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米7月雇用統計:労働参加率は高学歴、働き盛りの男性で低下

米7月雇用統計は、就労者数の増加など労働市場の回復継続を示した半面、長期失業者が増加していたほか労働参加率が低下するなど、質的な改善にはブレーキがかかりました。では、結果の詳細をみていきましょう。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職部門(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.4%下落の24.63ドル

ヘッドラインでは上昇に転じたものの、前月の0.9%下落に続き3ヵ月連続でマイナスとなった。

業種別を前月比でみると、NFPの雇用増の約3割を占めた娯楽・宿泊が0.2%下落したほか、年初来で少なくとも43社が破産申請を行った小売に至っては3.4%の下落と過去最大のマイナスとなる。

その他の業種も下落が目立ち、上昇したのは製造業を始め、情報と金融の3種のみとなる。

チャート:業種別、前年比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率は、ヘッドライン同様より低下が目立った。全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字で以下の通り。そ25~34歳を除き改善にブレーキが掛かった。

・25~54歳 87.6%<前月は87.9%、6ヵ月平均は87.9%
・25~54歳(白人)88.6%<前月は89.2%、6ヵ月平均は89.2%
・25~34歳 86.1%=前月は86.1%、6ヵ月平均は87.0%
・25~34歳(白人) 87.4%>前月は88.2%、6ヵ月平均は88.7%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率

(作成:My Big Apple NY)

〇非労働力人口

非労働力人口に属し現在職を探していないものの「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で5.6%減の773.2万人(男性は372.8万人、女性は400.4万人)。過去最多をつけた4月でピークアウトし3ヵ月連続で減少した。

一方で、今回は3ヵ月ぶりに女性が男性を上回った

チャート:就職を望む非労働力人口

(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の労働参加率は、アジア系を除き全て低下した。

・白人 61.4%<前月は61.6%、6ヵ月平均は62.0%
・黒人 60.2%<前月は61.6%、6ヵ月平均は61.1%
・ヒスパニック 64.6%<前月は65.5%、6ヵ月平均は65.8%
・アジア系 63.4%>前月は61.4%、6ヵ月平均は62.6%
・全米 61.9%<前月は62.2%、6ヵ月平均は61.9%

チャート:人種別の労働参加率

(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、労働参加率が上昇したアジア系の低下が目立った。労働参加率が前月以下だったヒスパニック系と白人は、3ヵ月連続で下向いた。5月に過去最悪を更新した黒人系も2ヵ月連続で低下した。

・白人 9.1%<前月は10.1%、6ヵ月平均は8.0%
・黒人 14.6%<前月は15.4%、6ヵ月平均は11.7%
・ヒスパニック 12.9%<前月は14.5%、6ヵ月平均は14.5%
・アジア系 12.0%<前月は13.8%、6ヵ月平均は9.3%
・全米 10.2%<前月は11.1%、6ヵ月平均は8.7%

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒と高卒で3ヵ月連続の改善を示した。しかし、短大卒と大卒は2ヵ月ぶりに低下に転じた。

・中卒以下 41.9%、1997年2月以来の低水準<前月は42.8%、6ヵ月平均は45.1%
・高卒 55.0%>前月は54.6%と1992年以降で最低、6ヵ月平均は57.1%
・大卒以上 71.9%>前月は71.6%と1992年以降で最低、6ヵ月平均は72.8%
・全米 60.8%>前月は60.2%、1973年以来の低水準、6ヵ月平均は62.3%

チャート:学齢別の労働参加率

(作成:My Big Apple NY)

学歴別の失業率は労働参加率が改善した中卒以下と高卒、また労働参加率が下向いた大卒以上が3ヵ月連続で低下した。

一方で、院卒は2ヵ月連続で横ばいを経て、今回上昇に転じた。1992年のデータ取得範囲内での最悪から改善した

・中卒以下 19.9%<前月は21.2%と過去最悪、6ヵ月平均は10.7%
・高卒 15.3%<前月は17.3%と過去最悪、6ヵ月平均は8.0%
・大卒以上 7.4%<前月は8.4%と過去最悪、6ヵ月平均は4.0%
・大学院卒以上 5.6%<前月は6.7%と過去最悪、6ヵ月平均は3.4%
・全米 13.3%<前月は14.7%と過去最悪、6ヵ月平均は7.2%

――今回、管理職以外の平均時給は情報や公益、製造業以外で下落しました。需要の弱さの他、失業保険拡充の期限切れを視野に雇用主が従業員獲得のための賃金上乗せ分を抑制した可能性があります。

経済活動再開の一時停止が影響したのか、働き盛りの男性、アジア系以外の人種別の労働参加率は低下してしまいました。

結果的に全体的な失業率の低下につながったものの、労働市場の改善を裏打ちした低下とは言えません。

NFPの増加のうち約3割が娯楽・宿泊だったように、学歴別の労働参加率は中卒以下と高卒以上がそろって改善しました。両者は失業率も3ヵ月連続で低下し、感染者の急増を回避する州での経済活動再開などが回復につながったと考えられます。

しかし、大卒以上は労働参加率が低下、院卒以上の失業率は上昇。高所得の職の一部の回復に鈍化の兆しが現れています。米7月雇用統計・NFPなど表面上は明るい内容でしたが、7月FOMCで強力な緩和が必要とパウエル議長が発言したように、コロナ前の水準を取り戻すには長い時間が掛かりそうです。

(カバー写真:Eden, Janine and Jim/Flickr)

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