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「現代の価値観や生活様式の変化。結婚制度が見直される日も近いです」 - 賢人論。第118回(中編)女性学・英文学研究者 田嶋陽子

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1980年代から“ラディカル・フェミニズムの旗手”として活躍している田嶋陽子氏は、2001年からおよそ2年間、参議院議員として国政に携わった経験を持つ。新型コロナウイルスの感染拡大が世界の状況を一変させている今、日本社会の現状が田嶋氏の眼にどう映っているのか。ほか先進国と比較しながら、今後のわが国の性別役割分業や結婚制度などについて、「TVタックル」時代から変わらない “歯に衣着せぬ”論調で思う存分語っていただいた。なお、このインタビューも、感染予防を徹底するためにリモートで行われた。

取材・文/盛田栄一 撮影/遠山匠

先進国の中でも男性の家事分担率が著しく低い日本

みんなの介護 新型コロナ感染拡大防止のために、在宅勤務を導入する企業が増えています。日本企業でも、例えば富士通は、2022年度末までのオフィスの規模を半減、国内約8万人のグループ社員を対象に在宅勤務を標準とする働き方に改めるそうです。

 これまで外にいる時間の長かった夫が自宅で長時間過ごすことになるわけですが、今後日本の家庭における夫と妻の関係はどのように変化していくと思われますか。

田嶋 在宅時間が長くなった分、夫が積極的に家事に参加するようになれば、その夫婦は今後も仲良く暮らしていけるでしょうね。

「在宅勤務が増えたおかげで夫婦仲が良くなった」という話はあまり聞きません。若夫婦と中年夫婦でもまた違うかもしれませんが。世界的に見ても、日本の男性は家事にほとんど参加してません。

 日本では、専業主婦のお母さんが家事すべてをするのがあたり前になっているので、男の子には家事を教えるより「勉強しなさい」ですものね。ただ私が見る限り、共働きの家庭の子どもは、男の子も女の子も自立度が高いです。

みんなの介護 なぜ日本の男性は、家事に積極的に参加しようとしないとお考えですか。

田嶋 昔の「男子厨房に入らず」という言葉に象徴されるように、日本では家父長制の時代が長く、家事のように「煩雑でお金にならない仕事は女にやらせるべき」という考え方が今も根強く残っているからです。

 私の本(『愛という名の支配』)にも書きましたが、男性は女性に家事を押しつけ、そうすることで、男性より女性を一段と低い地位におとしめて、蔑視するようになった。女性は男性から二重の意味で差別されてきました。

みんなの介護 なるほど。日本の女性にとって厚く高い壁がまだあるのですね…。

田嶋 ただ近頃、男性が、家事代行、介護代行の分野に入り始めたので、同一労働、同一賃金が実行されれば、女性の待遇も良くなるかと。主張しないとダメですね。

みんなの介護 諸外国の男性は、日本の男性よりもっと積極的に家事をしているとよく耳にしますが、田嶋さんはどのように見ていますか。

田嶋 欧米の男性は、今では皆あたり前のように家事に参加しますね。少し古いデータになりますが、2020年の国際調査で、子どものいるお父さんの家事分担率を見ると、1位はスウェーデンで42.7%。日本は調査対象となった33ヵ国中、最下位の18.3%です(※)。

 世界の主要国を見ても、日本ほど男性が家事に参加しない国はほかにありません。日本の男性は大いに反省すべきですね。世界規準から見ると、生活自立していない日本男性は、いくら経済的自立をしていても、人間としては半人前です。

※国際社会調査プログラム(ISSP)が2012年に行った『家族と性差別に関する意識調査』の「子持ち有配偶男性の家事分担率」では、1位スウェーデン 42.7%、2位メキシコ 41.1%、同率3位アイスランドとデンマーク 40.1%。
日本は33位(最下位)で、32位のチリ 24.3%からも大きく引き離されるという結果になった。

