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「音楽活動を続けるなら裁判の教訓を踏まえた曲を作って欲しい」薬物逮捕のラッパー、漢a.k.a.GAMIに裁判長からリクエスト

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「ヒップホップは大麻を多少容認している音楽」

Pixabay

検察官「覚せい剤の効果があったと話していましたよね。集中を高めるために薬物を使用したことに抵抗感はありませんでしたか?」

被告人「後ろめたさはありました」

検察官「集中力を高める方法が他にありませんでしたか?」

被告人「安易に手を出してしまいました」

検察官「ファストフード店で密売人に声を掛けて購入していますよね。外で購入していますけど逮捕されるリスクを考えませんでしたか?」

被告人「それは考えました」

本件に関する質問はここまでで、検察官は被告人の周辺についての質問に移行しました。

検察官「あなたの周りで違法薬物をやっている人は?」

被告人「以前付き合っている仲間の中にはいましたけど、今はいません」

検察官「以前…っていうのはどんな人?」

被告人「同じヒップホップなどをしているアーティストです」

検察官「ヒップホップの人は薬物を使用している人が多いんですか?」

被告人「大麻に関しては多少容認している音楽という点もあると思います。覚せい剤に関しては完全にご法度です」

検察官も俗な質問をするなという印象です。東京地裁ではここ2~3年でヒップホップのミュージシャンが被告人の裁判が続いていました。それもあの問い掛けなのかなと。正直に答えている印象を受けました。しかし「大麻に関しては多少容認している音楽」発言については後で裁判官に突かれます。

検察官「今後、違法薬物との付き合いはどうしますか?」

被告人「更生を表現にして、それがメッセージになればいいと思います」

検察官「今回、何を失いましたか?」

被告人「人の信用…、多くの仕事…」

検察官「いずれミュージシャンとして再開するんですよね。かなり厳しい状況ですけど、その中で再開すると甘い誘いもあると思いますが、大丈夫ですか?」

被告人「はい」

違法薬物には手を出さないことを再確認して検察官の質問は終了。

井下田裁判官が説諭で語った厳しい一言

続いて井下田裁判官の質問ですが、冒頭から井下田節が全開でした。

裁判官「あなたはラップミュージシャンですか?」

被告人「はい」

裁判官「さきほど大麻を容認しているみたいな話をしていましたよね。もう1回聞かせてください」

検察官はあっさり流していましたが、井下田裁判官は「聞き流す訳にはいきません」という姿勢を見せます。

被告人「あくまで一部の人間ですが『大麻くらいなら吸ってもかわない』という人がいて、それを認めているリスナーもいるということです。ごく一部ですが」

裁判官「あなたのスタンスはどうなんですか?」

被告人「使用してない時は反対していました」

派閥の確認。被告人が反対派と分かったところで、一部の人間についての質問です。

裁判官「容認している人もいるということですけど、大麻を吸ったことを音楽にしている人もいますか?」

被告人「吸っていて曲を作っている人もいれば、そうではない人もいるため様々です」

裁判官「あなたは今後、大麻も覚せい剤もやらないと話し、いずれはラップミュージシャンとしての仕事も再開しますよね。(違法薬物を)容認するような世界でまた曲を作るのはどうなのでしょうか?」

被告人「当然ですが反対派が多数なので、私はそちらに流れると思います」

裁判官「ということは違法薬物のことは否定していく立場ですね?」

被告人「そうです」

これで井下田裁判官の質問は終了。単純に「再犯しないのか?」と聞くのではなく、ヒップホップ業界の現状を聞き出して今後の方針まで確認するという細かさ。金太郎飴みたいにどの裁判でも似た様な質問をする裁判官も多い中、きちんと一人一人に合わせた質問をしています。このような裁判官もいるということはお伝えしたいですね。

そして、検察官の論告。半年以上2種類の薬物を使用していて、グラム数も多いため常習性があるとして懲役1年6月を求刑。一方、弁護人は取り調べでも法廷でも正直に証言し反省もしており前科も無いため執行猶予の判決が相当だと弁論をしていました。

通常であれば、裁判官が「このあと判決を出しますので5分くらい時間ください」と言うのですが、井下田裁判官はそういう説明はありません。「俺がルールブックだ」と言わんばかりに何も言わずに法廷にいる人間を全員待たせて判決を出しました。

スラスラ…という判決理由を書く音だけが響く静かな法廷。2分ほど経ったところで何もなかったかのように顔を上げ、

裁判官「では判決を言い渡します。被告人は証言台の前に立って下さい」と超マイペース。

裁判官「主文! 被告人を懲役1年6月に処する。この裁判が確定した日から4年間その執行を猶予する」

懲役1年6月、執行猶予4年。初犯だと執行猶予3年が相場なのでちょっと重めですかね。理由としては薬物を2種類使用していること、少量でなかったこと、常習性もあり親和性も高いことです。ただ前科前歴もなく母親も証人として出廷し、監督することを約束している点は考慮されていたと思います。

書き上げた判決理由を読み上げると、井下田裁判官は被告人の方を見て説諭をしたのです。追加のアドバイスですね。

裁判官「音楽活動を続けるということですが、裁判を受けた教訓をね、踏まえた音楽を作って欲しいと思います」と、まさかのリクエスト。裁判官が今後の被告人の音楽に口を出すとは思いませんでした。

とても神経質に細かく質問していたのはこの説諭のフリだったんですね。いくらなんでもどんな音楽を作るのかは被告人の自由だと思いましたが、井下田裁判官は「本来なら引退するというのもあるんでしょうから」と、最後の最後に厳しい一言を残して閉廷しました。

音楽活動を続けるのであれば、薬物反対派のメッセージを発信するのが責務ということですね。やはり、法廷で携帯電話が鳴った人に「一旦外に出ろ」と怒るだけのことはあります。

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