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「音楽活動を続けるなら裁判の教訓を踏まえた曲を作って欲しい」薬物逮捕のラッパー、漢a.k.a.GAMIに裁判長からリクエスト

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回、傍聴したのは大麻取締法違反と覚せい剤取締法違反で起訴されたラッパーの漢 a.k.a. GAMIこと川上国彦被告人の事件です。

初公判は7月6日に行われました。傍聴席が最も少ない20席だけの法廷でしたが、現在はコロナ対策で傍聴席が8席のみ。開廷10分前に法廷に行きましたが傍聴席は満席でした。仕方なくキャンセル待ちのため法廷の外で並んでいたところ、被告人の仲間らしき人達が後ろに並んできました。

被告人が有名人であることを考慮すれば「もっと大きい法廷を使えばいいのに」と裁判所に提案したくなります。他にも法廷は空いていますから。結局、初公判は2〜3分で、すぐに閉廷したようです。

そして迎えた8月4日の第二回公判。開廷の30分前から法廷の外に並んだので今回は無事傍聴席に座ることができました。傍聴席7席が全て埋まったところで、弁護人と被告人と被告人の母親が入廷してきました。少し緑のかかったグレーのスーツに真っ黒のマスクをした被告人は被告人席に着席し、母親は前列の右端の傍聴席に着席して、公判がスタート。

起訴されたのは2つ。1つ目は今年の5月2日、東京都新宿区大久保の路上で乾燥大麻一本0.123グラム、乾燥大麻を含む植物片が入った袋1.828グラム、覚せい剤0.465グラムを所持した件。2つ目は同日、新宿区大久保の自宅で覚せい剤を注射で自己の身体に摂取した件。

そして、罪状認否です。

裁判官が「今、検察官が読み上げた起訴状に間違いはありま…」と話している途中で傍聴席からビロロロ〜ピロロロ〜という電子音が…もちろん法廷内は携帯電話の使用は禁止。法廷のドアにも「携帯電話の電源はOFFに」という貼り紙が貼ってあり、傍聴する際の基本的なルールです。一体誰が携帯電話を鳴らしたのかと思ったら、被告人の母親。よりによって被告人の関係者が鳴らしてしまうという気まずいパターンです。

母親は「あれ? どこかしら」と携帯電話を探して大慌て。隣に座っていた人も「そっちのバックから聞こえますよ!」と教えてあげていました。そのやりとりに厳しい視線を送っていたのが井下田裁判官。様々なタイプがいる中で井下田裁判官は、冷徹な裁判官の代表みたいな人です。もし私が罪を犯した時には「この人には裁かれたくないな」と思っています。

井下田裁判官は携帯電話を探す被告人の母親に対して「1回退廷してください。外で止めてください」と一言。裁判が中断したことにイライラしていました。その後、母親は携帯電話を止めたのですが、井下田裁判官は「とにかく1回退廷してください。外に職員がいますから電源を切ったのか確認してもらってから戻ってきてください!」と強く注意していました。

新大久保のファストフード店で…

写真AC

一波乱ありましたが、被告人は自身の罪について「間違いありません」と認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、5月2日、被告人は自宅兼事務所で覚せい剤を注射器で使用。しかし血が出てきたので途中でやめてティッシュで拭き、大麻の入ったポーチに血を拭き取ったテッシュと注射器を入れて外出したそうです。被告人は近くでパトカーが止まったのを見てポーチを植え込みに捨てました。しかし、その行動を警察官は見ていて職務質問を実施。ポーチの中にはガラスパイプ、巻紙、注射針も入っていたということです。

取り調べに対して被告人は「日本人男性から購入しました。その男性のグループから10回くらい買った。男性と知り合ったきっかけは、去年新宿を歩いていたところ「テレビで見た」と声を掛けてきた人がいて、単なるファンだと思って話していたら薬物の話題を出してきた。新大久保のファストフード店の2階でハンカチを持っている男からいいのが買えると言われて、後日行ってしまった」と路上で密売人の情報を得たと供述していました。

購入については「後日、その人が話していたファストフード店の2階に行くとハンカチを持つ男性がいたので声を掛けました。すると近くの路地裏に移動するよう言われ、人気のない路地裏で『草1万』と言われたので1万円を渡しました。するとまた別の場所に移動し、さきほどとは違う男性から大麻を渡されました」と。密売人もそんなところで待機しているとは意外でした。店内の防犯カメラにバッチリ映っているのではと思います。

職務質問に関しては「妻子のいる成田へ行くつもりで外出しました。歩いていると道の向こうでパトカーが止まったので、とっさにポーチを植え込みに投げ捨てました。職務質問で何もなければポーチを拾って成田に行こうと思っていました」「最初は『私のものではないです』と説明しましたが、焦っていただけで、その後、私のものに間違いありませんと言いました」と逮捕当初は咄嗟にウソをついていたけど、取り調べの途中で正直に認めたという流れも明かされました。

