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民主主義の条件

 昨今はアメリカ主導で中国系企業の締め出しを計る動きが続いています。中国政府側の問題は語り尽くされていますので繰り返すことはしませんが、こうした民間企業の政治的な排除が公正なものかどうかは、疑問に感じるところです。あるいは香港や台湾を巡る問題でも、少なからず偏った扱いをされているところはあるでしょう。

 とりわけ香港を巡っては、まるで「西側」の橋頭堡みたいに扱われている印象を受けます。かつて欧米列強が侵略によって領有した地域の処遇について、そこに介入することへの躊躇の欠落は、率直に言って帝国主義の時代への反省を完全に忘れ去っていることを示すものでしかありません。「返却」はしても、香港は欧米の縄張りという意識までは捨てられていないわけです。

 民主化を求める人々を弾圧することが国際的な非難に値するか、という観点からはどうでしょうか? それは実績として、非難されることもあれば、黙認されることもあったはずです。お隣の韓国でも長らく軍部が独裁体制を築き、民主化を求める運動家は過酷な弾圧を受けてきました。しかるに今日の日韓関係に比べればまだしも、軍隊が支配していた頃の韓国との方が融和的であったとさえ言えます。

 もちろん軍事独裁政権が続いていたのは韓国だけではありません。そして軍事独裁政権を黙認し、「よろしくやってきた」のも日本だけではないわけです。国民の自由と民主主義が侵害されていようとも国際的に受け入れられてきた国家体制は、決して珍しいものではありません。ではどうして、中国にはそれが許されないのでしょうか?

 結局のところ国際社会における善悪の基準は、アメリカとの関係に尽きます。アメリカの世界戦略に従う国でありさえすれば、いかなる専制政治も何ら問題にはなりませんでした。問題になるのは、アメリカの意向から外れてしまったときだけです。イラクのフセイン政権も侵攻先をイランに限定している間は、アメリカから支援を受ける側でした。その後にアメリカの望まない方向に軍を向けたことで「世界」の敵となっただけです。

 そもそも民主的な選挙を全否定しているはずのクーデターでさえ、それがNATOの前線基地になることを志願している勢力の手によって実行されれば、国際社会から当たり前のように承認されているのが実情です。国民の投票よって選ばれた政権も時には、アメリカの後援を受けた反政府勢力によって潰される等々、民主主義はアメリカによっても少なからず脅かされてきました。

 香港における中国政府への抗議活動に賛意を表明する一方で、アメリカにおける反差別運動や日本国内の反格差運動には否定的な人も少なくありません。アメリカの現大統領に言わせれば、反ファシズムの活動はテロリズムだそうです。そういう人はたぶん、香港の自由と民主主義のためではなく、レイシズムとアメリカのために声を上げているだけなのでしょう。

 もし中国が一貫してアメリカに従順で、かつ技術面でアメリカの優位を脅かすものでなかったならば、昨今のように市場からの締め出しを食らうこともなければ、国際社会からの批判を受けることもなかったであろうと私は確信しています。アメリカのために、ロシアに向けたミサイル基地でも設置させてやれば、それはもう自由と民主主義の同志ですから。

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