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TBS「クレイジージャーニー」にBPOが“放送倫理違反” 過去にあったスタッフ暴行、放送中止の闇 - 「週刊文春」編集部

 BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は8月4日、TBSのバラエティー番組「クレイジージャーニー」に放送倫理違反があったとする意見を公表した。

 2019年8月に放送された、海外の希少動物を捕獲する「爬虫類ハンター」企画で、番組スタッフが動物を事前に準備して撮影していた。BPOでは、専門家が「自力で希少動物を探し出したものと信じたであろう多くの視聴者との約束を裏切るもの」と指摘。放送倫理違反があったと結論づけた。

「週刊文春」は昨年、「クレイジージャーニー」を立ち上げた制作トップA氏によるスタッフへの暴行や、別の企画の放送休止事件など、同番組の裏側を報じていた。2019年9月5日号の記事を全文掲載する。(※記事中の年齢、日付、肩書などは掲載時のまま)

◆ ◆ ◆

 2019年7月24日、水曜日の深夜11時56分。約1カ月振りに放送されたTBSの人気テレビ番組「クレイジージャーニー」に異変が起きていた。エンディングに流れるスタッフロールから、前回まで必ずそこにあったA氏(38)の名前がひっそりと消えていたのだ。同番組をゼロから立ち上げ、様々な媒体で「仕掛け人」として魅力を語り、演出を担当してきた番組の制作トップである。


TBS本社 ©iStock

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「クレイジージャーニー」といえば、ダウンタウンの松本人志、バナナマンの設楽統(おさむ)、小池栄子の3人がMCを務め、独自のこだわりを持ついささか“クレイジー”なゲストが体験談を語る伝聞型紀行バラエティ番組。スラム街でマフィアを撮影する写真家や、リヤカーを引いて世界中を歩き回る男などの“狂った旅”に番組スタッフが密着同行するロケの様子が人気を博している。

「深夜の時間帯にもかかわらず高視聴率をキープしており、ジャイアンツの菅野智之選手などファンを公言する著名人も多い。現在までに計7枚発売されているDVDの売り上げは21万枚を突破。過去には、優れたテレビ番組に贈られるギャラクシー賞や放送文化基金賞を受賞しています」(テレビ局関係者)

 今や「ザ!鉄腕!DASH!!」(日テレ)や「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレ東)といった他局の人気番組にも引っ張りだこの“爬虫類ハンター”加藤英明氏や犯罪ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏、アフリカを撮る女性写真家ヨシダナギ氏など、この番組からブレイクした人物も少なくない。

 4年前にこの番組を立ち上げたのが、A氏である。法政大学を卒業後の04年にTBSに入社。

「高校、大学とサッカー部に所属し、一時はプロになるのではと言われたほどの実力の持ち主だったとか。入社後は『学校へ行こう!』や『リンカーン』など一貫してバラエティ畑を歩んできた。仕事のできる奴ですが、いわゆる体育会系で、ADへの暴言やパワハラまがいの言動はしょっちゅうあった」(A氏の知人)

妻はNHKアナウンサー

 入社して10年余り、経験を積んだA氏が、学生時代にバックパッカーで、いろいろな場所に一人旅をしていたことと、中高時代から大好きだったダウンタウンの松本人志と一緒に仕事がしたいという思いを組み合わせ、自身の企画として初めて手掛けたレギュラー番組が「クレイジージャーニー」だった。

 私生活では、12年にNHKアナウンサー(37)と結婚。

「2人は法政大の同級生で、テレビ局志望という共通点からマスコミ講座で仲を深めた。大学卒業後まもなく付き合い始め、彼女が四国に配属されていた時期は遠距離恋愛でしたが、それを乗り越え、8年の交際期間を経て結婚しました。妊娠中に出歩く姿が週刊誌に撮られるなど、彼女の人気は今も衰えていません」(スポーツ紙記者)

