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青森「さっさと帰れ」文書は正当な非難? PCR検査“陰性”の曖昧さも “帰省警察”からみえる課題

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 今月5日、墓参りのために東京から青森市内に新幹線で帰省した男性の実家の玄関に、ある紙が投げ込まれた。「なんでこの時期に東京から来るのですか?知事がテレビで言ってるでしょうが!! 知ってるのかよ!! 良い年して何を考えてるんですか? この通りは小さい子も居るのです。そして高齢者もです。さっさと帰って下さい!! 皆の迷惑になります。安全だと言いきれますか??」。そこには男性を責める内容が、匿名で手書きで書かれていた。

【映像】男性の実家に投げ込まれた紙

 このニュースにインターネットでは「今度は帰省警察か」という声が上がった。コロナ禍では多くの“自粛警察”が出現したが、こうした正義感や使命感に後押しされるという活動にネットでは、「一方的な正義感を振りかざすな」「感染が怖いという気持ちも分かる」といった様々な声がある。

 コロナ禍で浮き彫りとなった私的な制裁。そこにある正義はどこから来て、誰に振りかざされているのか。11日の『ABEMA Prime』は改めて議論した。

■正当な非難? “帰省警察”からみえる課題

 東京から帰省した男性の実家に紙が投げ込まれたことについて、自粛警察を取材しているノンフィクションライターの石戸諭氏は2点を指摘する。

 「この時期に東京から帰省しない方がいい、移動しない方がいいということは、公衆衛生の視点から考えるとある程度正しい行動だと言えるのではないか。ここがポイントで、答えがあることが絶対的に正しいということで『このくらい言っていいのだ』と思ってしまい、ある程度暴力的に振る舞うことができてしまう。一方で、人それぞれには事情があると思うことも大事だ。帰省自体が悪いとは僕も思わないし、やむにやまれぬ理由で帰るという場合もある。また、実家に帰って墓参りするくらいであれば、ほとんど誰とも接触がないというのと同義だろう。どのくらい誰と接触するのかというところまで考えなければ、リスクを高める行為かということも判断できない。赤の他人がきつく言えるのかというのは考えなければならない」

 青森県の三村知事は4日、「一律に自粛をお願いすることはできる限り避けたい。県民には帰省される方々を温かい心で受け入れて欲しい」との見解を示した。一方、東京都の小池知事は6日「この夏は特別な夏として旅行・帰省・夜間の会食・遠くへの外出を控えて欲しい」としていて、自治体が発信するメッセージをどう受け止めるかも行動に影響すると言えそうだ。

 その他の東北地方の首長発言を見てみてみると、「感染拡大地域からの帰省は慎重に。今年は静かなお盆にしてもらいたい」(山形)、「帰省は家族と相談するなど慎重に」(宮城)、「家族に高齢者や病人がいる場合、控えて欲しい」(福島)と慎重な対応を呼びかける一方、「帰省・県内訪問をぜひ控えて欲しい」(秋田)、「対策を講じて、岩手に来て欲しい」(岩手)と反対の内容を呼びかける県もある。

 帰省について石戸氏は個人が判断するべきだといい、「例えば、東京や大阪、名古屋などそれなりに感染者が多く出ているところから帰省して、高齢者と接触するのはリスクがある。これを避けましょうというのはわかるが、感染が広がっていないエリア同士で行き来することの何が問題なのかはよくわからない。リスクを高める行動はやめようというのは、国や自治体の長が言うよりも個々人で考えられる領域だ」と話す。

 また、「BlackDiamond」リーダーのあおちゃんぺは「帰省がありかなしかというよりも、家族や周りの人のことを考えたら、私はできないと思っている。それは、どっちが正しいにしろ手紙を投げ込む人が判断することではない。危険だと思って手紙投げ込むくらい嫌だと考えているのに、よくその家に寄り付いたなという矛盾を感じる」と指摘。

 これに石戸氏は「投げ込んだ人が何か直接的な迷惑をかけられたかというのは、問うべき大事なところだと思う。しかし、迷惑をかけられていないからこそ強く出られるということが色々な研究で示されている。迷惑をかけられていなくても人間はこういう行動に出てしまう、迷惑をかけられていないからこそ強く出られるというのは、抑えておかなければならない」とした。

