力がなければいけないのは忘れてはいけません。しかしアメリカの経済学者ブライアン・カプランは、その著作において「教育は、雇用主にとって都合よく仕事に励む、順応主義的な社員を雇うことを可能とした」と述べています(「大学なんか行っても意味はない?─教育反対の経済学<みすず書房>)。この経済構造と教育との歪んだ相互関係は、こうした点で表出してくるのかもしれません。とても優秀と言われる学歴を持つ人間であれば、必ずその人はある程度の能力があり、かつ順応主義者でしょう。だから雇用主は安心して雇うことができるのです。
 しかしここで忘れてはならないのは、社会全体がそうなってしまったら、その社会の進歩は止まってしまうということです。

 トッドさんは「今の学生には自由な時間、自分で考える時間が与えられておらず、経済力で『良い学校』に行けるようにもなっている」と嘆いています。
 その気持ちわかるなあ、と感じる一方で、「昔の大学生は、もっと自由で、俺たちなんかほとんど学校に行っていなかったぞ」なんて言う先輩たちの言葉に対して、「それって、本当に自慢するようなことなの?」と内心反発していた若い頃の自分のことを思い出します。
 たしかに「学ぶ」ことよりも「学歴を得る」ことが目的になっているのではないか、という気はするのですが、自分の子供には、「受験戦争に参加させてしまって良いのだろうか?」という思いと、「とはいえ、より良い環境で勉強できる機会を与えられるのであれば、それをわざわざ避ける必要はないだろう」という気持ちが入り乱れてしまうのです。

「知る」ということの充実感は、今の子供にも共通しているし、「社会のために起業する」という若者も、かえって増えているようにもみえるんですよ。
でも、アメリカの偉い人たちをみていると、こんな世界に冠たる有名大学を卒業しているのに、なぜ、「自分と狭い範囲の仲間たちの利益」のことしか考えないのだろう?というエリートの劣化、みたいなものも感じます。

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