記事

香港問題を正面から批判しない安倍首相は、中国政府に見下されている

1/2

保釈後、周庭さんは「突然の逮捕で、今回は怖かった」と話した

国家安全維持法(国安法)違反などの疑いで香港警察に逮捕されていた民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さん(23)や、香港紙「蘋果日報」(アップル・デイリー)創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏(71)ら10人全員が、8月11日深夜から12日未明にかけて保釈された。

香港の刑事手続きでは、推定無罪の原則によって一般的には逮捕から48時間以内に保釈の可否が判断される。強行で唐突な逮捕だったため、早期に保釈されるとは意外だった。中国と香港の両政府には、来年9月に実施される立法会(香港議会)選挙への民主派の動きを封じ込める狙いがある。勾留が長く続いてもおかしくなかった。

保釈後、周さんは「突然の逮捕で、今回は怖かった」と話した。黎氏も「SNSで海外の勢力と結託したと警察から言われたが、(逮捕の理由としては)理解できない」と語った。

2020年8月13日、日本語のメッセージを発信した香港の民主活動家の周庭氏(YouTube「周庭チャンネル」より)
2020年8月13日、日本語のメッセージを発信した香港の民主活動家の周庭氏(写真=YouTube「周庭チャンネル」より) - YouTube「周庭チャンネル」より

早期の保釈は、香港政府を操る中国の習近平(シー・チンピン)政権が、国際世論の反発に一歩退いたといえる。裏を返せば、欧米の抗議にはそれだけの効果があった。

今後の焦点は10人が起訴されるかどうかだ。国際社会は自国のメディアを通じて批判の声をさらに強めるべきである。そうすれば、中国政府が香港の自由を奪い取ることはどんどん難しくなる。

「国賓来日の中止」は、自民党のレベルで止まっている

日本政府は、菅義偉官房長官が記者会見で「重大な懸念を有している」と述べた。だが、これはいつもの決まり文句だ。世界第2位の経済大国である中国に対し、日本は貿易面での依存が強まっている。常套句しか出てこないのには、そうした背景が影響しているのかもしれない。もしそうだとしたら、これほど情けないことはない。

2019年の日中首脳会談で、習近平国家主席が国賓として来日することに日中は合意した。当初は20年春の来日予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期になっている。だが、香港の問題を受け、国賓来日の中止を申し渡すことも検討するべきだろう。

中国には強腰で臨まなければならない。そうすれば、国際社会における日本の地位もかなり向上するだろう。国連安全保障理事会(安保理)の常任理事国のメンバーに入り、国際社会に欠かせない国として活躍する道が開かれる。それは結果的に国益にかなうことになる。

なお自民党はすでに7月7日に、国安法の施行を受け、「(国賓来日の)中止を要請せざるを得ない」との決議を正式に行っている。だが、これも自民党のレベルで止まっており、政府の決定とはなっていない。

安倍首相は「国民の気持ち」をまったく理解できていない

問題は安倍政権の視野の狭さにある。たとえば「アベノマスク」だ。安倍首相は8月1日、連日着用していた小さい布マスクを止め、鼻から顎まで覆う大きなマスクを着けて首相官邸に入り、記者団を驚かせた。翌週3日の月曜には、その理由をこう語っていた。

「現在、お店でもいろんなマスクが手に入るようになりましたので。これも布製マスク。ぜひ国民の皆さまにも外出時にはマスクを着用していただくなど、感染予防に協力をお願いしたい」

「いろんなマスクが手に入る」ことは、自身のマスクを変更したこととどう結び付くのか。ロジックはよく分からないが、「アベノマスク」が国民から支持されていないことをさとったことは間違いなさそうだ。しかし、それをさとるには遅すぎる。

「アベノマスク」は購入と配達の費用でざっと260億円がかかったという。配布も遅れた。国内だけでなく、海外のメディアからも効果が疑問視された政策だ。そもそも格好の悪い小さなマスクなど、だれが欲しがるのだろう。安倍首相は私たち庶民の気持ちをまったく理解していない。要は世間の事情に疎いし、視野が狭いのである。

対中外交を強腰に変えるには「首相の決断」が欠かせない

話を中国に戻そう。中国の強権的行動は香港だけではない。東シナ海や新疆(しんきょう)ウイグル自治区でも目に余る行動を続けている。そのうち日本にも波及する。もはや対岸の火事では済まされない。私たち国民の多くもそう感じているだろう。

尖閣諸島の問題を考えれば、その帰結は明らかだ。このあたりで習近平政権にしっかりと釘を刺しておく必要がある。

しかしながら、安倍首相は視野が狭く、国民の気持ちが分からない。中国政府に対し、「香港から自由を奪うのは国際的ルール違反だ」と正面から忠告することなど頭の片隅にもないだろう。そんな安倍首相を中国政府も見下しているに違いない。

これまでの安倍政権の外交は中国に対し、弱腰だった。それを強腰に変えるには、大きなテコがいる。そのテコとは、安倍首相自身の決断である。安倍首相はそこに気付いていない。このまま気付かずに政権を終えるのだろうか。沙鴎一歩は国民のひとりとしてそれが残念でならない。

「これは『戦車なき天安門事件』の始まりである」

8月12日付の産経新聞の社説(主張)がおもしろい。次の書き出しがいい。

「これは『戦車なき天安門事件』の始まりである。中国は軍隊によらずとも香港国家安全維持法(国安法)を武器に自由を封殺し、民主派を根絶やしにするつもりだ」

見出しも「周庭氏逮捕 『戦車なき天安門事件』だ」である。

沙鴎一歩はこれまで「天安門事件の悲劇だけは避けたい」と主張してきたが、考えてみると、産経社説が指摘するようにいまの中国にとって国安法が戦車代わりなのである。

産経社説は続けて書く。

「香港の自由を求める欧米や日本に対しても明確な挑戦状を突き付けたに等しい。これを看過してはならない。日本の危機でもある」

賛成だ。このまま中国が共産党1党独裁を武器に乱暴な発展を続けていけば、前述したように香港と同じ問題は日本でも起きる。

あわせて読みたい

「安倍晋三」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    堀江氏 餃子店1千万円支援に苦言

    女性自身

  2. 2

    橋下氏「否決なら住民投票無効」

    橋下徹

  3. 3

    年末年始「17連休案」空振りの訳

    BLOGOS しらべる部

  4. 4

    毎日の誤報「公正」は口だけか

    青山まさゆき

  5. 5

    社長辞任 勝者なき大塚家具騒動

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

  6. 6

    NHK「しれっと」報道訂正に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  7. 7

    若者の提案に上司「立場を失う」

    文春オンライン

  8. 8

    JALの旅行前検査 医師が「ムダ」

    中村ゆきつぐ

  9. 9

    誤報訂正せず 毎日新聞社に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  10. 10

    田代まさし闘病で収監延期の現在

    SmartFLASH

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。