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「被爆国日本には核兵器禁止条約に参加する責務がある」(朝日社説)に反論する

10日付けの朝日新聞社説は、『被爆国の首相 核禁条約に参画せよ』との社説を掲げています。

(社説)被爆国の首相 核禁条約に参画せよ
2020年8月10日 5時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S14581407.html?iref=pc_rensai_long_16_article

社説は冒頭、安倍首相に「核兵器禁止条約に背を向けるのではなく、参画に向けて動くべき」と要求します。

 安倍首相に改めて求める。唯一の戦争被爆国として、核兵器の開発や実験、製造、保有、使用などを許さない核兵器禁止条約に背を向けるのではなく、参画に向けて動くべきだ。

朝日社説はその結語で、「核兵器は「必要悪」ではなく「絶対悪」だ。核禁条約が体現するこの考えを追求する責務が、日本にはある」と結ばれています。

 核兵器は「必要悪」ではなく「絶対悪」だ。核禁条約が体現するこの考えを追求する責務が、日本にはある。「核の傘=核禁条約に不参加」という思考停止に陥ってはならない。

日本の核禁条約の参加・不参加の是非はここでは問いません。

私が強く違和感をもったのは、朝日の次の主張です。

(唯一の被爆国である)日本には核禁条約が体現するこの考えを追求する責務がある

なぜ原爆を一方的に投下された被爆国日本に、核兵器禁止条約参加に対する「責務」すなわち「責任と義務」が生じてしまうのか、加害側のアメリカにこそ「責務」があるのではないのか?

少し歴史を振り返ります。

1945年8月6日午前8時15分、B-29(エノラ・ゲイ)によって投下された原子爆弾リトルボーイは広島市内ほぼ中央に位置するT字形の相生橋が目標点のほぼ上空580メートルで炸裂しました。

全長3.12m、最大直径0.75m、総重量約5t、濃縮ウラン型のこのリトルボーイ (Little Boy) は、甚大な被害をもたらしました、当時の広島市内には34万人の人がいた中で、爆心地から1.2kmの範囲では8月6日中に50%の人が死亡、12月末までに14万人が死亡したと推定されています。

つづく8月9日に長崎への原爆投下とソ連の対日宣戦布告があります。

8月9日午前11時2分、B-29(ボックスカー)が長崎市に原子爆弾ファットマンを投下いたします。

長さ3.25m、直径1.52m、重量4.5t、プルトニウム型のファットマン(Fat Man)は、長崎市の北部(現在の松山町)の上空550mで炸裂いたします。

当時、長崎市の人口は推定24万人、長崎市の同年12月末の集計によると被害は、死者7万3884人にのぼります。

この長崎原爆投下のわずか6日後の8月15日、日本国政府はポツダム宣言を受諾、連合国に対し無条件降伏を宣言いたします。

長崎市のサイト『長崎市平和・原爆 原爆の記録』では、アメリカによる原爆投下の理由を次のように説明しています。

原爆投下への道

1938年(昭和13年)にドイツで発見された核分裂は、原爆に応用できることが示唆された。 1942年(昭和17年)、アメリカはマンハッタン計画を発足させ、当時の日本の国家予算をしのぐ巨費を投じて原爆を開発した。

原爆はドイツを対象に開発されたが、後に目標を日本に変更、京都など18か所が候補に上がったが、結局、1945年(昭和20年)8月6日広島、同9日長崎に投下された。

原爆投下の理由として、早期終戦のためと言われているが、20億ドルを投じたマンハッタン計画を誇示する目的もあった。また、ソ連との冷たい戦争の最初の作戦という性格も持っていた。

https://nagasakipeace.jp/japanese/atomic/record/sequence/kaihatsu.html

実は「原爆投下」の理由は必ずしも「早期終戦のため」だけではありませんでした。

米紙ロサンゼルス・タイムズは5日、広島、長崎への原爆投下を巡り「米国は核時代の幕を開ける必要はなかった」と題し歴史家らが寄稿した記事を掲載しています。

Op-Ed: U.S. leaders knew we didn’t have to drop atomic bombs on Japan to win the war. We did it anyway

https://www.latimes.com/opinion/story/2020-08-05/hiroshima-anniversary-japan-atomic-bombs

記事によれば、トルーマン大統領(当時)が原爆を使わなくとも日本が近く降伏すると認識していたことは証明済みだと指摘しています。

暗号解読によって,日本がソ連を通じて和平交渉を求めていることを知ったアメリカは、ソ連の対日参戦前に日本は降伏してしまう可能性を逆に恐れます。

最強兵器の威力を実証しないうちに大戦が終了すれば、戦後、米議会は原爆の威力を理解できず、予算を縮小するであろう。さらに、世界最強の軍隊であることを証明をする機会も失えば、ソ連を抑えて世界の覇権を掌握することも困難になるからです。

アメリカが急いで8月6日と8月9日に2種類の原子爆弾を投下した理由は、「日本を降伏させるため」という通説とは逆に、日本が降伏する前に原爆を投下してその威力を見せつけるためだったのだといいます。

・・・

京都を含めた18の原爆投下候補都市の中から、広島、長崎の2都市が選択されたのは完全にアメリカの都合です。

特に長崎は、本当の投下予定の小倉市の天候が悪く当日長崎に変更されたものです。

我が国が唯一の被爆国になったその責任は、さまざまな理由により原爆投下を強行したアメリカにあることは明白であります。

アメリカの原爆投下のその戦争犯罪性は厳しく議論されて当然でありましょうし、筆舌に尽くしがたい苦痛を味わってきた被爆者やその家族の心情を思い計ることは、唯一の被爆国である日本にとり決して軽視してはいけない大切な当然の配慮でありましょう。

朝日新聞は主張します。

原爆を一方的に投下された被爆国日本に、核兵器禁止条約参加に対する「責務」すなわち「責任と義務」があるのだと。

なぜ爆弾を投下する側ではなく投下された側に「責任と義務」が発生するというのか?

日本が降伏する前にその威力を見せつけるために原爆を投下したアメリカ、その身勝手な投下理由の加害者アメリカの「責務」ではなく、唯一の被爆国・被害者日本に「責務」が発生してしまうのか?

無論、被害者日本に「核兵器禁止」を主張する「権利」があるのは自明です。

その意味で長崎市長や広島市長の「核兵器禁止」の主張を尊重いたします。

また筆舌に尽くしがたい苦痛を味わってきた被爆者やその家族の心情を思い計ることは、唯一の被爆国である日本にとり決して軽視してはいけない大切な当然の配慮でありましょう。

しかしそれらは「責務」では断じてないはずです。

(木走まさみず)

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