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長引くコロナ禍 「緊急事態条項」幅広い議論を

(リベラルタイム 2020年9月号掲載)

日本財団理事長 尾形武寿


新型コロナウイルス感染が始まって半年以上が経過した。感染拡大が急で、いまだにウイルスの正体が見えないこともあろうが、それ以上に政府や東京都の対策が見えにくい。

政府は一月三十日、「新型コロナウイルス感染症対策本部」の設置を閣議決定し、安倍晋三首相は翌月末、三月二日からの臨時休校を要請、四月七日には全国七都府県に緊急事態宣言を発令した。

会見には対策本部の下に設けられた「専門家会議」の尾身茂副座長も同席、安倍首相は「専門家の皆様の判断」を重視する考えを打ち出し、尾身氏も宣言を七都府県に限った理由や三密(密閉、密集、密接)対策などを説明した。

宣言を受け大半の都道府県は大規模な催しや飲食店、小売店、旅館などの営業自粛要請に踏み切り、廃業に追い込まれる業者が出るなど影響はあまりに大きい。未知の新型コロナを相手にする以上、医学的・科学的見地を踏まえた判断はもちろん欠かせない。

しかし自粛を求める以上、政府としての責任と覚悟を示すためにも、会見には加藤勝信厚生労働相や西村康稔経済再生担当相ら関係閣僚こそ同席すべきではなかったか。

一連の新型コロナ対策を見ていると、安倍内閣としての一体感、力強さが欠けるような気がしてならない。

民主党が政権の座にあった二〇一一年の東日本大震災・東電福島原発事故では「初動を巡る政治の混乱が国内外に不安をもたらした」、「民主党政府に危機管理能力がなかった」など菅直人首相に対する批判が出た。 “百年に一度の国難”ともいわれるコロナ禍で同じ轍を踏んではならない。

そのために必要なのは、何よりも国民に対する分かりやすい説明である。専門家会議で言えば、どのような役割を期待するのか、当初から明確にすべきだったのに、不明確なまま推移した結果、本来の役割以上の期待が集まり、あたかも専門家会議が政府の対策を決めているかの如きイメージが出来上がる結果となった。

同じ意味で、政府が七月三日、専門家会議を廃止して新たに発足させた「新型コロナウイルス感染症対策分科会」(尾身会長)の経過も国民には見えにくい。

専門家会議メンバー十二人のうちの八人に経済学者や労組関係者などが加わり計十八人の構成となっており、感染だけでなく経済・社会の動向にも議論を広げるのが狙いと見られる。

少なくとも分科会発足に先立ち、何故、専門家会議を廃止し新しい組織を立ち上げるのか、安倍首相が国民に直接、語り掛ける必要があったのではないか。

東京都の「東京アラート」も然り。東京レインボーブリッジや東京都庁を赤いライトで照らし警戒を呼び掛けると鳴り物入りで発表し、六月二日に初めて赤色のライトアップが行われたが、同三十日、新しいモニタリング指標への変更が打ち出され、一体、何の意味があったのか、筆者には理解できない。

国土交通省が七月二十二日からスタートした「Go Toトラベルキャンペーン」の発表にも唐突感が付きまとう。

東京では七月中旬、連続四日間、感染者が二百人を超えるなど第二波、第三波の感染拡大を懸念する声が強い。そんな中、戦争や大災害発生時に内閣に権限を集中する「緊急事態条項」新設の是非を巡る論議が活発化している。

改憲派が同条項の必要性を訴えているのに対し、護憲派は新たな特別措置法の制定など現憲法の枠内で対応可能としている。過去の憲法論議はともすれば低調である。誰もが直接向き合う新型コロナ禍をきっかけに、憲法を身近な存在として幅広く考える機運が少しでも盛り上がるよう期待する。

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