記事

イソジン会見がさらした専門家の堕落への絶望

1/2
吉村大阪府知事らが実施した「イソジンによるうがい」推奨会見は、医療関係者の皆様からさんざんに叩かれているが、「正しさの程度が低い」情報の垂れ流しを黙認しているという点では、専門家筋も大きな顔ができるのか、と突っ込んでおきたい。

まず、イソジン会見については科学的知見に政治家が首を突っ込む危うさを露呈させたという意味で、有意義であった面はある。

通常、医薬品の科学的妥当性は動物/臨床試験のプロトコールに従って発表された研究の数と質で決定、さらに上市後の調査によって副作用や相互作用の有無が確認されたうえで、学会でのリスク/ベネフィット評価を経て、ようやく治療のスタンダードになる。

このような面倒な手続きを踏むのはパンデミック下では妥当ではないので、緊急の会見はやむを得ない。

というのが知事側の主張でしょうけど、過去の研究でよりリスク/ベネフィットの成績が良いと結果が出ている水うがいを無視している時点で、少なくともわざわざ記者会見するようなレベルのものではないのは明らか。

ダメさが爆発しているのがノーカット会見動画で、吉村府知事も松井市長もふつうにうがいするよりもイソジンでうがいするほうが効果があったという発見だ、と発言している(吉村5:23付近、松井1:02:15付近)ところ。

府が公表した資料にはハッキリと「うがい群と非うがい群を毎日PCR検査した結果」と書かれているのだから、両氏の発言は自分たちの作った資料もちゃんと読んでいない証拠で弁明の余地もないが、もっと心底ダメなのは、会見に同席している専門家(松山医師)が誤解したまま会見を続ける政治家に対して「それは違う」と訂正を入れないところだ。

科学者は政治とは別で科学的知見の正当性について、毅然とした立場を維持しなければならない。
なぜならば、科学者の発言の背後に、視聴者は科学的な手続きに対する信頼性を暗黙のうちに了解しているからだ。
専門家の発言が素人の発言よりも信頼できるものとして世間に流通する理由は、自然科学の知見は政治に忖度されない、という素朴な倫理観(への信頼)に寄りかかっている。

松山医師はその後、水うがいのほうが予防効果はある、と発言しているみたいだが(参考)、会見の時点で(水うがいのほうが予防効果があるという京大の研究を)知らなかったはずがない。

本来なら政治家(府知事、市長)の不十分な科学的知見をなだめ、「誘惑」を排除する役割を担うはずの専門家が逆に政治家の点数獲得を煽ってしまうのは、積み上げられてきた科学的知見への背任行為ではないか。

イソジンは予防効果ではなく、重症化を防ぐために有効だから会見した、という言い訳も見かけ上、成立するが、これは誰が見ても茶番だ。

重症者数/陽性判明者数が0.3%(8/7現在)程度の状況で、重症化を防ぐ手段をテレビの会見で放映する妥当性は低い。

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    紗倉まな 性産業廃止は「暴論」

    ABEMA TIMES

  2. 2

    「愛子天皇」誕生の機運が高まる

    文春オンライン

  3. 3

    コロナで無視できなくなったMMT

    自由人

  4. 4

    なぜヤフコメ欄は無くせないのか

    諌山裕

  5. 5

    安倍疑惑追及に弁護士視点で苦言

    青山まさゆき

  6. 6

    ディズニーが中国依存強め大誤算

    PRESIDENT Online

  7. 7

    NTTがドコモTOBを発表 1株3900円

    ロイター

  8. 8

    開成退学処分 謎呼ぶ替え玉騒動

    NEWSポストセブン

  9. 9

    生きてれば 半沢妻の言葉に感動

    松田公太

  10. 10

    不便なマイナンバーの改善を急げ

    WEDGE Infinity

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。