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『日本人のための憲法原論』 憲法は国家権力を縛るための契約

本書、『日本人のための憲法原論』は、キリスト教史を中心に西洋史を遡りつつ、憲法とは何か、民主主義とは何か、その両方が現代日本で何故骨抜きになってしまっているか、というテーマに真正面から取り組む良書だ。

筆者の小室直樹氏の本は、同シリーズの『日本人のための宗教原論』や『日本人のためのイスラム原論』もわかりやすく本質をついた必読の書であるが、本書『日本人のための憲法原論』も期待に違わぬ良書であった。

重厚なテーマでありながらも、対話・講義形式でテンポよく記載されているため、非常にわかりやすく、「憲法とは何ぞや」という問いに対して深い理解を与えてくれる。

日本人のための憲法原論

日本人のための憲法原論

  • 作者:小室 直樹
  • 発売日: 2006/03/24
  • メディア: 単行本

憲法とは国民に向けて書かれたものではない。誰のためにかかれたものかといえば、国家権力すべてを縛るために書かれたものです。司法、行政、立法・・・・・・これらの権力に対する命令が、憲法に書かれている。

『日本人のための憲法原論』 第2章 誰のために憲法はある

 本書では、憲法というのは法律の上位概念とかそういうものではなく、「国家権力を縛るための契約である」という憲法の本質がずばりと記載されている。

憲法でいう「言論の自由」というのは各国民が自由闊達に自分の意見を言えるためのルール、というよりむしろ、国家権力が国民の言論を統制するような規則を作ろうとした時に立ち戻って、国家権力の暴走に歯止めをかけるための国民が備えた武器であるという説明は、非常に説得力があり、わかりやすかった。

本書では、西欧諸国での憲法の成り立ちと、日本における憲法の成り立ちを比較しながら、何故「日本の憲法論がぼんやりしているのか」ということにずばずばと切り込む。特に第11章の「天皇教の原理」は本書最大の読みどころだ。

中世ヨーロッパでは、国王の力は当初は非常に制限されており、封建領主と国王の間には主従関係ではなく、そこにあったのは契約関係だけであり、その国王と封建領主間の権利と義務の定めが憲法の出発点であるという考え方はとても勉強になった。

ヨーロッパの憲法はその成り立ちからして「権力者と国民の契約」なのである。一方で、日本は初めに制定された明治憲法は時の明治天皇と、先祖である天照大神や歴代天皇との契約であり、「天皇と国民の契約」ではなかったというから興味深い(本エントリーで、何故そうなったのかの詳述はさけるので、興味のある方は是非本書を手にとって頂きたい)。

そして、現在の日本国憲法は多くの方がご存知の通り、アメリカのGHQから与えられた憲法であるため、その出自から「権力者と日本国民の契約」という形にはなりえなかったので、日本人の意識に「憲法は国家を縛るものである」という考えが遂に定着しなかったのだと、筆者はまとめる。

翻って、現安倍政権を見るに、日本の憲法というのは非常に危うい状況にあり、筆者が「日本の憲法は死んでいる」というのも頷ける。

第二次安倍内閣ができた当初に、憲法を改正するためには「各議員の総議員の三分の二以上の酸性で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」という憲法九十六条を変更しようとしたのは記憶に新しい。

国家権力が、それを縛る規則を自分が変更しやすいように改正しようというのは、立憲民主主義の危機にほかならない。

そして、憲法を変える道が難しそうなので、「集団自衛権の解釈を変える」という憲法を変えずにその解釈をねじまげるという変化球というか、殆ど魔球を投じた安倍晋三の行動は国家権力の暴走と言っても言い過ぎではない。

それと比べるとアベノマスクを配って税金の無駄遣いをするなど可愛いものだし、権力者としての暴走の隠れ蓑として国民が食いつきやすい撒き餌として敢えて、あの失策をしたのではないかと勘ぐってしまう。

と、色々書いてはみたがが、本書を読んで自らの不勉強を再認識した。米国に住んでいるのだから、民主主義国家の代表であるアメリカの憲法と民主主義についてもしっかり学ばなければ。

また、ここのところ歴史や宗教を勉強して培ってきた微々たる知識が繋がっていく感覚を覚えることもでき、有意義な読書体験となった。

本書は、Amazonでもしばらく購入不可能であったが、本日(2020年8月16日時点)見たところ、最近少しだけ在庫が積み増されているように見える。

興味のある方は、早いものがちなのでお早めのご購入を。また、集英社インターナショナル社はこういう良書こそ電子書籍化することを是非検討頂きたい。

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