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しょせんメルマガなんてディナーショー?―やまもといちろう×家入一真対談【後編】

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撮影:濱田敦子 写真一覧
投資家、ブロガーのやまもといちろう氏×起業家・クリエイターとして活躍する家入一真氏の対談。後編は、それぞれの”経営者”としての苦悩やメルマガについての話題を中心に話が進んだ。【構成:BLOGOS編集部】

livertyは、「脱・組織」な働き方を志向する集団


——家入さんはpaperboy&co.を上場させた後、先ほどのCAMPFIREや、現在ではlivertyという組織を細かいプロジェクトベースでいろいろと立ち上げられています。そうした取り組みを続けている理由を教えてください。

家入:結局のところ新しいものを作っていくのが好きなので、現状ではlivertyみたいなモデルが一番いいなと思っているんですよね。ちょっとしたものを作っていくのに、いちいち社員を雇用してやっていると、どうしても機動力が落ちてしまう。

CAMPFIREは事業として成長してきているんですけど、今、僕のメインの柱が特にないですし、livertyみたいな感じで、自分が「こういうことをやりたい」と呟いたりしたら、「わあー、俺手伝う」って集まってきてくれた人たちがいるので、その人たちとものを作っているっていう。そんな感じですね。

やまもと:家入さんは、起業界隈のホープみたいな感じになっているじゃないですか。

家入:ホープ…なんですかね。

やまもと:Web系で新しく事業を興すときは、まず家入さんに相談しようみたいな雰囲気がある。結構不思議なポジション。

——多くのクリエイターの方が集まってきているイメージがあります

家入:そうですね。「話は聞くよ」くらいのことを言っているからなんですかね。分かんないですけど。

最近面白いのは、家がない子たちがいっぱい集まってきて、僕のオフィスに寝泊まりしているんですね。それすごい面白いなと思って。

やまもと:面白いっていうか、利用されてるんじゃないですか(笑)。

家入:そうなのかな…。

やまもと:昔2ちゃんねるをやってた時も、2ちゃんにハマりすぎて飯食えなくて、「家出してるんです」みたいな奴が事務所にやってきて、10人くらい寝泊まりしていた時期があったんです。でも、収集がつかないわ、セックスはするわで大変。風紀乱れるってことで、下の階に住んでる人に文句言われたりして。

あるタイミングで、「仕事紹介してやるから、そこで働いて家借りたらどうだ」といって、支度金も貸してあげて、みんな追い出したんですけど、支度金もらってとんずらする奴が続出したんです。こいつら薄情だなと思いました。そういう人たちなので、10人いてものになる人は1人か2人かもしれないけど、どうせ一緒に飯食った仲なのであれば、みんな助けてやりたいじゃないですか。だけど、実際に「もうここに泊めてあげられないよ」となると、「じゃあもういいっすわ」となる奴もいて、こちらとしても「なんだよ。あんなに長いことただ酒飲んでたじゃねえかよ」という思いがあったりする。

家入:そうなんですよ。livertyをやり始めるまで、ずっと会社を経営していたんですが、飲食の会社で経営が厳しかった時期に、リストラしたことがあったんですよ。もちろんリストラされた人たちからしたら、「ふざけんな」って話ですけど、paperboy&co.のときから割りとうまくいっていて、あんまりそういうことやったことがなかったんですよ。

本当に、もうギリギリまで給与はちゃんと払ったし、家族ぐるみみたいな付き合いをしていたけど、最終的に会社として厳しいので、「本当に申し訳ないけど、2ヶ月くらい先まで給与出すけど、やめてもらわなきゃいけない」と言ったら、ふざけんなみたいな感じでさっさと出てっちゃうんですよね。給与払って働いてもらっているという関係性である以上、良い時は良いんだけど、ダメになった瞬間に、「家入死ね!」みたいな感じでみんな去っていくんだなと痛感しました。それが凄く切なかったので、給与払うとか、そういう形ではない関係性でものづくりをできないかなと思ったのが、livertyを立ち上げたきっかけなんです。

やまもと:livertyというのは会社なんですか。

家入:チームです。

やまもと:任意団体。

家入:そうですね。僕は一応代表という形で、何かの時は表に出るみたいな感じですけど、別に責任能力はないんですかね?

やまもと:一応任意団体なので、全員無限責任。あり得ませんけど、人が死んだとか事故起こると全員の責任。関東連合的ですよね。

家入:関東連合も会社じゃないですよね。

やまもと:じゃないですね。任意団体ですね(笑)。ただ、livertyは原則として脱・組織。あまり組織という感じではないですよね。

家入:そうですね。

やまもと:ものの作り方も非常にアイデアマンシップというか、発想のある人を中心にプロジェクトを組ませる形でやっている。このやり方には、いいところも難しいところもあると思うんです。新しいモデルを切り拓く可能性もありつつ、一方で本当に何かあった時に、誰が責任をとっていいのか分からないという問題がある。

家入:あと運営が弱いというのが弱点としてはあります。

やまもと:当初の2ちゃんねると一緒なんですよね。見ていて僕が思ったのは、「2ちゃんねるの初期だな。大人がいねえぞ」ということです。内容証明一つもらってあたふたする2ちゃんねる運営者を僕は見てきたので。

契約関係じゃない分、みんなカジュアルに楽しく付き合っているんだけど、本当に何か成し遂げて大きくしていこうとなると、なんだかんだで上下関係ができて、指揮命令系が必要になる。意思決定の難しさや、物事に対処するにはどうしたらいいのか、という話になった時に結構みんなノリでやっていたのが、だんだんノリが通じなくなってきて、崩壊していくみたいな経験がある。

