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「いじめ自殺」根絶のために

よくやった、と思う。滋賀県彦根市の中学3年の男子生徒2人(14歳)を滋賀県警少年課と彦根署が「暴行」と「強要」の容疑で逮捕した件である。

この男子生徒2人は、昼休み時間に同級生の男子を空き教室に連れ込み、カッターシャツを無理やり脱がせ、ズボンや下着を自分で脱ぐよう要求し、さらに、引っ張り脱がせて全裸にした。

報道によれば、2人のうち1人がそのようすを携帯電話で数枚撮影し、仲間で共有する携帯電話のアプリで見られるようにしたという。

翌日、被害生徒の元気のないようすに気づいた担任教師が本人から聞き取って、この事実が判明したそうだ。学校はただちに彦根署に相談し、被害生徒が「被害届」を出して逮捕に至ったのである。

私は、遅きに失したとはいえ、この一件を「いじめ問題」のターニングポイントにして欲しいと思っている。なぜなら、この学校側の対処と警察の出方は、「いじめ対策」の根本に据えるべき画期的なものだからである。

今まで長い間、日本の教育現場で「いじめ」への抜本対策が取られてこなかった最大の原因は、大人たちの“事なかれ主義”にある。

教師たちは、自分の指導力不足を指摘されないようにできるだけ「いじめ」を否定し、時には「気がつかないふり」をし、学校側は、常にできるだけ表沙汰にならないよう水面下でコトの決着をはかろうとしてきた。

その過程で、いじめ被害を受けた生徒が「自殺」という方法をとり、一方、それでも学校側は「いじめが自殺の原因かどうかはわからない」という判で押したような弁明に終始してきたのである。

警察も、たとえ相談を受けても、滋賀・大津のいじめ事件のように「それは教育現場でのこと」と門前払いするケースがほとんどだった。すべては、大人たちの“事なかれ主義”に起因するのは言うまでもない。

しかし、今回の彦根市の中学は、いち早く警察に通報し、警察もすぐに捜査を開始し、14歳少年を「逮捕」するという行動に出ている。

ひと昔前なら、「学校が生徒への教育を放棄した」として、非行少年側のうわべだけの「人権」を守りつづける一部新聞が中心になって、大非難を展開しただろう。

しかし、私はこれを「学校が教育を放棄した」とは、まったく思わない。いや、むしろ、自分たち「学校」だけでなく、「社会」そのものが一丸となって非行生徒たちを教育していくという強い意思を世の中に示したものだと思う。

中学生になり、善悪の分別がつく年齢になって、同級生を全裸にし、それを撮影して仲間で見えるように画像をアップすることが「犯罪」であるとわからないはずはない。

それは、明らかに「暴行」と「強要」という刑事犯罪である。これを学校が抱え込んで、内部で処理しようとしたら、非行少年はつけ上がり、そして被害少年がまた自殺するなど、大きな問題に発展した可能性は十分にある。

これまで悪いことをやっても見逃され、甘やかされてきた非行少年たちに、学校だけでなく警察を含めた大人たちが「そんな甘えは許さない」と、本気で乗り出してきたのである。

これまで、なぜ教師たちが非行少年の悪業を見逃してきたかと言えば、教師の査定が「減点主義」に基づいていたからにほかならない。

自分のクラスでいじめが発覚し、それで指導力不足を指摘され、査定で減点されるなら、できるだけ隠蔽したくなるのは、人間の情として当然だ。

では、これから、現場の教師に今回のようにいち早くいじめを発見し、それを学校に報告し、刑事犯罪である場合には、警察に相談することができたことを査定で「プラス評価」するようにしたら、どうなるだろうか。

これまで、「マイナス評価」にされていたものを、逆にプラスと評価するのである。つまり、今回の彦根市の中学がとった行動を「是」とし、それを教育現場での「基本」とする。

それをプラスとして評価する姿勢を学校や教育委員会が持つことができれば、少なくとも陰湿ないじめによる被害生徒が減っていくことは間違いない。そして、それは同時に生徒の「命」を守る砦と成り得るのではないだろうか。

滋賀県警が大津いじめ事件に対する世間の大非難から“復活”して下した「14歳逮捕」という英断を、各都道府県が「いじめ自殺」根絶の第一歩とできるか、私は注目したい。

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