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香港に下された“死刑判決” 習近平の次なる狙い「台湾併合」も実現してしまうのか 2028年までに統一を狙う可能性が高い - 峯村 健司

 7月12日、香港の民主派が実施した香港立法会(議会)選挙に向けた予備選挙が終わった。これは今年9月の香港立法会選で候補者が乱立し、民主派が共倒れする事態を避けるのを目的としたもので、投票者数は主催者目標17万人の3倍を超える約61万人に達した。

 ここまで多数の投票者が集まったのは、習近平が6月30日に公布した「香港国家安全維持法」への反発が高まっているからにほかならない。

 同法の成立により、香港で国家の分裂を図ったり、外国勢力と結託したと中国政府が判断した人物に法執行ができるようになった。香港の法律より優先されることも明記されたことで、デモ参加者や民主活動家らが中国の基準で裁かれ、SNSや報道も、中国並みに締め付けられることが決定的となったのだ。


在任中に統一を目指す習近平

 その後の中国共産党の動きは速かった。翌7月1日には、抗議デモの現場で「香港独立」の旗などを所持していた男女10人を、香港国家安全維持法に違反した疑いで逮捕。この日のうちに合計で370人を逮捕するなど、同法を厳しく運用していく姿勢を明らかにしたのだ。

国賓訪日が中止へ

 アヘン戦争後、イギリスの植民地となった香港は、1997年に中国に返還された。返還から50年間は、資本主義制度など、中国本土とは異なる制度を維持する「一国二制度」が約束され、外交と国防を除く「高度な自治」が認められていた。

 香港で捕まった容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」改正案をはじめ、昨年来、中国共産党は一国二制度をないがしろにする動きを強めていたが、香港国家安全維持法によって、中国政府は、一国二制度に「死刑判決」を下した、と言っていいだろう。

 こうした中国の姿勢を受け、7月7日、自民党政調審議会は香港国家安全維持法に対する非難決議を了承し、習近平の国賓訪日について、「党外交部会・外交調査会として中止を要請せざるを得ない」と表明した。

 また、アメリカ大統領のドナルド・トランプも、香港向けの警察の装備などの輸出を規制する措置を発表。さらに、フェイスブック(FB)、グーグル、ツイッターの米IT大手3社が、香港当局への利用者情報の提供を一時停止し、IT分野における米中の「デカップリング(切り離し)」も加速することとなった。習近平の強硬な姿勢に対しては世界中から非難の声が上がっているのだ。

今日の香港、明日の台湾

 習近平による「自由」を奪う動きは、香港だけにとどまらない。習が虎視眈々と狙う次のターゲットは台湾である。

 元々、一国二制度は、鄧小平が1980年代に台湾統一のために考え出した構想で、後に香港に適用されたものだ。香港デモが激しさを増す中で、台湾では「今日の香港、明日の台湾」というフレーズが急速に広まっている。

 6月30日、台湾総統の蔡英文は、香港国家安全維持法の成立を受けて、「一国二制度が実行不可能であることが証明された」と語り、自由や人権、民主主義を守るために努力する香港市民を引き続き支援していくことを強調した。

日本近海にもミサイル発射

 こうした台湾内の声を受け、いま、中国軍内では武力統一を求める声が急速に高まっているのだ。

 習近平は2018年3月に「2期10年」だった国家主席の任期を撤廃している。ただ、現在67歳という習の年齢を考えると、3期目が終わる2028年には引退する可能性が高い。筆者はそれまでに台湾統一を狙う可能性が高いとみている。

 はたして、習はどんな戦略で台湾に侵攻するのか――実は、これについて中国は1990年代から詳細な「シナリオ」を作っている。中国軍の内部資料には、その戦略が克明に記されており、習が国家主席に就任してからも、国際情勢に応じてアップデートが繰り返されてきた。

 筆者が「文藝春秋」8月号及び「文藝春秋digital」に寄稿した「習近平の『台湾併合』極秘シナリオ」では、複数の内部資料に加え、筆者が参加した米国や日本政府、研究機関などが主催した「ウォーゲーム(作戦演習)」で得た知見を元に、その「シナリオ」を再現している。

 中国軍の文書では、台湾への侵攻に当たって日本の近海にミサイルを発射することも明記されている。有事に際して日本がとるべき対応を考える上でも、ぜひ一読してほしい。

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(峯村 健司/文藝春秋 2020年8月号)

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