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「質問の電話が200回」ホテルを疲弊させるGoToトラベルの本末転倒ぶり

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■見切り発車で始まったらトラブルが続発

ずさんな制度設計により、旅行業界と利用者となる一般市民の両方から悲鳴が上がっている「Go To トラベル」キャンペーンが7月22日から開始された。ここへきて新型コロナウイルスの市中感染が広がる中、東京都民への適用や、都内での滞在が認められない「東京外し」といったスッキリしない出足となった一方、「4連休中はほぼ満室だった」と答えるホテルもあり、一定の効果があったことも伺える。

観光名所「清水寺」の参道を行き交う人たち=2020年7月23日、京都市東山区
観光名所「清水寺」の参道を行き交う人たち=2020年7月23日、京都市東山区 - 写真=時事通信フォト

ただ、支援を受ける側である宿泊機関では、手続きの煩雑さと情報の錯綜(さくそう)などで足を引っ張られる事態が2週間近くも続いている。筆者が集めた関係者の声をもとに現状を分析したい。

Go To トラベルは、7月22日のキックオフ時点で、運営窓口となる事務局が立ち上がっておらず、見切り発車だった。その結果、利用者はとりあえず全額を支払い、チェックアウト時などに宿から交付される「宿泊証明書」を使って、後日、補助金分を請求することになった。しかも「東京外し」も起こり、手続きは非常に複雑だ。

案の定、キャンペーン開始から10日余りがたった現在、宿泊施設ではこんなトラブルが起きている。整理すると次のようになる。

■「本当に割引対象」? フロントでクレームも

<Go To トラベルに対応する宿泊機関で起きていること>
・手続きスキームが複雑で難解すぎるため、予約時点で利用者が不安にさらされる
・感染対策に加えて登録申請、宿泊証明書作成などの手間が増え、スタッフの業務が増加
・割引対象か否かが不明瞭のため、チェックアウトの際トラブルに
・割引可否や手続きの問い合わせ、クレームが増えてフロントスタッフが疲弊

27日からは、旅行代理店経由でのキャンペーン対象予約の申し込みが始まったことで、フロントのスタッフが利用客に対するルールそのものの説明に追われる事態は徐々に軽減されると思われる。しかし、観光庁が公表する100件以上もある「よくある質問」に目を通したり、突然導入された「宿への直接予約に対する割引処理」に必要な新規サイト「ステイナビ」への加入に迫られたりと、宿の運営者らは日常業務とは違った新たな負担に追われる状況となっている。

■「足を引っ張る政策でしかない」

赤羽国交相は14日、キャンペーン参加の業者に宿泊客への検温などの感染対策を義務づけると明らかにした。

国交省によると、▽受け付けに仕切り板をつける、▽宿泊客全員に検温する、▽風呂や食堂などの共用施設では人数制限や時間制限をする、▽ビュッフェ形式の食事は個別提供するなどの感染防止策を義務づけ、国交省が確認して宿泊業者を認める。(朝日新聞デジタル、7月14日)

非常に短い文で書かれているが、これだけのことを宿泊機関がやろうとすると、スペースや人員的に困難だったり、行ったにしてもコスト増は避けられない。それでも、ほとんどの宿が「できる限りの感染対策をしている」と前向きな答えを述べている。

しかし、あるホテルオーナーは筆者にこんな窮状を訴えてきた。

「旅行会社などから『貴施設での感染対策を教えてほしい』という趣旨の調査の電話が鳴りやまない。たった数日間に200回以上そんな連絡を受けた」

感染対策は、一般顧客がホテル選びをする際に重要なポイントなので、そのホテルでは「必要と思われる情報は全てウェブサイトに毎日アップデートしている」というのだが、そうした努力は無視され、あらゆるところから直接電話がかかってくるのだという。

なぜ電話が200回などというとんでもない本数になったのか。かけてくる相手は地元の市町村や県の観光担当、保健担当、そして観光振興の外郭団体などで、中央官庁の担当からの電話もあった。これに加えて大学の研究室や、興味本位で聞いてくる企業からも質問が寄せられたという。

「同じ旅行会社なのに異なる部門、支店から同じ趣旨の電話がきた。ここまで手間がかかると、もはやGo To トラベルは支援策ではなく、足を引っ張る政策でしかない」と現状を憂う。

■利用者が熱を出しても泊めるしかない

コロナ感染対策については、これまで各業種向けの「ガイドライン」が示されているが、守るかどうかは任意で、それぞれの事業所の努力目標といった程度、つまり強制力が伴うものではない。ところが、今回のGo To トラベル開始に当たり、国交省は「義務」だと言うのだから驚きだ。

しかもその内容については、厚生労働省が示す「旅館業法」の内容と比べて齟齬(そご)がある。

岡山県にある下電ホテルの永山久徳社長は、「全員検温」について、一般店舗と違い、宿泊機関は高熱のある人の宿泊を断れないと指摘。旅館業法には「明らかに見た目で伝染病と分かる場合以外の宿泊拒否は違反」と示されているとした上で、「厚労省もコロナ発生後、出発地や体調を理由に、受け入れを拒否するのは許さないと改めて通達した」とし、国交省からの指示との違いに困惑する。

ただ、幸いなことに、今回取材した宿泊施設では、実際に「発熱した利用者がやってきて困った」という話は聞かれなかった。国民の間で感染対策が広がる中、さすがに熱があるのに泊まり歩こうといった不届き者はいない、ということなのだろうか。

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