検察官の冒頭陳述が朗読されている間、被告人が何度も何度もハンカチで汗を拭っているのです。初めての裁判で緊張しているのか、薬物を使っていた時の後遺症なのかは分かりませんが、法廷にいる全員が動かず静かにしている中ではものすごく目立っていました。毎年この時期はクールビズの影響で冷房があまり効いておらず、法廷がやや暑い。それに加えて今年はマスクもあります。汗の原因は多分暑さだと思いますが、その辺も裁判所が柔軟に対応すればいいのにと思いました。

被告人の母が再犯防止のために続ける文通

写真AC

母親の証人尋問です。

検察官「(被告人とは)どれくらい会っていましたか?」

母親「自転車で約40分のところに9SARIレーベル(被告人が立ち上げたレーベル)があったので足を運び、電話で連絡を取っていました。面会にも何度か行っています」

検察官「今後どう関わっていきますか?」

母親「今まで通り9SARIに行ったり、電話をしたりと連絡を続けます。あと息子が身柄を拘束されている時…」

何か感極まったようで急に泣き出す被告人のお母さん。そしてこう言いました。

母親「手紙が届きました。…もう、言葉に表せないような内容で…。今後も手紙は続けます」

余程心に刺さる内容の手紙だったのでしょう。そこは色々な詞を書いてきたミュージシャンならではと感じました。今後の監督のやり方で「手紙を続けます」というのは、かなり珍しいと思います。恐らくメールやLINEでも連絡を取ると思いますが、再犯しない為に選択したのが文通というのは良いですよね。その都度改まって書く感じが想像できます。

母親への質問はここまで。続いて、被告人質問です。

弁護人「初めて大麻を使ったのはいつですか?」

被告人「20代前半です。友人の誘いで使いました」

弁護人「覚せい剤は?」

被告人「20代半ばです」

現在41才なので初めて大麻を使用したのは約20年前。違法薬物の使用歴について検察官ではなく弁護人が質問するのは少し違和感を感じました。今回まで全く使っていないのであれば被告人のプラスになりますが、20代で使い始めていますから。

弁護人「なぜ使ったのですか?」

被告人「当時、地元で流行していて好奇心という側面もあり手を出してしまいました」

弁護人「この2つを使って分かったことはありますか?」

被告人「大麻はリラックス効果がある。覚せい剤は目が冴えたり眠気が解消されたり、集中力が増す効果があります」

弁護人「その効果を知ってずっと使っていたんですか?」

被告人「それは違います。去年の秋、使用を再開しました」

20代から継続して使用していたのではなく、去年の秋に再開したため「20年弱は使っていませんよ」というアピールで弁護人が使用歴を質問していました。

弁護人「売人から買った回数は?」

被告人「10回買って、10回とも大麻。そのうち3回には覚せい剤も含まれています」

弁護人「量は?」

被告人「グラム数は分かりません。ただ値段は大麻が1〜1万5000円。覚せい剤は1万5000円でした」

弁護人「なぜ薬物を使用したのですか?」

被告人夫婦関係がうまくいっていないストレスです。あと会社経営をしているのですがコロナによる不安もありました」

弁護人「保釈されて薬物の禁断症状は?」

被告人「ありません」

弁護人「使用したいとは思いませんか?」

被告人「今やらなければいけないことがたくさんあります。歌手としての活動に目が向いています」

音楽活動は続けると宣言しています。こうした事件が起こると様々な選択ができますが、ファンとしては安心の一言です。

弁護人「お母さんが来てくれましたけど…」

被告人「傷つけてしまって心が痛いです。来ていただいたことに感謝しています」

既婚者の場合、保釈の身元引き受け人は奥さんというパターンが多いですが、被告人の場合は母親。情状証人として法廷に立ったのも母親で、奥さんの姿はありませんでした。

弁護人「法廷にも(被告人の)奥さんの姿が見えませんけど」

被告人「夫婦関係が悪化しているためです」

弁護人「今までレーベルの代表を務めていましたが、今の立場は?」

被告人「辞任しました、責任を取るため」

弁護人「あなたはラップミュージシャンとしてやってきましたが、現在発信していることはあるんですか?」

被告人「YouTubeに謝罪動画をアップしました」

弁護人「動画の反応は?」

被告人「ファンから応援コメントもありますけど、批判的なものが多数です」

弁護人「同業者に対しては?」

被告人「多くの人に迷惑を掛けてしまいましたし、ヒップホップのイメージダウンをしてしまいました」

弁護人「テレビ番組にも出演していたようですが関係者に対しては?」

被告人「謝罪はできていませんが、私の出演シーンをカットするために編集をしたと聞いています。本当に申し訳ない」

弁護人「本を出版する準備をしていましたよね?」

被告人「それもなくなりました」

テレビと出版社に迷惑を掛け、代表という立場も追われ、業界のイメージも悪くさせて…。それくらい大きな影響が出ているということですね。

弁護人「二度と手を出さないのは分かりましたけど、そのための策はありますか?」

被告人「夫婦関係は離婚も含め考えていきます。あとは言葉ではなく、二度と手を出さないという行動で周りの信頼を得ていきたいと思います」

夫婦関係を見直すことで薬物には二度と手を出さないと誓っていました。夫婦仲のストレスがきっかけと話していますから仕方がないですね。弁護人の質問は以上です。続いて検察官の質問となります。

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