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〝性悪カマラ〟と〝寝ぼけたジョー〟トランプ、早くも人格攻撃開始 - 佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

米民主党の大統領候補、バイデン前副大統領(77)が8月11日、副大統領候補に西部カリフォルニア州選出の黒人女性カマラ・ハリス上院議員(55)を選んだことに対し、迎え撃つ共和党のトランプ大統領(74)は同議員を「とてもナスティ(性悪)だ」と早くも人格攻撃。今後、バイデン氏を揶揄する“寝ぼけたジョー”とともに、この中傷スローガンを連呼することになりそうだ。

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〝ずる賢いヒラリー〟を想起

トランプ大統領はハリス氏が副大統領候補に選ばれた直後の記者会見で、すぐさま同氏に対する猛烈な批判を始めた。「カマラは上院で最もリベラルな人物で、とてもナスティ(性悪)だ。(民主党の指名争いで)寝ぼけたジョー(バイデン氏)に非常に無礼なことを言った。あんな無礼な人物をよく選んだものだ」とバイデン氏をもこき下ろした。

大統領はさらに同夜、今度は友人でもあるフォックステレビのキャスター、ショーン・ハニティ氏のインタビューを受け、ハリス氏の副大統領候補起用は「われわれにとってベストな選択だ。多くの人が同氏を選んだことを危険な選択だと思っている」と批判した。

トランプ氏の黒幕と言われたスティーブン・バノン元首席戦略官はかつて筆者に「民主党候補の中で、トランプ氏の最大の脅威はハリス議員」と語っていたが、この言葉通り、大統領がハリス氏を相当警戒しているのは明らか。12日早朝のツイートでもハリス氏について「民主党の指名争いで最初こそいいスタートを切ったが、ほとんど支持がないまま選挙戦から逃げ去った」と記した。

米メディアによると、トランプ陣営も大統領の発言に合わせるように、ハリス氏攻撃の動画をオンライン上に公開、バイデン氏を左派に引きずり込む〝インチキ〟と決めつけた。トランプ氏は2016年の前回の大統領選で、民主党候補のヒラリー・クリントン氏に〝ずる賢いヒラリー〟というレッテルを張り、遊説中、同氏を「牢屋にぶち込め」と煽り立てた。今回も、〝寝ぼけたジョー〟と〝性悪カマラ〟という中傷スローガンを連呼することが濃厚だ。

大統領はバイデン氏に支持率調査では軒並み劣勢にあったが、7月後半からコロナ禍に関する連日の記者会見を再開、支持率に改善の兆候が見え始めている。世論調査専門の「リアル・クリア・ポリティックス」によると、6月23日の時点で、バイデン氏51.1%、トランプ氏40.9%と10ポイント以上開いていた支持率差が、8月11日には7.2ポイント差まで縮小した。

逆転に望みを掛ける大統領にとって手強いハリス氏の副大統領候補選定はせっかくの支持率回復に急ブレーキを掛けかねない。躍起になってハリス攻撃に出た背景にはこんな事情があると見られている。

「女性」「黒人」が最大の要因

一方、バイデン氏がハリス氏を相棒に選んだ過程や理由も報道などで明らかになりつつある。バイデン氏は早くから副大統領候補には女性を選ぶと公約していたが、この同氏の意向に沿って、ドッド元上院議員ら4人による選定委員会が人選作業を進めた。

その結果、11人の女性候補が最終ステージに残った。さらに「身体検査チーム」が各候補について、それぞれの資産状況、薬物の使用歴、男女関係などを厳しく調査した。バイデン氏は9日間で11人と直接面談し、家族や親しい友人らとも相談したという。

最終的に候補はハリス上院議員、バル・デミングス下院議員(フロリダ州選出)、ランス・ボトムズ・アトランタ市長、スーザン・ライス元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の4人に絞られ、結果的にハリス氏に落ち着いた。その最大の要因は「女性」と「黒人」だった。

前回の選挙でヒラリー・クリントン氏は黒人から圧倒的な支持を受けたオバマ前大統領と比べると、黒人票(有権者の約13%)を思うように獲得できなかった。バイデン氏はこうした点や、白人警察官による黒人殺害事件をきっかけに、「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」という差別撤廃運動が全国に拡大している状況を考慮して決定した。

副大統領就任の瞬間から大統領の座を狙う

この他の選択要因としては、ハリス氏がバイデン氏と同様、中道穏健派に属していること、上院議員としての経験があり、検事出身とあって弁舌が切れることなどが挙げられる。しかし、「あまりに野心的だ」(同)という懸念も強い。副大統領は「目立たないことが最大の仕事」(専門家)といわれるほどだが、ハリス氏に、自分を殺すことができるのかどうか。

同氏はバイデン氏同様、大統領候補指名争いに参加したが、その際のディベート(候補者討論会)で、バイデン氏の上院議員時代の人種差別に関する言動を厳しく攻撃した。ハリス氏はその後、指名争いから撤退し、バイデン氏支持に。バイデン氏は攻撃されたことを「恨みには思っていない」と述べているが、「彼女は副大統領に就任した瞬間から大統領の座を狙う」と警戒する声もある。

もう1つの不安材料はハリス氏が副大統領候補に選ばれたことで、左派や若者が〝バイデン離れ〟を起こす恐れがある点だ。左派や若者はバイデン氏と最後まで指名争いを戦ったサンダース上院議員を支持しており、彼らの主張をいかに政策に取り入れることができるかが、支持拡大のカギになる。

検事から政界入り

ハリス氏はいわゆる奴隷の子孫ではない。父親はジャマイカからの、母親はインドからの移民だ。全米屈指の名門黒人大学ハワード大学からカリフォルニア大学ヘイスティング法学院へ進み、司法試験に合格。2003年にサンフランシスコの地方検事に当選し、2011年にカリフォルニア州司法長官に就任した。

2017年に上院議員に当選して念願の中央政界入りを果たした。バイデン氏の亡くなった息子ボー氏がデラウエア州の司法長官だった関係もあり、バイデン家とは付き合いがあった。子連れの男性と結婚し、2児の母親でもある。長年、警察に近い検事の職にあったため、黒人が要求する警察改革には慎重だと指摘する向きもある。

同氏の地元のカリフォルニア州は強固な民主党の地盤であるため、同氏を選ぶメリットが薄いとの見方も出ている。バイデン氏はこうした懸念を一掃するためにも、ハリス氏とのチケットで17日からウィスコンシン州ミルウォーキーで始まる党大会を機に、選挙運動を一気に盛り上げたい考えだ。

だが、コロナウイルスの感染拡大で大会は事実上「オンライン開催」となるため、どの程度運動に勢いがつくのかは不明だ。大会では、ミシェル・オバマ前大統領夫人、クリントン元大統領、オバマ前大統領らが演説、最終日の20日、バイデン氏が大統領候補指名受諾演説を行い、締めくくる予定。

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