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まったく校則のないドイツの学校が「学級崩壊」と無縁なワケ

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ドイツの学校で大事にされている「多様性」

ドイツの学校の先生が生徒の生活面にタッチしないのは、「先生による管理が時間の面でも労力の面でも不可能」だと考えられているからでもあります。

ドイツの学校に給食はなく、当然日本の小学校でたまに問題になるような「完食指導」もありません。それは「食」も「私」に該当すると考えられているからです。よって「食」に関する指導は家庭の管轄です。

ドイツにはイスラム教徒の生徒も多く、彼らは豚肉が食べられません。また親がベジタリアンで、「子供に肉は食べさせない」という方針の家庭もあります。色んな主義や考え方がある中で、学校が生徒をひとつの方向に「これが正しい」と導くことは不可能だと考えられています。

日本人からすると、このような割り切った考え方であるドイツの学校は「冷たい」と感じるかもしれません。でも勉強以外のさまざまなことが本人や家庭に委ねられていることの利点は確かにあるのです。それは、わざわざ「多様性」を主張しなくても、「自然な形で多様性が保たれている」点です。

いろいろな肌の色の人がいて、さまざまな髪質の人がいる。家庭によって文化も違えば、生徒個人の好みもいろいろ――学校はまさに「社会には色んな人がいる」ことを学ぶ場所です。

日本の学校でも外国人や外国にルーツを持つ生徒は増えています。学校が「黒髪の直毛」をスタンダードとし、そうでない髪質や髪色の生徒に「地毛届」の提出を求めることは時に人種差別の問題もはらんでいます。

学校が「子供が将来社会に出た時にうまくやっていけるよう準備をするところ」であるならば、校則による「縛り」はむしろ逆効果なのではないでしょうか。校則により均一的な格好を長年強いられてきた生徒が社会に出た時に「多様性」というものにポジティブに向き合えるのか――そんなことが心配になってきます。

そもそも「校則」は必要なのか

都立高校186校、都立中高一貫校5校の全191校を検査した結果、83.1%の全日制の高校に生徒の頭髪に関する校則があることが分かっています。生まれつき髪の色が明るい生徒が学校に地毛届を提出させられる問題もまだなくなっていません。

日本の校則は規定が細かく、女子生徒の制服のスカートの丈に関する規定があったり、靴下がワンポイント禁止だったり、寒い冬場でもコートやマフラーが禁止されていたり、さらには生徒の下着の色まで決められていたりします。

今回の「ツーブロック禁止」についてインターネットでは「理不尽」「意味不明なルールの典型」など非難の声も多く見られました。

そんななかで尾木ママはブログに「ツーブロックは、自由でもいいし、禁止でもいいと思います。一番のポイントは【誰が決めたのか】ということ」と自身の見解を述べ、続けて「高校生にもなって、いちいち細々とした校則を学校の先生たちがきめる。

(一部中略)学校生活を快適に過ごすかどうかは生徒たちの問題です。生徒会で議論して決めるのが筋ではないでしょうか?」と書きました。

つまり同じルールであっても、大人が勝手に決めるのではなく、あくまでも生徒が互いに話し合った上で決められたルールであるべきだと尾木ママは主張しています。

ただ校則がない学校に通っていた筆者は「学校に校則ってそもそも必要なの?」と思ってしまいました。

未成年だから髪型や下着の色に口を出してもいいのか

仮に生徒同士でルールを決めたとしましょう。生徒が多数決で「下着の色は白に限る」と決めたとして、なぜ他人が決めた色の下着を身に着けなくてはいけないのかと疑問に思います。

社会人に置き換えて、この問題を考えてみましょう。仮に会社の平社員同士の多くが「ブラジャーの色は赤がいいと思う」と思ったとしても、口に出すことは難しいでしょう。異性がいる場合は間違いなくセクハラになりますし、自身が身に着ける下着について、他人が意見を述べること自体がおかしいからです。

そう考えると、相手が未成年で学生だからといって、大人が平然と下着にまで口を出すのはやはり理不尽だと思ってしまいます。

甲子園を見ても分かるように、日本では丸坊主が男子高校生にふさわしい髪型だとされているフシがあります。確かに丸刈りにしてしまえば、髪の手入れに手間がかからないのは確かです。

しかし「手間がかからないこと」を選ぶのか、それとも「おしゃれ」を選ぶのかは本来は各自が決めれば良いわけです。そこを統一させて全員を丸刈りにさせてしまうのは、大人たちによる「高校生らしさ」の押し付けなのかもしれません。

校則は結局「ダレ得」でもない

校則があることにより窮屈な思いをするのは生徒ばかりではありません。生徒に対する細かい規則があることで、先生もそれらの規定が守られているかどうかをチェックしなくてはならなくなります。このことにより、そうでなくても部活等の時間外労働に忙殺されている先生に負担が強いられるわけです。

そういったことも考えると、「校則があるのはダレ得でもない」と思います。

ヨーロッパの学校とは違い、日本の学校では「地域の目」も気になるといいます。しかし地域からの「お宅の学校の女子生徒はスカートの丈が短い」「お宅の学校の男子生徒はツーブロックが多い」などといったクレームには、どこかの芸能事務所のように学校は「プライベートは生徒に任せています」と返すのが理想的だと思います。

そもそも今の時代、「ツーブロックを禁止すること」は別の意味でも問題です。コロナ禍で美容室や理髪店に行くことがはばかられるいま、自宅でバリカンを使って気軽にできるツーブロックこそが時代に沿った髪型だと思うのですが、どうでしょうか。

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サンドラ・ヘフェリン 著述家・コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ「ハーフを考えよう!」 著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから‼』(中公新書ラクレ)、『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)など。
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(著述家・コラムニスト サンドラ・ヘフェリン)

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