 ジャーナリストの堀潤氏は「コロナに限らず、この10年いろいろな分断の現場を取材してきて感じるのは、必ず大きい主語がのさばっていることだ。今回だと“知事は・東京は・感染者は・地方は”といったもの。大きな主語の正体は固定観念というイメージだが、本来は一人ひとり違って、自粛警察と括られる人たちでさえも各々いろいろな主張や背景がある。ここで必要なのは、そういう大きい主語に乗っからずに、ただただ小さな主語の個別具体例を積み上げていくようなメディアのアプローチ。そのためには現場に足を運ばなければならない。ただ、今コロナで現場を丁寧に訪ね歩くことに制限がある中では、『こういった大きい主語が跋扈しやすいから丁寧に見よう』と呼びかけていく必要があると思う」と述べた。

■“東京の感染者数だけ”の報道に問題も? 誰もが自粛警察になる可能性

 東京の感染者報道に対して、Twitterでは「マスコミが毎日『東京の』コロナ感染者数『だけ』報じる」という声や、そうした情報が連日報道されることで国民に東京への不安が植え付けられ、東京差別につながっているとする見方もある。

 感染者ゼロが続くタイに移住しているWEBクリエイターのシモダテツヤ氏は「海外から来たエジプト軍40人くらいが感染していたというニュースが流れた時、0人がずっと続いていたというプライドが国民全体にあって、『リスクに晒してくれてどうしてくれるのか』といった意見はタイ人の友人たちからも聞かれた。その気持ちも分かるが、今回のことに関してはそれぞれに事情がある。紙を投げつけて一方的に言い放つというのは、その人は憂さ晴らしをしたかったのではないか、ストレス発散したかったのではないかというくらい言いっぱなしだ。相手の事情を聞く耳も持たない、議論をする気がないところが、自粛警察の気持ち悪いところだと感じた」と苦言を呈する。

 ウイルスによる感染症には、感染症そのものが広がる第1段階と、感染に対する不安や恐怖心が広がる「心理的感染症」の第2段階、不安や恐怖がベースとなり特定の人たちに対する差別、偏見、嫌悪が広がる「社会的感染症」の第3段階があるとされている。

 石戸氏は今がその社会的感染症の段階だとした上で、「この時に自粛警察の行動を駆り立てているものは何かというと、『東京って危なさそう』『来た人は感染している人だと思った方が良い、その方が安全だ』といったゼロリスク的な考え方だ。これはいろいろなところであって、『東京でこれだけ感染が広がっているのに帰省するなんて』と思っている人は意外と多い。その中で紙を投げ込むといったことをする人たちは行動こそ極端だが、どこにでも起きるし、誰でもなり得るというところにもう少し着目していかなければならない」と懸念を示す。

 堀氏も“イメージの世界”だとし、「イメージを打ち破るには実際にこうだということを伝えていかなければならない。自粛警察でパチンコが話題になったが、この前どんな感じかなと思って久しぶりにお店に行った。今パチンコメーカーは技術開発を進めていて、自動で台のところに『消毒済み』『消毒必要』ということが出る。それを店員にもお客さんにも周知している。実際に足を運んでみると『パチンコ屋はこういうことやっているのか』『実際には静かだな』という発見があって、そこまで丁寧にケアしていくような伝え方が必要だ。『パチンコ店は』ではやはりダメだ」と指摘。

 誰でも自粛警察になりうるという点についてカンニング竹山は、「一方的なことを言われて、感情的になって自分が嫌だったこと以上のことを他人にやる。その時に相手が嫌がるだろうという想像力がつかないわけだ。これはTwitterに似ているなと思う。何かの事件をテレビやメディアで見た時に、『腹立つなこいつ』『腹立つなこの事件』と感情的にツイートする。一方的な感情で想像力がないから、後で叩かれていろいろなことがあっても忘れてしまう。人間は誰しもそういった感情に惑わされるところがあって、その行動とまったく同じだと思う」と話した。

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