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テラハ検証でフジテレビが使った「ごはん論法」

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「ごはん論法」

 特に安倍政権下で首相ら与党政治家や高級官僚たちが使うようになったテクニックのことを指す。

 追及されている問題をわざと「狭く解釈して」論点をズラそうとする。

(質問)

「今朝、ごはんを食べましたね?」

(回答)

「パンは食べました。でも(お米の)ごはんは食べていません」

 そんなやり方だ。

 フジテレビは自社が制作して放送した「テラスハウス」で出演者だった木村花さんが自死に追い込まれた事件について社内での調査結果を7月31日にホームページ上で発表した。

「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」検証報告

 フジテレビの「検証結果」は16ページに及んでいて一見細かく検証したように見えるものの、よくよく読んでみると検証方法の「甘さ」や調査した主体が中立公平な立場での「第三者」と言えないなど「ずさんさ」が目につき様々な問題がある。

 ''その中で'最大の問題は「ごはん論法」だ。'''

 「テラスハウス」での木村花さんの自死の事件をめぐって、フジテレビ追及の急先鋒になってきた週刊文春の記事は論点がはっきりしている。

「テラスハウス」の撮影現場ではスタッフが出演者に指示する「やらせ」があったのではないか?

 「やらせ」かどうかという問題。

 かつてテレビ制作の現場で働いていた者として、「やらせ」という言葉については一般的な視聴者から見た感覚とテレビ制作の現場の実態との間にはかなりギャップが存在している印象を持っている。

  今回の週刊文春とフジテレビの間にも「やらせ」という表現をめぐrう認識のギャップは大きい。

 それだけにフジテレビの「検証結果」は、一般的な人たちが持つ「やらせ」という認識に沿って、説得力がある内容にはずだろうと期待していた。

 週刊文春は「テラスハウス」のスタッフによる「指示」についてかなり具体的に指摘している。

 花さんの試合用コスチュームが男性主演者の小林快さんによって乾燥機にかけられて縮んでしまった件について、「花さんは番組スタッフから『ビンタしたらいいじゃん』と指示されていた」と同誌は報道している。小林快さん本人にもインタビューして「”やらせ”は確かにあった」という言葉も引き出している。小林さんによれば「(花さんの)オッパイとか触ったら」などの指示もあったと報じている。 

 この点について、フジテレビの「検証結果」は以下のように記している。

今回の検証では、本番組の制作スタッフ、出演者、その他関係者に聞き取りを行いましたが、こうした前提に反して、制作側が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されませんでした。

一部の報道等では、本番組において、いわゆる「やらせ」があり、上記テロップや番組のコンセプトに虚偽があるかのような点が問題視されています。いわゆる「やらせ」とは、存在しない事実を捏造したり、制作スタッフが出演者に対し、事実を大きく歪曲したりするよう指示しているにもかかわらず、それらがないかのように表示することを意味すると理解されるところ、そのようなことは確認されませんでした。

出典:フジテレビ「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」検証報告

 フジテレビは「やらせ」という行為を、「存在しない事実を捏造したり、制作スタッフが出演者に対し、事実を大きく歪曲したりするよう指示しているにもかかわらず、それらがないかのように表示することを意味する」と、狭い意味に定義した上でそうした事実が「確認されませんでした」と結論づけている。

 週刊文春の側が「スタッフが『ビンタしたらいいじゃん』とけしかけたり、『オッパイとか触ったら』などを指示していたのなら問題だとして、「一般的な視聴者感覚」としてはそれは「やらせ」ではないのか?と指摘したのに対して、フジテレビの検証報告は「やらせ」は「存在しない事実を捏造」したり、「事実を大きく歪曲したりするよう指示しているにもかかわらず、それらがないかのように表示する」ことで「確認されませんません」と答えていることになる。

 これでは一般の人たちは納得できないだろう。

 「ごはん論法」のたとえを用いるなら、週刊文春の問題提起が「一般的には『ごはん』食べたと言えますよね?」というものなのに対して、フジテレビの回答は「『ごはん』は厳密にはイネ科の栽培一年草の稲の種子である米を炊いたものだが、同じ稲科でも小麦から採れた小麦粉を加工したパンを食べたので、『ごはんを食べた』とは確認されなかった」と言っているような回答の仕方だ。

 週刊文春の指摘したような「事実」があったのかどうか。その程度であれば番組として許容範囲と考えていたのかどうか。花さんの「コスチューム事件」以外に、どの程度まで出演者の個々の行為にスタッフが関与していたのかなどは「検証結果」を読んでもよく分からない。

 「ごはん論法」は、「安倍一強体制」が長期化する中で、従来であれば法律などに照らして「無理」だったことを政権側が「ゴリ押し」して通してきた過程で生まれた「説明になっていない説明」だ。「論点のすりかえ」「ごまかし」に過ぎない。

 権力の常套手段である「ごはん論法」を本来は権力を監視すべき立場の報道機関であるフジテレビまでが政治と同じように使っている。

 筆者はそのことに深い絶望感を抱いてしまう。

 「ごはん論法」への国民の不信はけっして小さなものではない。

 政治にもテレビも自浄の能力はあるのだろうか?

※Yahoo!ニュースからの転載

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