僕らはどちらかというと、「Webって肩書き無くみんなで話し合えるから、フラットな関係が作れて理想的な日本社会でいいんじゃないの」という夢があったんですけど、だんだんとそうも言っていられなくなってきてる。

僕らの場合は、言論というか、コミュニティなんですけど、livertyはどちらかというと、テクノロジーだとか、ウェブにおけるサービスの高い精神性だとかかっこよさ、そういうところにいっている。そっちはそっちでセンスのある人が中心となって、そうした「かっこよさ」をモノなりサービスなりに落としこんでいくような形でいかないといけない。そうじゃないと、同じような問題を起こしかねないと思います。だから、「脱組織でものづくり」というのは、楽しそうで、スタイリッシュだけど危うい部分もある。

家入:そうですね。だから、まあ実験的にやっている感じですかね。

やまもと:結構、家入さんはクリエイターにこだわるじゃないですか。あと、アイデアとか。

家入:そうですね。あんまり経営とかよくわからないんで、まあ僕自身がそこをやっていきたいという思いがあって。paperboy&co.の時も結局難しいところは誰かがやってくれていたし。最近は自分が手を動かすことがなくなっちゃって、つまらないんで、ちゃんと動かさないといけないと思っていたりもして。

やまもと:当面の目標はあるんですか。「今後10年これをやっていくぜ」みたいなロードマップは。

家入: livertyがどこまでいくのかやってみたい、という思いはすごくあって、その中でウェブサービスなり、ビジネスなりが生まれるといいなと。でも先程やまもとさんが言っていたような、責任や運営の部分の問題というのは絶対にあるから、そこをどう乗り切るかというのは、チャレンジしてみたい。その過程で燃え上がることもあるかもしれないけど…。

あと僕の問題は、飽きっぽいところですね。メルマガも早速先週遅れちゃってるし。

やまもと:私も遅れてますから、きちんと遅れる理由をはっきりさせて挽回すれば、たぶん遅れるくらい大丈夫ですよ。

家入:でも、「思いついてすぐやろう」ということは、僕は全然悪くないと思っているんです。studygiftも3日で作ったとか、その部分をやたら取り上げられて、「そんな稚拙なものを出すんじゃない」みたいな意見もあったんですが、僕は思い立ってすぐ作っちゃうという行動力は決して悪いことではないと思います。

僕が無責任なことが原因で、それが悪い状態になって、何も考えずにやった結果、やっぱりめんどうくさくなって途中で放置状態みたいになっちゃったのはよくない。そこはどうにかしなきゃなって思うんですけどね。

やまもと:普段の仕事は、どんな感じで進めているんですか。

家入:仕事は、何してるんですかね。とりあえず、打ち合わせばっかりしている。人と会うのが多いんですよね。スタートアップに投資をしたりしているので、投資している人たちに会ったりしているのもあるし、新規で出資して欲しいという人たちの話を聞いたりもする。

やまもと:みんなどちらかというと出資してくれとか、スタートアップ手伝ってくれという感じですか?

家入:それが多いですね。あとはCAMPFIRE絡みのちょっと大きめな案件は、僕が打ち合わせすることもありますよ。

やまもと:去年、「元気玉プロジェクト」とかいろいろあって、あれなんか見ていると、積極的に広がっていこうとしているんだなって思うんですけど、これ毎年やるのは大変じゃないかとも思います。

家入:そうですね。「元気玉プロジェクト」との取り組みは今年の5月で終了しているんですけどね。

やまもと:結構僕らから見ても、いろんな新しい資金調達方法を試していろんなところが入ってきていて、CAMPFIREは面白いなと思います。クラウドファンディングで一番うまくていっている感じですよね。

——やまもとさんは、スタートアップ投資はしているんですか。

やまもと:してます。ただ、僕はどちらかと言うとゴリゴリの技術なんですよね。新しいUIだとか、ハードウェアのアーキテクチャの部分とか、あとエンジンとかの部分です。地味なんですよ。

どちらかというと、家入さんはアプリケーションレイヤーの、よりカジュアルなデザイン系だと思うのですが、僕はもっと地味で、ネットワーク技術がどうのこうのとかそういう話です。

結局技術もコンテクストなので、何が今必要とされていて、それを解消するためには、この技術が今はどうで、将来的にどうなるかというロードマップは組みやすいですよね。テクノロジーマップがきちんとできていれば、そんなに大きく間違うことはない。

——mixiの株も持ってましたよね。

やまもと:あれは単純にmixiが上場するタイミングで、サイバーエージェントがお金を入れていたので、こりゃ伸びるのかなと思って夢を感じてちょっとずつ買い増した感じです。

——今も応援しているという形なんですか。

やまもと:応援というか…、ああいう事業には、やっぱり夢がある。だから、持っておこうかなっていうのが一番ですね。あと僕はどちらかというと、プラットフォーム事業など決済に近いところで仕事をしているので、物流のコアになるクックパッドやmixiには昔から興味があったんです。結果的にはmixiは全然ダメでしたけどね。呆れるくらい下がりましたけどね。割安で入れたはずだったのに。

——どうすればあがりますかね。

やまもと:結構中にいる人たちはまともな人が多いように感じているので、ちょっと戦略を組み立て直さないとダメですね。ようやく新しいサービスが出始めたので、全体のサービスを統括していくプロデュースがうまくいき始めれば、まだまだ挽回の余地がおおいにあると思っています。それこそ、livertyにいくつかアイデアを出していただいて盛り上げていく。そういうことができるといいんですけどね。最近は逆にアプリケーションレイヤーのサービスではなくプラットフォーム事業をやりたいという会社がすごく多くて、やめろよって思うんですけど。


やまもといちろうメルマガ「人間迷路」

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