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放送作家に求められる「雑談力」 検索で見つけられない“無駄な情報”は耳から手に入れろ

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放送作家の仕事は、なかなか想像しづらいものだと思う。学校の先生、警察官、消防士、看護師、職人、YouTuber、プロゲーマー…子どもたちに人気の職業は、仕事をしている様子を絵に描くことができる。

「じゃあ、放送作家が仕事をしている絵を描いてみよう!」と言われて、的確な絵を描ける子どもがいるだろうか。子どもどころか、きっと大人でも難しい。

テレビの放送作家は、番組の最後にテロップで名前が出る。番組によっては会議の現場が映ることもある。「この企画を考えたのが作家なんだろう」、「このクイズ、このナレーションを考えたのが作家なんじゃないか」という想像ができる。

「あの番組でもこの番組でもテロップに出てきたから、この作家は人気なんだな」ということもわかる。くわえて、有名な放送作家はタレント化し、放送作家の肩書きでメディアに出演する。

スタッフロールのないラジオ 誰が何をやっているのか


では、ラジオの放送作家はどうか。ラジオは“音のみのメディア”なので、スタッフの名前が出てくるテロップはない。名前が読み上げられない限りスタッフの名前はわからない。

往年の名番組、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」では、エンディングで放送日を担当したスタッフの名前が紹介された。しかしこれは異例中の異例。スタッフの肩書きと名前がしっかり紹介される番組は、ほとんどない。

ラジオドラマ、朗読の脚本がある場合は紹介されるが、トークや音楽が主体の生放送や、15分から30分の録音番組で紹介されることは、きわめて少ない。パーソナリティが「作家の◯◯が」「ディレクターの◯◯さんが」「ADの◯◯ちゃんが」「ミキサーの◯◯さんが」とトークの中で出した時、スタジオの周りにいるスタッフたちが見えてくる。

ただ、「どんな仕事をしている」ということに言及することはほとんどない。そのスタッフの人間性について触れることが多く、仕事・作業の内容、どんな分担で何をやっているのかは明らかにされない。

ラジオには様々な企画やコーナーがある。とはいえ、どこからがディレクターの演出で、どこからがパーソナリティの思いつきで、どこが放送作家の書いた台本・思惑なのか、リスナーは知る由もない。

映像がないメディアだからこそ、パーソナリティが「自らメモしたこと」を話しているのか、「作家が台本に書いたこと」を読んでいるのか、ディレクターに「ここはこのトークで」「こんな展開で」と言われてそのトークをしているのかは、現場にいなければわからない。

「アイドルのラジオは完全台本」という都市伝説

「トーク力のないパーソナリティ、たとえば若いアイドルのラジオは作家の書いた完全台本なんでしょう?」と言われることがしばしばあるが、ほぼほぼそんなことはない。少なくとも自分は書いたことがない。理由はたくさんある。

まず、売れているアイドル(アイドルに限らず他の職種でも)であればあるほど、収録スケジュールがなかなかとれず、1度の収録で複数回分とるので、15分なり30分なりの完全台本を書く時間はない。

そして、仮に完全台本があったとして、トーク力のない人が何十分もうまく読みこなせるわけがない。むしろ、技術の必要なことだ。また、収録、生放送を重ねていく中で喋ることに「慣れて」くる。トークがうまくなるかは人それぞれだが、3回収録したあたりで緊張がほぐれてきて、ラジオ番組の形ができあがっていく。

「トーク力がない上に、ブースの中で喋ることに慣れていない」のは、番組の立ち上がりだけに見られるレアな時期。ここを無理して「うまく喋らせる」のは、ラジオ的においしくない。番組が長く続いた時に「では、初回の音源を聞いてみましょう」「やめてください!」のくだりができなくなるからだ。このように、様々な理由で“完全台本なるもの”は作らない。

となるといよいよラジオの放送作家はいったい何をしているのか、やっぱり見えてこない。笑い声はよく聞こえてくる。AMのラジオではパーソナリティによくいじられているが、どこからどこまでの仕事をしたのかわからない。

「ネタを選んだのはパーソナリティ?放送作家?ディレクター?」「フリートークに作家の入れ知恵はある?ない?」「このコーナーはパーソナリティとリスナーがノリで生放送中に立ち上げたはずだよな…」、「この番組、ずっとコーナーもジングルも変わってないよなあ。仕事してんの?」…ラジオの放送作家って、なんなんだ。。。

一言で言ってしまえば、ラジオの放送作家の仕事は「番組による」

…という、これまたケムに巻いた返答しかできないのが現実だ。

テレビとラジオで違う放送作家の役割


以前私は、たった一度だけテレビ番組の構成に関わったことがある。深夜に流れる1時間の特別番組。そこで、テレビを主戦場にする放送作家の皆さん、テレビ局のディレクターとご一緒した。会議は、ラジオと比べて緻密に感じた。

収録のクイズ番組ということもあり、成立感とバラエティ要素のバランスの微修正、時にフルチェンジ、さらにシミュレーションと、ラジオではありえない時間の使い方で会議が重ねられた。そのきめ細やかさが印象に残っている。

また、テレビのヒット番組を多数手がけた女性放送作家と、ラジオ番組で共に構成をつとめたことがある。その女性の放送作家は、とにかく喋っていた。打ち合わせも独壇場。パーソナリティがカフをあげる直前まで喋り続けていた。

当時私は26歳、放送作家6年目。大学を7年かけて卒業し「放送作家1本でやっていくんだな」と思っていた時期だった。「この世界には、こんなに喋る放送作家がいるのか!」「こういう人が仕事をたくさんもらうのか!」「負けてもいいから、こういう人と戦う(対応、対抗し、凌駕するようなエピソードを出す)ことが大事なんだ」と直感し、打ち合わせやスタジオブース内で張り合った。その後を考えると、その勘は正しかったと思う。

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