 順風満帆な人生の絶頂期にいるはずのA氏が、なぜ突如として番組から姿を消したのか。事情を知るTBS関係者が明かす。

「今年4月頃、AさんはTBS本社の隣にあるビルの編集スタジオで暴力沙汰を起こしたのです。テロップを入れる編集作業に不手際があったとかで激高した彼は、そのADの胸倉をつかみ振り回したそうです。その拍子に壁にぶつかって相手が流血する怪我を負わせてしまった。現場を目撃した女性スタッフがパニック状態に陥り、現場は一時騒然となったそうです」

 このスタジオに本社を構える制作プロダクションは、小誌の取材に「この件に関してはTBSから何も答えないでくれと言われている」と回答した。

 幸い大怪我には至らなかったが、A氏の暴行は程なく、同氏が所属するTBS制作局制作一部に報告された。結果、A氏はイレギュラーな異動で「クレイジージャーニー」から外されることになったのだ。

「TBSでは、昨年新社長に佐々木卓氏が就任して以降、社内のハラスメントに一層厳しく対応するようになった。A氏も6月にこの件で3カ月間の出勤停止処分を受け、制作一部からも異動することになりました。大御所の松本人志を起用する人気番組の不祥事が発覚すれば局としても大問題。外部に漏れないよう、詳細は社員にもほとんど知らされませんでした」(同前)

 ただ、松本側には報告があった。

「現場のマネージャーに、TBSの編成から『演出のAさんがADに暴行して交代になった』と説明があったそうです」(吉本関係者)

 人気番組を生んだ立役者が一発退場とは即断即決、と思いきや、実は以前にもA氏には“イエローカード”が出されていたという。

「悪魔祓い」の回が放送休止に

 昨年10月31日。この日に放送予定だった「クレイジージャーニー」は、〈痛みに耐え神に近づくための苦行&世にも奇妙な悪魔祓い〉と題して、オカルト研究家の吉田悠軌氏を特集するものだった。事前に、予告映像も流されていた。

 ところが当日放送されたのは、過去に一度放送された時計職人・菊野昌宏氏の特集回の再放送。番組の公式ツイッターを見ると、〈本日は3月21日に放送したものを再編集してお届けします!〉としているが、実際の番組内容は殆ど変わらないもので、事情も説明されず。出演予定だった吉田氏が困惑気味に明かす。

「放送予定だった内容はたしかに悪魔祓いについてのもので、ロケ地はスリランカでした。スタジオで松本さんらとのトークの収録まで済ませていたのですが、放送直前になって番組の方から『国や政府の事情で放送できなくなった。今後もいつ出せるか分からない』と伝えられました」

 人気番組が急遽「再放送」に差し替えられる異常事態。小誌が取材をすすめると、その意外な理由が判明した。

「悪魔祓いの回は放送予定日の少し前まで告知を打っていたのですが、それを見たスリランカ大使館の関係者がTBS側に『許可をきちんととっているのか』と言ってきたのです。国によって事情は異なりますが、メディア活動を目的にスリランカを訪れる場合は観光ビザやビジネスビザでの入国は許されません。入国前に在日スリランカ大使館からジャーナリストビザを取得する必要がある。そうした基本的手続きを怠っているのではないかという抗議だったようです」(別のTBS関係者)

「ちゃんと許可を取ったよな?」と詰め寄ったA氏

 A氏の怒りの矛先は、このときも部下に向けられたという。

「Aさんは担当のADに『ちゃんと許可を取ったよな?』と詰め寄った。普段からパワハラで恐れられているA氏の迫力に、叱責を恐れたADが『取りました』と咄嗟に嘘をついたことで発覚が遅れたそうです。番組演出のトップとして責任があるのは当然ながら、上司からは『お前の普段の威圧的な態度がADを萎縮させているのも事態把握が遅れた一因だ』と注意されたそうです」(同前)

 そして半年後の今春、暴行騒ぎを起こしたことで2枚目のカードが出され、あえなく退場となったという――。

 A氏の暴行や放送中止について、TBS広報部に事実関係を聞くと、「一般社員の人事案件や番組の制作過程については、お答えしていません」と回答した。

 誰よりも“クレイジー”だったのはA氏自身なのかもしれない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年9月5日号)

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