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「原爆が100万人の命を救った」アメリカの言い訳を垂れ流すNHKの罪

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■事実を伝えず、アメリカの代わりに原爆を正当化するメディア

なぜ「賛成派」ないし「仕方なかった派」だけを番組に取り上げるのでしょうか。まるで、「原爆の使用は戦争終結のためにしかたなかった。結果として多くの人が救われたのだ」というアメリカ側のためのプロパガンダをやっているみたいです。

現在では、アメリカの歴史研究者ですら以下の事実を認めています。

英米ソがヨーロッパやアジアの戦後処理を話し合っていた1945年7月の段階で、アメリカは日本との戦争を終らせる選択肢は4つ、(1)本土上陸作戦を行う(2)皇室維持を条件として認めた降伏勧告を出す(3)原爆を投下する(4)ソ連の参戦を待つ、つまり、本土上陸作戦か原爆投下の2者選択ではなかった、ということです。

とくに、アメリカは、皇室維持という条件を提示すれば日本が降伏する可能性がきわめて高いことも知っていました。ですから、原爆投下か本土上陸作戦かしか選択肢がなく、多数のアメリカ兵の命が失われないように前者を選んだというのは事実ではありません。

ところがNHKの番組は日本の視聴者に事実を伝えず、アメリカのために原爆正当化のプロパガンダを行っているのです。

■広島、長崎の市民は、アメリカの対ソ連アピールのため犠牲になった

また、同番組はシラードに多くを語らせているのですが、彼の重要な証言は紹介していません。

有馬哲夫『日本人はなぜ自虐的になったのか:占領とWGIP』(新潮新書)
有馬哲夫『日本人はなぜ自虐的になったのか:占領とWGIP』(新潮新書)

彼は、原爆の威力を見せつけることが、ソ連への威嚇になるとアメリカ政府が考えていた旨を証言しています。この証言は、研究者の間では常識となっていて「アメリカはソ連のヨーロッパでの勢力拡大を抑止するために原爆を使った」という主張の根拠としてよく使われています。

要はアメリカ兵の命を救うためではなく、アメリカの軍事力をソ連にアピールするために、あのような残酷な仕方で広島、長崎の市民の命を奪ったのです。

なぜ国民から受信料を取りたてている公共放送NHKが日本の放送法にうたわれている公平原則に反する番組を制作するのでしょうか。スタッフは、占領軍にとって都合のよい「自虐バイアス」と「敗戦ギルト」の持ち主であるとしか答えようがありません。新著『日本人はなぜ自虐的になったのか』で述べたように、WGIPの影響はかくも根深いのです。

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有馬 哲夫(ありま・てつお)
早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『歴史問題の正解』など。
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(早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究) 有馬 哲夫)

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