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鈍化する陽性者拡大 ~「日本モデル」vs.「西浦モデル2.0」の正念場(その5)~

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なお私自身は、尾身会長をはじめとする「旧専門家会議」「分科会」メンバーのこれまでの貢献を高く評価し、現在も強く支持し続けている。特に押谷仁教授の役割は、大絶賛をし続けてきている。最近いささか世間での「分科会」に対する風当たりが強くなってきたことをふまえて、Twitterに「尾身先生・押谷先生を守る会を作りたいくらいだ」と書いたところ、多くの方々の賛同を得た。実際には、私はそうした運動系のことを自分自身で主導するのは苦手なので、代わりに「日本モデル」がなぜ「押谷モデル」であるのかについて、今後数回にわたって書いていくことにする。そしてそれをもって私の熱烈な押谷先生への称賛の証としたい。

現在でもポイントとなっている「日本モデル」の重症者中心主義は、2月下旬ころからはっきりと形になってきた。尾身先生・押谷先生らが構成した「専門家会議」が2月中旬に招集されたからだ。

2月25日に決定された新型コロナウイルス感染症対策本部の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では、次のような考え方が示されていた。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/kihonhousin.pdf 

――――――――――――――

・感染拡大防止策で、まずは流行の早期終息を目指しつつ、 患者の増加のスピードを可能な限り抑制し、流行の規模を抑える。

・重症者の発生を最小限に食い止めるべく万全を尽くす。

・社会・経済へのインパクトを最小限にとどめる。

―――――――――――――――――

 日本は当初から、感染の流行の終息の可能性を求めるものの、現実には「重症者対策を中心とした医療提供体制等の必要な体制を整え」ながら、「患者の増加のスピードを抑制すること」を目標としてきた。

 一日あたりの新規陽性者数を〇〇人以下にする、などといった思慮のない目標は、一度たりとも立てたことがない。マスコミが勝手に言っているだけの事柄である。

 結局、マスコミが新型コロナでやっているのは、自衛隊を中心とした防衛政策をとって日本を守っている政府に対して、自衛隊を違憲として廃止したうえで完全な日本の安全を達成していないから政府はダメだ、とキャンペーンして糾弾しているような無責任かつ非現実的なことである。

 前回の文章でも書いたように、この背景には、2月中旬の段階で、感染の封じ込めは事実上は不可能と厳しい判断をしたうえで、新型コロナは感染力は高いが重症化率は低い(危険なのは高齢者と基礎疾患保持者)という的確な洞察にもとづき、重症者(死者)の抑制に優先的に資源配分できる体制をとるべきだと考えた押谷教授らの英断があった。

 SARSやMERSの被害経験があった諸国では、早期の中国からの入国制限などの水際対策措置が取られていた。台湾、韓国、シンガポール、ベトナムなどの超優良成績の諸国は、経験を生かして早期に動き、その後も封じ込め政策をとり続けている国々である。

 これに対して3月になってから短期間で慌てて強力なロックダウン措置をとりながら医療機関の負担を考えずに指針なき盲目的な検査などを行い続けた欧米諸国では、医療崩壊現象が起こり、膨大な数の死者が生まれてしまった。当時はそれが標準的な新型コロナの被害想定だとみなす「西浦モデル」的な理解もあったが、それから数カ月たち、世界各地の感染状況も見るならば、単純に当時の欧米諸国の致死率が異常であったことが明らかである。

 現在の欧米諸国は、もはや封じ込めは目指さず緩やかな感染速度の管理を目指す政策に転換している。結果は、致死率の大幅な改善が果たされている。

 「日本モデル」の過大評価は、3月の欧米諸国の経験とのみ比較して、日本の成績を過度に良いものとみなしすぎる態度である。逆に「日本モデル」の過小評価は、早期対応で封じ込め政策をとることが可能となったアジア諸国とのみ比較して、日本の成績を過度に悪いものとみなしすぎる態度である。

 「日本モデル」は、封じ込めが不可能になった諸国(SARS/MERSの直撃を受けなかった諸国)の中で、極めて良好な成績を保っている。なぜなら早期対応で封じ込めを狙った諸国に後れを取ったため、もはや封じ込めは不可能だと判断することになった諸国の間においては、最も早くその判断を行ったのが、日本だったからだ。

 すべては押谷教授ら真正な専門家たちの素晴らしい状況判断が2月中旬に行われたからである。

 今頃になって、国民自己負担も課して数十兆円を投入し、経営悪化した病院関係者を片っ端から検査技師に作り替え、管理費なども上手く業務委託して、全国民毎週PCR検査を行って新型コロナを撲滅する国民運動を起こそう、といったことを厚顔無恥にもテレビで主張している人たちがいる。

 罪深いことだ。

 ロックダウン解除になったばかりの時期のニューヨークを都合よく脚色して宣伝に使っているようだ。それで、もしニューヨークだけは絶対に今後も感染者の増加することはありえないという大胆な主張が外れた場合には、丸坊主にでもなってテレビに出て謝罪して「自分の学者声明は終わりました」と宣言してくれる覚悟だというのだから、すごい話である。

 私自身は、謙虚に押谷先生らの功績を認めることが本当に大事であると考えている。そして、今後も引き続き国民の英雄と呼ぶべき尾身先生・押谷先生らを強く支持していきたいと思っている。

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