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【読書感想】教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない

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教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない (PHP新書)

教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない (PHP新書)

  • 作者:妹尾 昌俊
  • 発売日: 2020/05/12
  • メディア: 新書

Kindle版もあります。

教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない (PHP新書)

教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない (PHP新書)

  • 作者:妹尾 昌俊
  • 発売日: 2020/05/12
  • メディア: Kindle版

いま、日本の教師は危機的状況にある。
年間5000人が精神疾患休職となる「死と隣り合わせの現場」で働き、
その過酷な労働環境が「学ばない教師」「信頼されない教師」を生み出している。

しかしその背景には、日本の教育の「構造的な大問題」がある、
と全国の学校現場を渡り歩く著者は指摘する。

そこで本書では、教師の現状をデータとファクトに基づき客観的に示し、
実際に起きている5つの危機を「ティーチャーズ・クライシス」と題して解説。

現在の危機的状況を脱し、豊かな教育を取り戻す方法についても提言した、
これからの教育を考えるうえでの必読書!

 「教員免許を取っても、学校の先生になるのは倍率が高くて大変」というイメージを僕はずっと持っていたのです。
 地域にもよるのでしょうけど、先生の枠の空きがなくて、免許を持っていてもなかなか学校に勤められない、という嘆きも少なからず聞いていたんですよね。
 でも、この本を読んで、そのイメージは、もう過去のものだということがわかりました。

 今や、学校は、長時間労働にモンスター家族への対応、パワハラなど、「ブラック職場」と若者たちには思われていて、先生になりたいという人の数は減り、その質も低下しているのです。
 何をもって「質」とするのかは問題ですが、少なくとも、希望者と採用者数の比較で、「学校の先生になるのが簡単になっている(教員採用試験の倍率が低下している)」ことをデータを示しながら、著者は指摘しています。

 しかし、「先生になることが以前ほど難しくはなくなった」からといって、先生という仕事の大変さは変わらない、というか、むしろどんどんハードになっていっているのです。
 理想と現実のギャップに絶望したり、経験に乏しいまま、いきなりクラス担任として、乏しいサポートのなか重い責任を負わされたりして、心を病んだり、死を選んだりする先生も大勢います。
 「年間5000人が精神疾患で休職する」って、「聖職」どころか、「ブラック企業」ですよね。

 著者は、この本の内容について、はじめに概説しています。

 本書では、「教師崩壊」の危機、「ティーチャーズ・クライシス」について、次の5つに分類して解説します。
 

クライシス1.教師が足りない
クライシス2.教育の質が危ない
クライシス3.失われる先生の命
クライシス4.学びを放棄する教師たち
クライシス5.信頼されない教師たち

 これらはバラバラに起きているものではありません。互いに関連している同時多発的クライシスです。
 また、5つの「ティーチャーズ・クライシス」の現実に向き合うと、先ほども述べたように、個々の先生たちの努力や学校の頑張りだけでは限界がある、巨大な問題であることがわかります。これまで教師の献身性に依存し、不十分だった政策的な手当も早急にしていく必要があります。

 しかし、文科省の一声だけで解消できるほど簡単な問題でもありません。保護者はもちろん、社会の多くの方が、この「ティーチャーズ・クライシス」に関心を寄せ、少しずつ理解して行動することが、「5つの危機」を食い止める一番の近道になると考えています。

 まさに「負の連鎖」になっているんですよね。
 先生の数が足りないから、仕事がきつくなり、授業の質も落ちる。
 そういう「ブラック職場」であることが広く知られることにより、先生を目指す人が減っていく。

・産休に入る先生の代替の講師が見つからなくて、「いまいる職員で頑張るしかない」と校長が職員会議で話した数日後に、別の先生が学校に来なくなりました。うつ病で病休に入るそうです。

・新年度からの採用だけでも人手不足なのに、年度の途中から働いてくれる”都合のいい人”なんて、そういないですよ。「すでに民間企業に就職しました」と、もう何十回言われたことか。

・学校現場は、猫の手も借りたいのが実情です。子どもに関わる仕事ですから、ほんとは誰でもいいわけじゃないですよ、もちろん。でも、学級担任も配置できないようでは、質がどうのこうのと言っていられる状況ではありません。

 こうした悲鳴を、私は全国あちこちで聞いています。
 事実としても、NHKが、都道府県と政令指定都市、合わせて67の教育委員会に取材したところ、2017年4月の始業式時点で、半数近い32の自治体で、定数(国の示す標準として配置されるべき数)に対して、少なくとも717人もの教員が不足していたことが明らかになりました。

 共同通信が2018年に取材したところ、全国47都道府県と20政令指定都市のうち、26都道府県と9市で、公立の小中高の教員が、定数に対し少なくとも計600人不足していたことがわかりました(共同通信2018年7月1日)。しかも、「不足しているが人数を非公表とした」6つの県と市があったので、実際の不足数はさらに多いです。

 2019年の富山市では、35人の講師が不足しており、始業式に学級担任を発表できない学校もあったそうです。
 始業式に担任が決まっていないなんて、「そんなことがあるのか?」と信じられませんでした。
 子供たちも保護者も驚いたでしょうし、学校側も手を尽くしたはずなのに、そんなことが起こっているのです。
 ある教科を教える先生がいなくて、その教科の授業がしばらく行われなかった、という事例もあります。

 これまで見てきたように、近年の受験者数の減少、あるいは採用試験を受けない層がかなりいることは、教員の人気、魅力が必ずしも高いとは言えないことの現れと考えられます。朝日新聞は学生の声を次のように紹介しています。

 教員養成学部や大学院に通いながらも、教員になることをためらう計21人にインタビューした。全員が理由として挙げたのは、労働環境だった。
 ある国立大4年の学生(21)は「教材研究も、いじめ指導も、保護者対応もしなければならないのに、働かせ放題で、残業代ゼロ。民間では許されないことがまかり通るのはおかしい」と話す。この学生は教師を志していたが、民間会社への就職を決めた。

「逃げていくのは、教職の現状や社会的な位置を自ら調べて考える、教員になってほしい学生だ」と複数の教員養成学部の教授は語る。(朝日新聞2019年10月7日一部抜粋)

 
 ただし、著者は、データに基づいて、「近年の採用率低下は、主には採用数増加の影響であり、教員不人気のせいとは言えない」とも指摘しています。「徐々に教員不人気となっていることを示唆する受験者数の減少の兆候も見られる」ことも併記していますが。

 文部科学省が2016年に小中学校、各400校で行った「教員勤務実態調査」では、小学校教諭の33.4%、中学校教諭の57.7%が週60時間以上勤務(月80時間以上の時間外労働)し、過労死ラインを超えていました(1日8時間勤務で週5日、40時間労働に対し、週20時間以上時間外勤務がある計算)。これに加えて、1週間に小学校は約5時間、中学校は約4時間の持ち帰り残業があるというデータも存在しているそうです。

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