自由に愛し、自由に子どもを産み、自由に暮らす人生が理想的

みんなの介護 田嶋さんはイギリスに長く留学されていましたが、日本の男性と比較して、イギリス男性の暮らしはいかがでしたか。

田嶋 みんな家庭的ですね。イギリス人男性は日本人みたいに残業しませんから、たいてい夕方には帰宅します。

 それから、妻と子どもと犬と一緒に公園に散歩に出かけ、帰ってから家族みんなで一緒に夕食をつくったり、あるいは後片づけをしたりなど、あたり前のように家族で家事を分担します。

 同じ時期にイギリスで働いていた日本の男性は、評判が悪かったです。家で何もしない。「妻は召し使いか」って言われていましたよ。特に評判が悪かったのは、いわゆるビジネスマンや銀行マン。反対に外国人女性から比較的対等に扱われていたのは誰だと思います?

みんなの介護 料理人とかでしょうか…。

田嶋 カメラマン。職業柄なのか、身の回りのことを何でも自分1人でこなすことができるでしょう。欧米では、炊事洗濯など身の回りの家事を一通りできて生活自立していないと、一人前の男性とは認められません。あたり前のことなんですよ。

みんなの介護 古い日本映画を見ると、かつての日本のお父さんは、自分の服の着替えさえ奥さんにやってもらっていたみたいですね。

田嶋 外国人はそれを見て「子どもみたい」って言います。帰宅した夫の背広を妻が脱がせてハンガーに掛けたり、ね。専業主婦が一般的だった時代の「ホームドラマ」の定番シーンでしたね。

 現在の日本では、共働き世帯のほうがあたり前になっていますが、まだ家事・育児・介護の比重は女性に大きく傾いているケースが多い。不満が出ています。会社で専業主婦のいる同僚の男と、家事全般をこなさなければならない共働きの自分と同じ量の仕事をせよと言われてもムリだと。

 日本で、共働きの女性社員が昇進を望まない理由は、1番多いのが「仕事と家庭の両立が困難になる」で40%以上でした。((独)労働政策研究・研修機構『「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」結果』(2013年))

みんなの介護 今後、日本の家庭のあり方はさらに変わっていきそうですか。

田嶋 長期的に見れば、結婚制度そのものが徐々に崩壊していくのではないかと考えています。だいたい戸籍制度は、今や日本でしか機能していないようなヘンなものです。韓国はすでにやめました。世帯単位でなく個人単位になるといいですね。

 そうすると、新型コロナの給付金もキチンと女の人の手にわたることになります。夫の口座に入って夫に使われてしまうなどという話もなくなります。1日でも早く選択的夫婦別姓制度が実現するといいですね。

 女性が、男性の姓を名乗ったり、男性に経済的に依存したり、そういった「結婚」にまつわるすべてのことは、いずれ「ナンセンス」と見なされるようになると考えています。

 男性と女性は大いに愛し合ったらいい。子どもを授かりたければそれも良し。ただし、それらの行為を「結婚」と結びつけて考える必要はないと思います。今、すでに、いろんな家族の形が出てきています。

みんなの介護 詳しく教えていただけますか。

田嶋 イギリスの例を挙げるとわかりやすいかもしれませんね。私が留学していたおよそ30年前のイギリスでの友人に、ロシア系イギリス人女性がいたんですが、彼女はカウンセラーとして働いていました。

 子どもは3人いましたが、ぜんぶお父さんが違うの。それで週末になると、それぞれの子どものお父さんたちが集まってみんなでパーティをするんですよ。日本ではちょっと信じられないでしょう。

みんなの介護 それは驚きですね。

田嶋 あるとき、彼女が自分でレンガを積んで家の建て増しを始めたら、休みの日にそのお父さんたちがバラバラやってきては手伝って、家を完成させたのね。でもその父親たちも自分の家庭があったり、恋人がいたりしたんですから、おもしろいでしょう。

 自由で自立していると、男女関係もしばられなくてすみます。自由に人を愛し、自由に子どもを産み、自由に住居を構え、自由に暮らしていた彼女みたいなスタイルが、私にはとっても生きやすいですね。

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